……6月21日(火) 18:10
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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流石にそれは見てたらわかる。というか、ゴジは元々の性格が臆病……というと悪口すぎるか、……慎重なタイプだから、育てる見込みが立たないうちに子供が欲しいなんて言い出さないだろうとは思う。
「えーと、なんの話をしていたんだっけ……」
「私の拠点の話だったはずだけど……」
さっきも同じやり取りをした気がする。
聞く話が全部面白いせいで、話が逸れて先に進まないよ。
「そうだった。ねぇゴジ、天宮さんを置いてあげなよ。そんなに簡単に子供は作れないようだし……」
「子供が作れなかったら良い、みたいな話じゃないよね? 僕が一人で住んでるだけでもちょっとアレなのに、他所者と同居したりしたら外聞が悪いんだよ。しかも女の子で美人ときたらどんな噂になるか……」
「そんな噂、気にしなければ良いようなもんだと思うけど……」
「気にしてるのは僕じゃない。他人から気にされるのが困るってことなんだから」
言わんとすることはわからないでもない。
世の中、たしかにそういう感じだ。
「私は別に、拠点がすぐに決まらなくてもそんなに困らないというか、高校生が家もなくどうやって過ごしているのかってのを誤魔化す必要はあると思うけど、元々宇宙探検の予定だったから地球上なら生きるか死ぬかみたいな話にはならないし……」
「野宿の高校生がいたら怪しまれるし、警察とかに色々詮索されたりするよ。そうなったら困ることもあるでしょ? せっかく知り合ったのに、会えなくなるかもしれない」
「天宮にそういう苦労があるのは気の毒かもしれないとは思うけど、ごまかさなきゃいけないのは僕のうちに泊めたって同じだよ。それで、ごまかす行動をする人が変わる。僕がごまかさないといけなくなる」
「それはそう」
天宮さんがゴジの指摘をあっさりと受け入れてしまう。まぁでも、確かに言ってることは正しい。というか、子供が作れるかどうかみたいな話も、究極的には世間体の話ではある。実際に二人が恋人同士になって、子供を作ることになるかもしれないとは私もあんまり思っていない。だとしたら、こういうときには世間体的にそういうことを気にすることになっているから、私も気にしているというだけなのだろう。
『気にしなければいい』なんて気軽に言った私でさえそうなんだから、これはやっぱりゴジがただ気にしないだけで解決する問題ではなさそうだ。
……男女だから話がややこしいんだよな。
「天宮さんは、なんで女の子の形してるの? というか人間型をしている理由もあんまりなくない?」
「そこに疑問を持たれても……。理由なんて無いんだけどあえて言うなら、人類から派生したからこうなってるってところ。私の好みの問題でもなくて、私としてもこれが自然なの。私自身のパーソナリティも、ご覧の通り人間の少女っぽさがある人格だし」
「そうなんだ……」
言われてみれば。
女の子に見えるから、女の子みたいな振る舞いであっても当然のような気はしていた。
正体を聞いていれば銀の砂粒みたいなものでできていて、人間でさえないのにね。
とはいえこんなのは繰り言ではある。
私から見ると不必要に見えるけど、天宮さんにとっては少女の性別は当然のもので、つまりは必要みたい。だとすると女の私が住処を引き受けられればいいんだけど、私の家は天宮さんを受け入れるのには向かない。家族が一緒に住んでいるし、その家族もわりと人懐っこいので一緒に住んでいると隠し事もかなり困難だと思う。なにをどう隠さなきゃいけないのかも、今のところ不明だし。
私の性別と、ゴジの住宅環境の両方があれば……。
そうか!