……6月21日(火) 15:55
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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「天宮さん、探検に来たということは戻るんだよね? ここから出られるの?」
「調べてみないことには、出られるかどうかはは分からない。今は情報収集中というか、情報収集をこれから始める段階」
「戻れるかわからないのに来ちゃったの!? そんなことで探検なんかして大丈夫?」
「佐々也……」
ゴジがそう言いながら肩に手を載せてきた。これは止めておけの合図。
まぁ言っちゃったものは戻らないし、一生のうちに二度とあるかどうかわからない未知の知的生命とのファーストコンタクトだから、ゴジに制止されたぐらいじゃ止めたりはしませんよ。
「いちおう探検して戻るみたいな大まかな目標はあるんだけど、期限とか特定の目的があるわけじゃないのよね」
「えええ……」
「だからまぁ、別の話になるけど、あなたたちを殺すもなにも理由がない。帰るあてこそないけど、ふらっと来たみたいな感じだから、殺人をするほどの強い目的意識がないというか」
「秘密を守らないといけないとかは?」
「あー。まぁ、それはそう。あなた達に話を聞いてみて、私の正体とかどこから来たかとかは秘密にしようとはいまのところ思ってるかな。ここが人類社会なら、私の存在が公になったら自由な行動ができなくなる見込みはおそらく高いものね」
「そっかぁ……。あれ? これ用済みになったら殺すって言われた?」
「えっ!?」
ゴジが驚いて硬直している。なんかごめんね、ゴジを脅すのは全く本意ではない。
どちらかといえば、それをしそうだと思わないから口に出して聞いてみているみたいなところはある。
「まさか、殺さないってば。殺したら死んじゃうことはよく知ってるし、人間を殺すと人間社会で問題になることも知ってる。あと、私の情緒は人間をモデルにしているから、人間の友だちがいると安定するの。そういう感じだから、命を取ろうとなんてしないからね」
指を切り落とすところも見たから人間とちょっと違うってのは見てわかってる。話の通りの元の太陽系から来た新手の知的生命ということなら、これはもう目前の納得以上に充分に人間とは違う。
でも天宮さんが説明してくれたことを確かめる術はないから、さしあたり信用するしかないみたいなところもある。最初から疑ってはいたけど、ここまで聞いても本当なのか幻覚能力者の手の混んだ嘘なのかはわからない。とはいえ、私自身の目撃情報と天宮さんの説明の間に、ここまではボロも出ず整合性があることは確かだと思う。
わからん。意味もなく唸ってみる。
「うーん……」
もしかしたら天宮さんの説明が全部嘘で本当は幻覚の能力者みたいな可能性はまだある。あるけど、だとしても私みたいな普通の高校生に対してここまで凝ったネタで騙す意味があるんだろうか? 地面から生えてきた、火球を見たという事前の仕込みもある。ちょっとあまりにも大掛かりじゃないか?
「うーん……」
もう一つ唸る。
面白い話ではあるから後になって嘘が発覚するとしても、面白いと思って話を聞く方がお得だと思える。だから、ひとまず天宮さんの言うことを信じようと思う。
まぁ、害のない範囲で。
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6月21日(火)
16:40
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とにかくお互いに情報がないのだということが納得できたので、天宮さんと私たちは広くたくさん情報交換をすることにした。つまり、ここ五千年の地球の運命と、一万年の地球以外の人類の歴史について。
まぁ、絵面としては川原にあるバーベキュー公園のガーデンテーブルで学校帰りの高校生たちが屯しているだけなんだけど。
私たちは地球の現状、常識と言われるようなことを質問を受けながら答えてゆく。
なぜ地球の文明は進歩していないのか、同じダイソン球内の他の惑星と連絡を取らないのはなぜか、TOXとはなんなのか。