7月31日(日) 16:00 六日目:撮影・新宿地下街
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。
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7月31日(日)
16:00
六日目
撮影・新宿地下街
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その後は、予定通り町中へ。
徒歩で移動して新宿の町を見学。
ここから次の番組の録画になる。
挨拶のコントは無し。
「ネタが無いのでほんとにコントは無しになりました」とよれひーさんが弱音を吐く、というのが一応のジョークになっていたんだと思う。「なにか、ナレーションだけでできるようなネタがあったら、後から録音だけすればいいし」とも言っていた。
16:15
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町中での見学先は、蚤の市と、件の初代八千代様を祀っているという八千代神社の予定。
まずは蚤の市に行こうということになった。
地下通路から少し上がって、広場のようなところに出た。
この広場も細長くて、地下の宿場と似たような雰囲気であると感じる。
「え? ああ、はい。ここも元は宿場だったと聞いています。ただ、街道に繋がっていないというか、高さ的には地上なので街道の部分にあたるトンネルが無いので宿場として使う理由がないんです。台もあったとは伝えられているんですが、街道に繋がらないなら段差は単に不便なのでそこは埋めてしまって、単なる広場にしてしまっているんですよ」
「上がってきたと思ったら、ここは元々地上なんですか? 外がある?」
「いいえ、ここら一帯クレーターに埋まってますから、今なら地下ウン十メートルです」
「そうだった……」
ここの広場には街道のような作り付けの電灯というのは無い様子で、それぞれ個性のあるランタンなり電灯なりがそこここに置かれている。特に整然とはしておらず、とはいえ通路と露天商の陣地の区別がわかるような感じで、広場には露店が並んでいる。
まぁ、地下だから露天ではないんだけど。
清水さんの説明によると、新宿では日本の現金通貨と抗生教の配給チケットが流通していて、売買行為自体も存在している。とはいえ、私がなんとなくイメージするような商店は無い。コンビニなんかももちろん無い。お店を構えた商店ではなくすべて露天商だ。
清水さんの案内で見て回る。
とはいえ他の場所とは違い、私達は現場で自由に喋る感じではない。工場企画の裏で見学先を調整してくれていた清水さんが先導して店に行き解説をしてくれて、カメラと私達はそれを聞く感じ。感想は後でまとめて言ってください、ということだった。
見ていると価格もおかしな感じだったし、定価という概念は機能していないようだった。
数ある露店の中には大宮とかのその辺のお店で買えるような既製品を置いているところもあったけど、そういうものは軒並み外界より高価であまり購買意欲を感じるものではなかった。既製品以外といえば、自家栽培の農産品や採取した食料、武器のスクラップなんかはこの場所ならではの商品も売っており、そういうものは安い価格で手に入るようであった。
他にはちょっと作ったアクセサリーのような物も売っていたけど、ぞっちゃんが見に行きたいとお願いしても清水さんに止められてしまった。
代わりに、ということでジュースの露店に連れて行ってもらい、買って飲んでみることになった。
いくつかの果物を使ったミックスジュースで、やや渋みがあるけど甘みが強いのと味が濃いので、私でも美味しいと感じるものだった。
17:15
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もうひとつの見学先が八千代神社。
もちろん地下だ。蚤の市の広場があるところから何階層か下り、途中で登ったりを織り交ぜながら新宿の複雑な地下通路を通ってゆく。周辺にはそれなりの人通りがあるのだけど、特に話しかけられたりすることもなく順調に通行できる。
池袋で私と浦和さんだけだった時は話しかけられたのになにか違うもんかねという気もするけど、そういえば迂川郷なんかでも織瀬のみんなで歩いてたりする時には話しかけられにくい傾向がある気はするからそんなものなのかもしれない。
途中、地下からは一歩も出ていない。
なにしろ新宿の町中はすべて地下なのだから、これは当たり前だ。
「あれが神社です」と少し離れた場所で教えられた。
近づいて行くときの見た目の印象は壁の中に埋まったテナントそのもので、外から見たときに神社らしい神秘性のようなものはまったく無い。実際に目の前まで来ると入口付近に鳥居風の意匠が行われているのがわかったけど、実際に独立した鳥居が立っているわけではなかった。
その鳥居風の意匠を通って実際に神社と呼ばれている場所に入ってみると、室内と言いながら境内のように飾られた場所になっている。




