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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十三章 薄暮の赤雲、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。
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……7月29日(金) 19:00 四日目:抗生教池袋宿所屋上

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十三章 薄暮(はくぼ)赤雲(あかぐも)、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「自動ドア! そういうのが作れるならもっと大歓迎だよ。むしろ、戦わないロボットを作るよりそっちの方がいい。東京(ここ)は物が豊かな場所ではないから」

 ゴジの能力は『劣った機械を作る』というものだから、なんでも良いのであればここでは重宝されるということなんだろう。ゴジはいつも買ったものの方が使いやすいということを言っていたけど、物が買えない東京ならばゴジの能力が上手く活用できるということになるわけだ。一方でここに来るように誘われている私だけど……。

「あと、仮に私が来たとしても、私はなんにもできないよ?」

「佐々也ちゃんは別にそういうのが無くても、私のお客様で大丈夫だよ?」

「そうなの? それなら……。あ、いや」

 そしたら幹侍郎ちゃんもお客様にしてもらえるとありがたいんだけど……。

 そう思うのは図々しいというか、私と幹侍郎ちゃんで受け入れる時の負担や、受け入れる時の気持ちが違うのはわからない事はないのだ。条件のすり合わせはまだ早い気がする。

 それより前に確認するとしたらえーっと……、どこに住むかとかかな?

「そ……その、さっきも言った通り体がかなり大きいんだけど、何処(どこ)か……」

「待って。その前に、ちょっと気になることがあるんだけど?」

 やちよちゃんと私が細かい話を続けようとする中、自己紹介以降はほとんど静かにしていたハルカちゃんが、改めて、という感じで声を上げた。

「佐々也ちゃんが東京に来るメリットってなに?」

「それは佐々也ちゃんの身の安全だけど?」

「そうじゃなくて、抗生教側のメリットだよ。自分でも言ってるけど、佐々也ちゃんは特になにができるというわけではない」

「うっ……」

 私はなにもできない。

 その通りだし、自分でも言ったけど、人に言われるとなんか傷付く。胸を押さえるジェスチャーでその気持をささやかに表現する。

「私、友だちが欲しいんだよ……。孤独で……」

「それが嘘だとは言わないけど、負担が大きすぎるよね? 東京がTOXから攻撃される見込みが、もっと高くなるんだよ?」

「東京はいつでも攻撃を受けてるから、ちょっとぐらいじゃ変わらない」

 ひとつづつの言い分を聞くと、まぁそうなんだろうなというものばっかりだけど、それはそれとしてやちよちゃんの反応はなんかおかしいように感じる。

 はぐらかしているというか……。

 そこにハルカちゃんがズバッと切り込む。

「たぶんだけど、抗生教はこの東京に攻撃を集中させたい……。違う?」

「まさか! なんでそんなことをしなくちゃいけないの?」

「それがわからないから教えてほしいんだ」

 見るに見かねてなにかの親切で、みたいなことではない、ということなんだろう。

 やちよちゃんの態度から、その親切が裏切られたみたいな雰囲気は出ていない。だからきっとハルカちゃんの見立ては正しい。

「そんなこと言われても……。私だってTOXが来て嬉しいわけじゃないんだから……」

「……もしかしてだけど、ここの空気と関係ある?」

 やちよちゃんのいうことを微妙に無視しながら、ハルカちゃんは言いたいことを次々と言ってゆく。でも、ハルカちゃんの言葉に、やちよちゃんは心当たりがないらしかった。

「空気?」

「ああ! 空気のやつ。あれから、なにか分かったの?」

 私には心当たりがあった。

 初日に空気がザラザラすると言っていた話のことだ。正直、今まで忘れてたけど、普通に興味がある。

「うん。多分だけど、この周辺にはTOXが持ち込んだと思われる塵埃(じんあい)が漂ってる様子なんだよね……。それも、まあまあの量が」

「じんあいって何?」

(ちり)とか(ほこり)のこと。でも、TOXが持ち込んだ物質だってなんでわかるの? TOXが持ち込んでるとしたら宇宙から来るものなんだから、いくらかのものは飛んでるうちにくっつくとかで持ち込んでるもんなんじゃないの?」

「宇宙空間由来の塵埃についてはそれはもちろんそうなんだけど、それにしてはかなり量が多いというか……。少なくとも私の体表面で感知できるぐらいだから、仮にそういう経路だと仮定すると塵埃の量が多すぎるの」

「お、おう……」

 ハルカちゃんの体表面がどうなってるのかまったくわからんので、どれくらい異常なのかが全くわからない。

「それに、調べてみるとサイズがかなり斉一で、ちょうど(いち)マイクロメートル前後。宇宙からいろいろなものをくっつけて地球に落ちて来ているなら、塵埃のサイズはバラバラになるはずなのにそうではない」

「マイクロメートル? それは、小さいものとしてはかなり大きいのでは? えーと、確かマスクの防塵性能とかがそんな感じだから、工業的な微細粉塵とかと同じぐらい? ってことは、それぐらいのサイズのものって目に見えたり敏感な人なら感知できるのでは? 確か髪の毛がマイクロメートルだよね?」

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