表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十五章 旅は終わり、終われば家に帰る。辞書にもそう書いてあったし。
373/489

……8月2日(火) 10:30 八日目:池袋宿所

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十五章 旅は終わり、終われば家に帰る。辞書にもそう書いてあったし。

12:00

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

|よれひー探検隊・ウィズ・レザミ・オリセ

| さらば東京! よれひー探検隊ついに帰還ですよ!

| お馴染みのあの人ともお別れ! わざわざお見送りまでありがとうございまーす!

|※TOX予報により、当初予定の滞在期間を大幅に切り上げて帰還することになりました。


 東京とのお別れ、撤収番組の録画開始。

 撤収とは言っても画面に映るのは、見送り側の清水さん、私達レザミ・オリセと探検隊長のよれひーさん。それから送られる側にしれっとやちよちゃんが混ざっている。

 私がボーッとしていて聞き逃した昨日の挨拶の時に、やちよちゃんは大宮までお見送りをしてくれるという話があったというやつだ。実際にはやちよちゃんは大宮の教会に用事があるとかで、帰りの車に同乗するのだそうな。

 よれひーさんとしては清水さんに乗せてあげてくれと頼まれたので断る理由はなかったらしい。

 だから、お見送りというのは事実というより番組向けのわかりやすい説明なわけだ。

 でも本当の目的は違う。

 やちよちゃん本人からこっそり耳打ちされた。

「本当は佐々也ちゃんを東京に連れ戻す役目だよ。夜になったら宿を抜け出して来なよ」

 どうしたらTOX襲撃の当日に東京に居ることができるか、具体的な方法をなんにも考えられていなかったから、手引してくれるのはありがたい。

 いざとなったら電動スクーターをレンタルして自力で乗り込むか、ぐらいの浅い考えはあったんだけど。


  *   *   *


「はいそれでは我々よれひー探検隊は本日をもって東京を撤収することになります。最初の計画ではもう数日の滞在する予定があったんですが、明後日TOXが東京付近に落下してくる予報が出てしまいましたので、さすがに避難しないわけにはいかない感じです」

 TOX予報ではいつもと同じように東京を中心にした予報円になっている。

 そもそもTOX予報は予報なんだから東京に落ちてくるとは決まってないんだけど、こういう時はだいたい東京に落ちるのが常識的な普通の予測だということになる。

 そういう常識を背景として、ここ最近は近県への落下が続いたので「今回も意外と近県なのでは〜?」というジョークが定番になる場面ではあるんだけど、如何(いかん)せんこの場限りは村の真上にTOXが落ちてきた当事者の私達が居るのであまりにも洒落にならない。私達が折瀬から来たことをよれひーさんたちはみんな知っているので、さすがにそういうジョークは無しになっている。

 なんならTOXを目の前で見た私と、刺突でお腹に穴を開けられたハルカちゃんが居るのでなおのこと洒落にならないんだけど、さすがにそこまではみんなに説明していない。この辺の事はぞっちゃんも知らないし。

 その上さらにややこしいのは、どうも私が居るあたりにTOXが襲撃してくるらしいという未確認情報があり、それが本当なら私が避難することが間違っているみたいな部分があり、更にその上、その襲撃を誘うためにやちよちゃんは私を東京に連れ戻そうとしているわけだ。

 こうなってくると避難とかお見送りとかがなにもかもが茶番になってしまうけど、それは主に私が黙っているからだというところに(かな)しさと(つら)さがある。

 ゴジが嫌った秘密というものの良くない部分の一側面は、こういうところにも存在しているわけだ。

 重すぎて(こら)えられないというほどではないけど、どうしても周囲とのすれ違いには疲労感がある。これは、繰り返すほどにどんどんキツくなるだろうし、私なんかより遥かに情の厚いゴジにとっては本当にキツかっただろう。

「せっかく知り合いになった人とお別れになるのは寂しいです〜。みんなを置いて逃げると思うとなんだか悪い気もするし……」

 私が虚無感に陥っていると、代表のぞっちゃんが心のこもった挨拶をしている。

 こういうぞっちゃんの言葉はすべて本気だ。ぞっちゃんが多くの人から好かれていてクラスの人気者でいるということには、ちゃんと理由があるのだ。

「私達は馴れていますので、お気遣いなく」

 これは清水さん。

 その先は会話の順番をよれひーさんが引き受ける。

「わざわざお見送りありがとうございます」

「いえいえ。また来られる場合には私どもに声をかけてください。誰でも歓迎というわけではないですが、よれひーさんの取材でしたら信用できることがわかりましたので。あ、これはオフレコかな?」

「……そうですね、カットすると思います」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ