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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。
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……8月2日(火) 16:30 車中・迷想:振り返り

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 こうして振り返ってみると幹侍郎ちゃんの生き死にについて考える時に大きなヒントになるのは、やっぱりダイモーンの定義、つまり知性の一貫性なんだと思う。

 さっきは身体の生命について考えていて行き詰まってしまったから、次はこっちだ、ぐらいの意味の「やっぱり」だけど。

 でも結局は『知性』が本命だと思う。

 実際に答えを出そうとして考えているのではなくて、今後の方針のために考えるのに馴れておくことが目的なんだから、答えなんて出なくてもいいし、なにより問題が難しくて正解なんて出ないやつだから仕方ないんだけど、やっぱりもどかしい。

 しかしここまでいくら考えてみても、考えることにはひとつとして答えが出ない。

 なぜ答えが出ないか。

 単純に事実として論理に組み入れるための知見が足りないのもあるし、ダイモーンの知性の概念についてはまったく馴れていないのも大きい。馴れるもなにもダイモーンの知性についてほとんど意味がわかっていないんじゃないかという気がする。

 この『知性』という言葉だって、ハルカちゃんの文化の言葉なので、似ているからと言ってあんまり簡単に取り込んでも良くない。ハルカちゃんの言葉によれば、虫が餌を食べるのも知性ということになっていた。


 そもそも、ダイモーンがなになのかなんとなくしか分かっていない。

 ダイモーンとはハルカちゃんの種族のことらしいけど、元の言葉は亜神とかそういうものだとか。ハルカちゃんの言葉を元にダイモーンのことを考えてみると、五〇〇〇年前に地球が居なくなった後の太陽系には各惑星や衛星なんかに残された人間が住み続け、同時に人間を参考にしたダイモーンという知性が生まれた。その後、ダイモーンは銀沙の体を獲得したということになる。

 ここで新たに生まれたダイモーンとはどんな種族なのか、それが実感としてわからないので「ダイモーンの定義する生命」についても理解するのが自分にとって難しいのだろう。

 実物が隣に居るのにね。

 でも、見ただけだと、人間との違いなんてほとんどわからない。ちょっと髪の毛が銀色で、フィクションに見えるぐらい顔とスタイルが良いぐらいだ。

 ……こうして挙げてみると、見た目的にはなにもかも人間らしくはないな。

 でも自然な人間らしくなくても、人間らしさとしては充分に成立している。うまく言葉に出来ないけど、いま幹侍郎ちゃんのために私が求めている生きていることの見分け方というのは、そういうこと(・・・・・・)だろうとは思う。


 具体的にダイモーンと人間の一番大きな違いだと思った部分は、体と心が厳密に分かれている部分だ。

 心(というか魂)が身体を操縦しているイメージなのだろう。

 以前、興味を持って読んだなにかの本では、そういう心身のモデルのことは機械の中の心霊ゴースト・イン・ザ・マシーンと呼ばれていた。こと人間において、そういう「心の本質である魂」を取り出せたこともないし、仮に取り出せたとして魂を操縦しているのは誰かという無限背進を単純に誘発するなどのことのために、真面目に考えるときには使われなくなっている考え方だ。

 でもこういう考え方は娯楽なんかには頻繁に登場する。分かりやすいからだろう。

 魂だけが神様に呼び出されて、性別や姿も変わって異世界に転生したりするやつ。

 モンスターになるような話もある。ゲームの世界の中に転生するような話もあるんだよな。繰り返しプレイしたりして。ゲーム内に転生する話で繰り返しプレイをする時、魂ってどうなって……。いや、これはちょっと脇道に逸れすぎてるな。

 幹侍郎ちゃんのことを考えなきゃいけないんだ。


 ダイモーンの知性というのは、そういうフィクションみたいな知性の感覚に近くて、だから動いて話すダイモーンを相手にしても拒否感なしになんとなく受け入れることができてしまうのだろう。よく身に馴染んだ間違いに似てる、と言い換えられるかもしれない。

 知性とは、魂のことかもしれない。

 もし生死の見分けをすることになるとしたら、私はこれから幹侍郎ちゃんの魂を探さなきゃいけないのかもしれないってことだ。


  *   *   *


 考えが脇道に逸れたりしながら、なんやかんやの間に集落に到着した。

 行きより速くて、所要時間は三時間ぐらいだった。

 高速道路を降りて、確実に見覚えのある山中の道をくねくねと走り、窓ちゃんがTOXをやっつけたところを通るともうすぐ、集落に入る手前で脇の私道に車で乗り込み、ゴジの家だ。

 帰ってきたことを告げるメッセを入れる。

 ハルカちゃんとやちよちゃんが荷物を車から降ろす。

 ハルカちゃんは自分の、やちよちゃんは私の手伝い。

「送ってくれてありがとう。これからユカちゃんはどうするの?」

「車返しに行くよ。あんたたちは早く行ってあげな。あと、今日のこれは貸しだからね、今度なにかで返しなよ?」

「うん。考えとくよ。そういえばぞっちゃんとバーベキューする予定があるような気がするから、そのときに一緒に来る?」

「具体的な話になってから教えて。忘れ物はない? じゃあ、私はこれで」

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