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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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6月21日(火) 16:40

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……


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 私たちは地球の現状、常識と言われるようなことを質問を受けながら答えてゆく。

 なぜ地球の文明は進歩していないのか、同じダイソン球内の他の惑星と連絡を取らないのはなぜか、TOXとはなんなのか。


 私はTOXの専門家ではないけど、学校で歴史を習うから常識として知っている。

 地球が進歩しないのは、それを何者かに妨げられているから。

 大まかに言うと、現在の地球では大都市を作ることができない。それを禁じているのは謎の意思というか、おそらくダイソン球の主と思われる何者かそれがTOXだ。そのTOXの気に障るようなことが地上で起きたとき、宇宙からTOXがやってきて『気に触った物』を破壊する。なにが気に障っているのかは分からないけど、とにかく人間がなにか彼らの禁忌に触れるようなことをするとTOXが落ちてきてそれを破壊する。

 しかしながら、人類が滅亡するほどの大破壊はしない。そういう状態が繰り返されていて、人類は滅亡もしないが進歩もできない。大都市を作るのが禁じられているというのは、ある程度の大きさの街ができると決まってTOXにやられるからという経験法則であって、TOXから条件を教えてもらったわけではない。

 TOXとはなにかというと、これはなかなか説明が難しい。地球人側が名付けたときの語源は『毒』だそうだ。省略せずに呼ぶと Terrible Objects from eXternal world 。日本語に翻訳しても『外の世界から来た怖いやつ』ぐらいにしかならないほとんど意味のない言葉で、どっちかっていうと省略してTOXにしたかっただけらしい。

 具体的には、宇宙から地球に来る、人間や市街地を攻撃してくる『なにか(・・・)』である。大きさや姿もまちまち、攻撃方法もまちまち。単純に地上に落ちてくる隕石のような物体という場合もあるし、人間を襲う毛虫のロボットみたいな場合もある。兵器と言葉を変えるにしては自律性能が高いものもある一方、ほとんど単なる隕石みたいなものもある。

 共通点は宇宙から来ることと、攻撃してくるTOXそれ自体は自律性のが高くても知能はなさそうであること。

 このダイソン球の中に来てからの人類の歴史はTOXとの闘争の歴史と思ってもよいぐらいだ。まず最初に世界中の大都市が質量攻撃を受け、その上で小型TOXによる虐殺が起こり、地球の人口が三分の一になったという。実際には元の太陽系とも切り離されているので、そちらも入れると全世界の人口は一気に五分の一ぐらいになったらしい。

 人が集まると殺られる、なにか気に入らないことがあると殺られるという、壮絶な闘争のなかで文化は概ね二十世紀頃の水準まで退行もしたが、だんだんと『TOXに攻撃されずに共存する』生活を編み出していった。

 日本では、TOXとの戦いで特に激戦地となったのが東京で、ほとんど人の住めない土地になってしまった。いまでは東京にはTOXとの戦いの中で大きく変異してしまって人間と共存できなくなった変異者たちだけが住んでいるらしい。実際に行ってみたことがあるわけではないので、本当かどうかは知らないけど。

 共存できる範囲で変異した人間たちは、能力者として生活に混ざっているし、特に戦いに向いた能力者はTOXを退治する防衛隊に参加している。私の知り合いだとゴジが防衛隊に参加しない能力者で、窓ちゃんとユカちゃんが防衛隊だ。もちろん特別な能力なんてない人間も居る。例えば私だ。どちらかと言えば能力者でない人間の方が多いけど、あまり役に立たないような能力まで含めると、能力者は全体の五パーセントぐらいは居るらしいので、稀というほどでもない。

 とにかく人が集まると狙われやすいのだけは確かなので、人類は地球上に広く薄く住み着いてほぼすべての場所が郊外という状態になった。それでも人口の濃淡はあって、私が住んでいるこの折瀬はかなりの田舎。また、沢山の人が集まると攻撃が激しくて、集まり過ぎなければそれほどでもないTOXが来るような妙な均衡があるので、ギリギリTOXが来るか来ないかぐらいの人数になるように調整をしながら住んでいる街も多いし、そういう街にTOXが降りてくる事自体はまぁまぁよくある。防衛隊はそういう「それほどでもないTOX」を処理するのには慣れているし、さらにはTOXもバカ正直に毎度毎度宇宙から降りてくるので、天体観測をしてどこに来そうなのかの予報が行われていたりもする。

 宇宙観測は許されるけど、宇宙への迎撃ミサイルは破壊される。TOX襲撃の条件はやはり謎だ。

 そういう感じでTOX襲撃とバランスを取りながら人類は生きてきた。


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