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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十三章 薄暮の赤雲、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。
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……7月29日(金) 19:00 四日目:抗生教池袋宿所屋上

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十三章 薄暮(はくぼ)赤雲(あかぐも)、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「知らないよ。そもそも高階者ってなに?」

「えーと、この状況を作り出してる上位存在、とかなんとか……」

「私が知る限り、地球は自ら望んで今の状況に居るわけじゃないから、違うんじゃない?」

「じゃあ、地球はTOXさんのこと知ってるって?」

「さあ……? そうかもしれないと思ったこともないんで、確認したことはないから……。でも、二人の話は興味深かったよ。私は地球の健康なんて考えたことなかった。間違ってるところがあるとすれば、地球――ガイアさんだっけ?――は人間のことを病原菌だとは思ってないってことぐらいかな。地球は人間のことを、他の生き物、動物とか植物と同じぐらいには大事にしてるよ」

「あ、そこは他と同じぐらいなんだ……」

 こうして聞くと、やちよちゃんはガイアさん――つまり『高階者地球』――が憑依していて、彼女の口を通じて地球が直接喋ってるという感じではないようだ。

 感じからすると会って話したことがある『知り合い』ぐらいの距離感だろうか。

「それは手足と内臓のどっちが大切なんてことないでしょ、ガイアさんとしても」

「そこはほら、手足は一本ぐらい無くなっても死ぬほどじゃないけど、心臓は一個無くなったら死んじゃうから、心臓の方が大事とかありそうなもんじゃん」

「だったら、佐々也ちゃんはいま手足切り落とせる?」

「イヤだよそんなの。切るならハルカちゃんのにしてよ。また生えてくるんだから」

「適当なことを……。また生えてくるけど、欠落部位が大きいと大変なんだよ?」

 そういえば片手がないまま何日か過ごしてたな、ということを思い出した。

「えっ、ハルカちゃんの手足って生えてくるの!? きのこだから? ……あ、いや、それはいまはいいや。えーと、ガイアさん的にも人間が死滅したらまた生えて来るわけじゃないから、そこは大切にしてるんだよ」

「なるほど。……うーん、ガイアさんの例え、わかりやすい」

 やちよちゃんは話が早い。

 私は『人間全体でひとつのなにか』という概念を受け入れるのに少し時間がかかったけど、やちよちゃんは大丈夫なんだから大したもんだ。

「まぁでも私が知ってる地球の意識は、ガイアさんとは別だけどね」

「まぁ、そりゃそうだろうね……。実際の地球はどういう人なの?」

「人じゃないよ。人間には似てない」

「……意図があるのに?」

「動物にだって昆虫にだって意図はあるから、意図って人間だけ持ってるものじゃないよ」

「ああ、そういう……」

 『意図』という言葉は、やっぱり私が思っていたのと少し意味が違うのか……。

「そういうって? 他になにかあるの?」

「いや他のっていうのじゃなくて、単に言葉の意味の話。うーんと、意図っていうのは誰かのものでしょ? それが人間なら私は私をもとにして想像しやすい。それが最初に考えてた意図の意味だけど、犬猫だと人間とはちょっと違うと思うし、昆虫だともっと違うと思う。でも、意図があると言われればなんとなくわかるし、意図を思い描くことはできる。まぁ、あってるかどうかはわからないけど、意図だと言われればそうかなと思う。だから、最初と思ってたのとちょっと違う感じのものになるだろうな、ってこと」

「言葉の意味って、そんなに簡単に変わるもの?」

「意味は変わってないと思うよ。私が間違って理解してたんだと思う。その間違いの元になった場所が、今回は『意図』っていう言葉だったから、自分の理解を修正したって感じ」

「……難しいこと考えてるんだね。でも、ちょっと感じ悪かったよ?」

「それはごめん。私は言葉を理解する能力が普通より低いらしくて、言われた言葉を言った人の思い通りに理解できなくて、よく勘違いして、そのせいで感じが悪くなっちゃうことが本当によくあるんだ……。直したいとは思ってるんだけど……、勘違いを減らすのは難しいよね……」

 これはいつでも私の反省点だ。あと耳が良くないのか、よく聞き間違えて更に間違いが加速する。

「言葉を理解する能力が低い? 佐々也ちゃん言葉いっぱい知ってるよね?」

「取り違えて間違えるってことなんだから、コミュニケーションの能力と語彙力は関係ないよ。口下手な小説家だって居るらしいし」

「まぁ、そう……かもね。とりあえず私は怒ってないけど、でも感じが悪かったことだけは言っておきたいと思ったんだよ。でも怒ってないけどね、言っておきたかったんだ」

「うん、ありがとう。勘違いを訂正しやすいから、私はそういうのがありがたい」

 心からの本心だ。本心過ぎて、感情が乗っていなかったかもしれない。


★おしらせ★

十三章は分割が三〇を超えたので、月をまたいで同章の更新をします。

(32部分までとなり、7月2日までの連続更新となります)

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