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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十五章 旅は終わり、終われば家に帰る。辞書にもそう書いてあったし。
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……8月1日(月) 13:00 七日目:撮影・新宿見晴らし台

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十五章 旅は終わり、終われば家に帰る。辞書にもそう書いてあったし。

13:30

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 山頂の見晴らし台では一通り風景を撮ったあと、スタッフさんを含めてお弁当込みで一時間休憩ということになった。

 この間、探検隊の撮影は無し。

 どんな隙も逃さずに撮影をしていたよれひーさんにしては珍しいと思ったのだけど、よれひーさんは湖を眺めたいんだそうな。まぁ、私も最寄りの湖を見に行ったことがあるから、分からなくもない。

「実は子供の頃から、この湖を自分の目で見てみたいと思ってたんだよ。だからちょっと、そのための時間を取らせてほしいんだ」

「は〜い。……じゃあ、私、配信してもいいですか?」

 と、これはぞっちゃん。

「それはいいけど、なにを配信するの?」

「私、スタッフのみんなとお話がしてみたくって」

 だそうだ。

 ぞっちゃんのぞっちゃんらしいところだ。それはいいけど、それはみーちゃんさんの個人のチャンネルでやるようにしてね、ということでぞっちゃんが自分の番組を始めることにした。

 ただ残念ながら携端の商用電波が届いておらず、この場からの配信はできない。私はやちよちゃんの写真を撮ってたから知ってたんだけど、実は電波は新宿の地上に出た頃からずっと繋がっていなかった。ぞっちゃんはここまで携端を出さずにいたから知らなかったらしい。

 それならということで録画の番組をすることにしたようだ。

 ハルカちゃんはカメラマンでぞっちゃんに付き合うとのこと。

 それで、ぞっちゃんの撮影に私は参加せず、その間はやちよちゃんとなんとなく喋ったり写真を撮ったりする事にした。

 どうもやちよちゃんとハルカちゃんはお互いに反発しあっているようで、何もなければお互いに離れたいようだ。お互いに嫌い合うような時間があったわけでないように思うし、どうしても離れたいというわけでもないし、会話をする時に険悪になる感じでもない。

 なんとなく苦手とか、気が合わないってことなのかもしれない。

 なにかの機会に聞いてみるか。

 ……忘れてなければ。

 よほど雰囲気が悪くなると気がつくんだけど、私は他人同士のお互いの不仲というのがあんまり気にならない性質(たち)だから忘れそうなんだよな……。

 ぞっちゃんに付き合うハルカちゃんの意図は、私にやちよちゃんと居て欲しいってことだろう。私自身はやちよちゃんのことは苦手でもなんでもない。表現が上手くない部分はあるにしても言うことがはっきりしているから、どちらかというと好きな方だ。

 そうだ! せっかくだからやちよちゃんの動画も撮っちゃおうかな。

 この見晴らし台、内湾側を見るとまぁまぁ切り立っている上に、見晴らし台として整備されているおかげで景色が良くて、対岸がはっきり見えるけど遠いせいで実際以上の崖になっているように見える。それにつられて手前側も展望台の下が断崖絶壁になってるように錯覚してしまう。

 実際のところは、まぁまぁの急坂ではあるけど崖になってるわけではなく、大きな段差があったとしても踏み外して下まで落っこちるような場所ではない。

 けどやっぱり崖には見えるので、その錯覚を利用して崖から飛び降りるみたいな動画を録りたいということをやちよちゃんに伝える。

 やちよちゃんはそもそも遊びで撮る動画にあんまり馴れても居ないらしく、趣旨の説明をしても要領を得ない。

 そこで一旦やちよちゃんに撮影側に回ってもらって私が実演してみる。

 東京の外の人相手だとではほとんど考えられないことだけど、やちよちゃんは携端の操作にそもそも慣れておらず、実際に画面を見て操作をしながら撮影方法を教えることになった。とはいえテスト撮影の簡単なものだから、ここをタップして録画開始、この画面を見て撮影中の内容確認、ここをタップで撮影終了、という本当に簡単なことだけ。

 そして撮った動画を見て「ほんとに飛び降りたみたいに見えるね」ということに納得してもらった。

 そんな感じで、今度はやちよちゃんを被写体にして飛び降りるトリックをして、最後に下から顔を出してアカンベーをしてもらう動画を私が撮影。

 そんなことをしたりしながら遊んでいた。

 遊んでるうちに予備まで含めて端末のバッテリーが無くなってしまったけど、まぁいいだろう。

 急ぎの用があるわけでもないし、今日この後は池袋に帰るんだからそこで充電できる。

 気になるのはゲームのデイリーミッションぐらいだけど、東京に来て以来それはボロボロだからすでに割り切り済みだ。

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