7月31日(日) 13:00 六日目:撮影・新宿野菜工場
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。
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7月31日(日)
13:00
六日目
撮影・新宿野菜工場
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13:00
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お昼時からの工場見学は、新しい番組として最初から撮影。
番組開始の時に挨拶のコントをするのが定例になっているけど、ここでは「予定変更で詰め込み撮影になったから挨拶コントのネタがないよ」というコントをした。「本日はあと一本撮影予定なんですけど、その時の挨拶はどうなっちゃうの〜?」というぞっちゃんの疑問が挨拶の締めだ。
この工場見学はなかなかためになった。
清水さんと工場の人に引率されて、まずは見て回る。
作業着に着替えるための部屋やお弁当を食べながら相談する部屋などを経由し、そこから大通路を経由して別棟の巨大空間へ。
「うわ〜、ひろ〜い」
と、ぞっちゃんが使いやすそうなリアクションをしている。有能だ。
地下農場と言うから日光が入ってこないところなのかと思えば意外とそうではなく、光ファイバーで地上から導入された太陽光と電灯での光とのハイブリッドで光量を整えられて、地下から高さいっぱいまでの約四十メートルほど回転式のプランターが立ち並んで光を受けている。
特に私は野菜工場に詳しいというわけではないんだけど、野菜工場なんてだいたいこんな感じじゃないんだろうかという納得のできる光景ではある。とはいえ規模の巨大さが尋常でないので、なんとも大げさという感想も持ってしまう。
「棚の部分が回転していることに意味はあるんですか? 動力の分だけ結果としては損になっている気もしますけど」
「ひとつには縦長の空間を有効に利用できること、それからその場を動かずに農作業ができて便利で良いという面もあります。もう少し詳しく言うと、限られた光でも耕作面積を増やしながら生産物が受ける光の量を均一化させるなどなどの利点があるにはあるんですが、実はなんでこうなっているのかというのは私達も知らないのです。この工場はこういうものとして、この形で受け継がれてきたものですから」
こういう話は清水さんが教えてくれて、工場の人はあまり喋らない。
「あ、そうか。工場なんていう名前だから最近のもののような気がしてしまったけど、そうではないのか」
「メンテナンスや部品の交換なんかはしていますので、新しく見える部分は実際に新しい物が多いはずですが、水耕栽培の回転式野菜工場であることはここが作られた初期から変わりません」
説明が言い切り型だと、見たのか、というしょうもない混ぜっ返しをしたくなってしまうんだけど、「見たのか」と言ってみても特に面白いわけでもないし、誰も得をしないやり取りになるので控えておく。
とはいえ、いつから変わらないのかっていうのは気になるので質問をする。
「えーと、最初にこの工場を作ったのは誰なんですか?」
「初代の八千代様が命じて作らせたそうです」
「え〜っ、初代〜! ということは地球がここに来てすぐなんだぁ〜。いにしぇ〜」
これはぞっちゃん。
いにしぇ〜ってなんなんだ……。
古いって言いたいんだろうけど、日本語にはそんな感嘆詞はないよ。
「初代ということは、本部の壁みたいに神通力で出した感じですか?」
「実際の建設については、言い伝えでは多くの生成系の能力者が協力して作り上げたと言われています。東京が最も荒れていた時代でもあり、あまりにも古い話でもありますので、能力者たち個々人の名前までは伝えられていませんが」
カメラ中心に、この場の撮影をしながら清水さんの説明が入る感じ。
少なくとも珍しい映像であるらしく、「申し訳有りませんが、清水さんの折角の説明は録音そのままの形では使わない可能性が高そうです。後付けナレーションを入れたドキュメンタリー風の映像にした方が上手く使えると思いますので」と、よれひーさんが謝りながら撮影していた。録音を使わないとなると私達の発言も使われないわけで、詰め込みスケジュールの中、気持ちとしてだいぶ楽だ。




