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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。
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8月2日(火) 16:30 車中・迷想:振り返り

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。

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8月2日(火)

     16:30

     車中・迷想

      振り返り

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 こんな話をする間にも、私達はひたすらユカちゃんが運転する車で折瀬に戻っている。

 窓の外を眺めるのにも慣れてきたやちよちゃんが看板を見かけて、SAってなに? という質問をする。

 それに応える形で一度だけそれほど逼迫していないトイレ休憩を行い、あとはひたすらにユカちゃんが車を走らせた。

 周囲の景色にも段々と見たことのあるような景色が増えてゆく。

 私はあまり外出する方ではないけど集落にこもりきりだったというわけでもなく、親に連れられてこの高速道路を通ったこともあるから、たぶん本当に見覚えのある景色なんだと思う。

 その間、私はさっきの続きで生命や知性について考えていた。

 いや、考えたというほど思考はすすまず、どちらかというとぼんやりとそれらについて思いを寄せていた。


 地球やTOXは生命なのか。

 地球やTOXに知性はあるのか。

 生命ってなんだっけ?

 地球やTOXの生命・知性とはどういう事なのか。

 それらの一貫性を考える場合にはその範囲が必要であること。

 一貫するTOXの知性に関して、TOXが含まれている範囲とは?

 地球の生命に関して、地球の一貫性を問われうる範囲とは?

 地球から出てかなりの時間になるイルカたちは地球にとってなんなのか。

 知性……。知性とはなにか?

 知性を見て分かるとはどういうことなのか?

 自動販売機の知性とハルカちゃんの知性。

 幹侍郎ちゃんの知性。

 知性があるとして、幹侍郎ちゃんは生きていたのか。

 幹侍郎ちゃんをダイモーンの生命と考えた時、地球の定義と齟齬が出る。

 幹侍郎ちゃんにはエネルギーの出し入れをしていた様子がない。

 幹侍郎ちゃんはエネルギーから自由だったのか。

 幹侍郎ちゃんがエネルギー代謝しなうて良い場合、ダイモーンになるのか。

 別の要件である、複製は幹侍郎ちゃんとどう関わるのか。

 幹侍郎ちゃんは複製ができるのか。

 いやまだ幹侍郎ちゃんは子供だから複製とかそういのは早すぎるとか。

 護治郎が幹侍郎ちゃんを作ったのは生命の定義で言う複製なのかとか。

 結局、ダイモーンの定義によれば幹侍郎ちゃんは知性であり生命なのか。

 幹侍郎ちゃんの活動は一貫性の維持に有益だったのか。

 幹侍郎ちゃんの知性や心は人間と同じものだと思って良いのか。


 順番なく、つらつらと思い浮かんでは答えの出ない迷想。

 さっきまでの思惟や問答では、たしかにそれまでに思いもしていなかった新たな視点を獲得したという実感はある。

 でもひとつとして確かな答えには繋がらない。

 あまり厳密に考えようとすると、今度は幹侍郎ちゃんに知性があり生きているという根拠が消えていってしまうように思う。

 厳密な話はともかく、私の行動指針としては、そこは断乎(だんこ)として死守しなければいけない。

 幹侍郎ちゃんには知性があるし、幹侍郎ちゃんはこれまで確かに生きていた。


 こうして振り返ってみると幹侍郎ちゃんの生き死にについて考える時に大きなヒントになるのは、やっぱりダイモーンの定義、つまり知性の一貫性なんだと思う。

 さっきは身体の生命について考えていて行き詰まってしまったから、次はこっちだ、ぐらいの意味の「やっぱり」だけど。

 でも結局は『知性』が本命だと思う。

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