7月30日(土) 20:00 五日目:抗生教池袋宿所・通話
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十四章 街道を行く。新宿〜池袋。
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7月30日(土)
20:00
五日目
抗生教池袋宿所
通話
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宿場――太陽系時代の呼び方だと駅――での撮影を終え、宿所に戻ってきた。
いまは自室で一息ついて、夕食を待っている。
カメラの前であること無いこと喋ったのをバツの悪い気持ちで思い返している。誰の手前とか、何に比べてとかでなく、本当に自分は人前で無内容なことを喋っていたよなぁという反省。ぞっちゃんやよれひーさんは褒めてくれるけど、それでもなんとなく辛い。
たぶん、私はストリーマーに向いた性格ではないんだろうと思う。
それはそうだ。
人と居ると疲れてしまう性格だし、着飾って見てもらったりするのがすごく好きなわけでもない(褒められるのは嬉しいけど)。だから不向きだとしても意外ではないとは感じる。
ふと思いついて、電車のこともあるし、今晩こそは幹侍郎ちゃんと話そうと思ってゴジにメッセを入れた。
ぞっちゃんが寂しがっても一日ぐらいは断ってもいいだろう。
本当はいつだって断っても良かったはずだけど、それはそれでぞっちゃんが可哀想だ。いくらなんでも友達甲斐がなさすぎる。
そう思っていたところ、呼ばれて集まった夕飯時に、ぞっちゃんが自分の配信をやりたいと言い出した。
なんでも街道付近の風景に感銘を受けたので写真を撮ってまわったりしたいのだそうな。暗いところでより映えて見える撮影方法をどこかで憶えてきたからそれを試したいと言う。
私は疲れたからと理由をつけて辞退。ほんとは写真なんて撮られたくないし、幹侍郎ちゃんと通話したいというのが辞退の理由だけど、まぁいいだろう。嘘も方便っていう言葉だってある。
私は行かないけど、ハルカちゃんと二人で行ったらどうかと提案した。
これまでハルカちゃんはこういう撮影にあんまり協力的でなかったけど、寂しがりのぞっちゃんを一人にするのは可哀想なので焚き付けてみることにしたのだ。ハルカちゃんといえばアイドル大好きみたいなところがあるので「アイドルの写真集みたいなの撮ってきなよ」と言ってみる。見え見えすぎるかなーと思ったけど、ハルカちゃんはこれで俄然やる気になってくれたようだ。
私が乗り気じゃないからあえて乗ってくれたのかもしれない、とも思うけど。
本当は正直なところ、写真はともかく街道にはちょっとは興味があったんだけど、日程を考えると明日は新宿に行って宿泊するらしいので通話の余裕が取れないかもしれないし、その後はすぐに帰ることになっているので『東京』という特別な場所から通話ができなくなってしまう。せっかく遠くまで来たのだから幹侍郎ちゃんには遠隔地からの通話を受けてもらいたいし、だとしたらどうせなら東京からの通話の方がいいだろう。
幹侍郎ちゃんとの通話を突然思い立ったような気がしていたけど、こうして考えると今日思いついてよかった。
それになにより、もうゴジにはその予定でメッセを送っちゃったからその通りに行動したいのだ。
予定を立てたならできればその通りに行動したいという私の欲求もあるけど、なにより子供相手の約束を違えるのは避けたい。
* * *
夜の八時になる前ゴジに通話をかけたらすぐに出てくれた。
カメラはオフ。でも通話開始直後から身動きをしているような音がする。
「じゃあ、僕は先に幹侍郎のところの準備しに行くから、窓ちゃんは後から来て」
そう言って、ゴジは窓ちゃんに端末を渡した。
挨拶もなしかい、とは思うけど、実際は一昨日話したばっかりだもんな。久しぶりというわけでさえない。こういう通話の場合、普段は直接用件だったような気はする。そもそも、いつもはゴジとどんな挨拶してたかなんて思い出せない。
それにしても、この時間にまだ窓ちゃんがいるのか……。
なるほどゴジに彼女ができるってこういう感じか、という変な納得感がある。
窓ちゃんだから良かったようなものの、これがもうちょっと良く知らない人だったらどうしたらいいのかわからなくなるところだった。




