……7月31日(日) 10:00 五日目:池袋地下居住区画・録画撮影
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。
11:30
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「はい、では到着のシーンをもういちど録りましょう。佐々也ちゃんさんの話がぬるっと始まっちゃった感じなので」
「あ……すいません」
「いいえ、責めてるわけじゃないですよ。繰り返しになりますが、さっと感想を言ってくれて、適切なやり取りがあるというのは撮れ高的にはものすごくありがたいし、番組の見やすさにとっても大事なことですから。佐々也ちゃんさんとハルカちゃんさんのおかげで情報に独自性がある番組になっている部分が大いにあります。ここの録り直しは、そのうえで動画にした時にわかりやすいかどうかっていう順番の話だけなので、佐々也ちゃんさんはそのままで居てください」
「そうそう、さーちゃんが居てくれなかったら過去の東京の話なんて私は疑問にも思わなかったと思うから、さーちゃんの働きは重要だよ」
よれひーさんとぞっちゃんがこう言ってくれる。
素直に嬉しいけど、だいぶ甘く見てもらってるんだろうなぁ、というのは分かる。
とはいえ、私がちょっと心がけたってぞっちゃんのように番組の流れを上手く整えたりできないんだろうからそっち方向で頑張ってみようとするだけ無駄なわけで、素直に褒められておくしかない。
「じゃあ、軽くでいいので、ここがどこなのかから、清水さんお願いします。さんにーいちキュー」
「はい! ここが抗生教の新宿教会です。太陽系時代末期、この近辺にはどうやら巨大遺跡が立ち並んでいたらしくて、現在ではその建物がクレーターの丘に埋没してかなり大きな地下空間として残っているんですね。そういった大きな空間は現在では野菜工場となっており、抗生教の農産物は主にこの新宿教会で生産されています」
「農産物を地下で?」
「地上で生産すると、定期的にやってくるTOXに設備が破壊されてしまいますので」
「TOXが来るということなら、地下でも破壊されるのでは?」
「実際にTOXの攻撃目標にされてることは多いですが、設備が地下にあると必ず地上の開口部からやって来ることになりますので、効果的に防御ができるんです」
言われてみればそうなのかもしれないとは思うけど、実感としてはまったくわからないみたいなところはある。逆に反論を思いつくようなこともないので、私にはわからないけどきっとそうなんだろうなぁと思える。
質問した手前、何も言わないわけにもいかないので、すべてが丸く収まる必殺の一言でまとめることにする。
「なるほど」
わたしがそう言うと、この場の最後はよれひーさんが締め。
「今日はこれからこの新宿の工場と町の見学をします。明日は新宿の上に出てクレーター湖を見に行く予定です。TOXのお陰でちょっと予定がぎゅうぎゅうになっていますが、頑張っていきましょう」
「はーい」




