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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。
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……7月31日(日) 16:00 六日目:撮影・新宿地下街

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 「あれが神社です」と少し離れた場所で教えられた。

 近づいて行くときの見た目の印象は壁の中に埋まったテナントそのもので、外から見たときに神社らしい神秘性のようなものはまったく無い。実際に目の前まで来ると入口付近に鳥居風の意匠が行われているのがわかったけど、実際に独立した鳥居が立っているわけではなかった。

 その鳥居風の意匠を通って実際に神社と呼ばれている場所に入ってみると、室内と言いながら境内のように飾られた場所になっている。

 要は擬似的な庭を作っているのだけど、この趣向のおかげでけっこうばっちり神社に来た感じを味わえるようになっていると思う。

 今日はお祭りをしているとかでもない普通の日なので、他の参詣(さんけい)客は数えるほど。

 私達が撮影をしても交通の邪魔になるというほどではない。


 そして、奥の壁が一面お宮になっているような装飾がされている。

 屋根は無い。屋根のように見える張り出しの装飾はある。

 そして壁の中央部にはお宮っぽい鈴とお賽銭(さいせん)箱がある。

 お賽銭箱の目の前の扉は開いていて、その中にある初代八千代様神像を見ながら参拝(さんぱい)できるようになっていた。

 こういう感じで御神体を(おが)める神社ってもしかしたら珍しいんじゃないかという気がする。

 肝心の御神体は話によると本部の壁と同じ材質なのだそうだけど、なんだか焦げ茶色の女性形の仏像(神像なのだが)という感じで、「へぇこれが」という以上の感想は特に無い。

 ぞっちゃんからは期待通りの「八千代様の仏像」という発言があり、インドの人じゃないから仏像じゃなくて神社の方だよというやり取りがひとくさりあった。「ああ、仏像って(ほとけ)って書くもんね、なるほど〜。なんとなく仏像っぽい雰囲気のものを仏像って呼んでた。仏像って(ほとけ)様のことだって、あんまり考えたこと無かった〜」だそうである。

 厳密にそうかどうかは私も知らないけど、普通は仏教の像が仏像だよと説明した。

 私達は馬鹿っぽい話をしてしまったけど、他の参拝客たちの様子を見るとその像はしっかりありがたがられているものだということは分かった。

 流石に御神体はカメラで撮影してはいけないかもと思ったけどそんなことはなく、普通に撮らせてくれた。

 清水さんいわく「別に秘密にしているものではありませんから」とのことである。



18:00

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そろそろ夕方になって、抗生教拠点へ帰る。

 もう終わりかと思ったらまだ撮影が続き、TOX戦闘部隊の基地を見せてもらう流れがあった。

 とはいえ撮影とは言ってももはや特定の番組の構想に従ったものでもなく、「時系列で並べた時にあると便利だから」という感じの映像なんだそうだ。そういえば最初の頃にそんな事を言っていた。

 もちろん挨拶は無し。挨拶が無いことをネタにもしなかった。


 戦闘部隊の基地は工場地帯の奥の方の旧都庁舎という建物を使っている。

 土に埋まった上の方が屯所で、下の方が戦闘部隊の宿舎などの一般施設になっているという。

 本来なら都庁舎というのはもっと背の高い建物だったそうなのだけど、上の方は折れて吹き飛ばされたということで、もう無い。

 この屯所では実際の戦士の人たちにも会わせてもらった。

 私達が来た土地のことを説明したら、例の『会津の白虎』について話題になったけど、知らんぷりを通した。

 事前に知らなかったら窓ちゃんのことを喋っていたかもしれないと思う。


  *   *   *


 新宿は池袋より見どころが多かったのに、TOX襲来のせいで撤退の予定になりこれらのものを一気に撮影した結果、結構なハードスケジュールになってしまった。本来ならもっと余裕のあるスケジュールだったそうなんだけど予定変更で滞在が二日ほど減ってしまい、当初予定の三倍ぐらいの過密スケジュールになってしまっているらしい。

 確かに、普段の番組の三倍ぐらい疲れたような気がする。

 夕食は会議室のようなところを借りてお弁当の配給。

 明日の朝と昼もご飯はお弁当の配給をもらえるそうだ。

 東京に仕出しのお弁当屋さんのようなものがないことは経験から明らかなので確認したところ、お弁当の件は清水さんの計らいで抗生教会の戦闘部隊の厨房にお世話になっているんだそうな。


 夜の宿泊はその戦闘部隊の宿舎の一室をあてがってもらった。

 初日の赤羽ホテルより更に狭い、本当に寝るだけのような一人部屋。

 御飯のあと、戦闘部隊の共同浴室でシャワーを浴びて、借してもらった簡素な寝間着に着替えたら、三倍疲れている私はもうエネルギー切れ。

 ふらふらで明朝のための着替えを用意して居る時、携端の充電器を持ってくるのを忘れていることに気がついた。

「あ、やべ。充電器忘れた」

 と口には出したけど、予備バッテリー自体はあるので、携端のエネルギーを回復してあげられなくてもそんなには困らない。日中は撮影があるからそれほど携端も使わないし。

 もういい。私は疲れた。三倍疲れている。

 早い時間だけど、そのまま寝てしまった。

 ご飯時に聞いた事によると、ぞっちゃんは編集作業なんかにも参加したいんだそうだ。タフだ。いや、ぞっちゃんはいろんな人と触れ合うとエネルギー回復するタイプだから、今日の撮影でむしろエネルギー回復済みなんだろう。

 単に私のバイタリティが弱いだけなのかもしれないけど。

 明日の予定は登山。

 いや登クレーターだ。

第十四章 了


次回更新は9月1日の予定です。

また、章終わりに合わせて活動報告も更新しています。

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