……6月21日(火) 15:55
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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「食いつきがすごいな……」
「それは食いつくでしょ!」
「いっぺんに言われても答えられないよ。ひとつずつ答えていっていい?」
天宮さんの問にこくこくと頷く。
それに、いっぺんに質問しといてなんだけど、全部一度に答えられてもたぶん理解できないし。順番に答えてもらうのは願ったりだ。
「ええと、私達のことから始めるね。元の人類が銀沙になったわけじゃないけど、私が人間の姿をしている理由としてはそう違わないと言うか……。ええと、太陽系から地球が去って一万年、人類は健在だけど、現在では人類活動から生み出された新しい知的生命も文明の一員になっているの」
「人類活動から生み出された知的生命って、やっぱりロボットなのでは? えっ! 一万年!? 時間が合わなくない?」
「合ってないよね」
「……なんでそんなことに?」
「さあ? 知らない。でも、普通はこの地球みたいに惑星が突然消えたりどこかに行ったりしないものだから、それに関係してるんじゃないかと思ってるけど」
ああそうか、時間に関わらず何かがおかしいとしたら、元の場所に存在し続けた方じゃなくて、不自然な移動をした地球の方。考えてみたこともないけどその方がありそうだ、たしかに。
「もったいつけるわりに、知らないことも多いんだな」
ゴジが嫌味っぽい口調で切り返している。
いまの話を聞いて、内容じゃなくてよくそんなことに気がつくよな。
「知らないことのほうが多いよ。だから情報交換をしたいわけ」
この発言は辻褄が通ってないこともない。
というか、天宮さんの話としては辻褄が合うかどうか、手元の情報だけで判断できる珍しいケースだ。
「これは、長い話になりそう……」
「分かってもらえたみたいね」
ひとまず天宮さんの意味のわからなさを理解するための道筋がついた。真偽はひとまず置いておいて、彼女が主張するバックストーリーを知りたい。矛盾が出てきたらそこで改めて真偽を追求すればいい。
ただその前に、話の内容の性格を確認するために知りたいことがある。
「こう、細かい話に移る前に確認しておきたい事があるんだけど、天宮さんはなんのためにはるばるこの地球に来たの? 目的は?」
「どんどん質問が増えるね。まぁいいか。目的ね? それが実は、特に目的はないと言うか……、あえて言うならダイソン球の調査のために私の胞素体を送り込んだ、みたいな事らしいよ。まさか地球があるとは……」
『ほうそたい』ってなんだ? とさっきから思ってるけど、要するに言葉の問題なのでそれはまた後で聞こう。とりあえずいまは、なんか降下してきたり、送り込んだりできるものということで。
「……つまり、元の太陽系から地球に来たのって偶然なの?」
「そういうこと」
「えーっ、そんな偶然ある?」
「うーんと、ここに来たのは偶然ではないよ。なにしろ外から見たらダイソン球だから、この場所に何かあるのは確実だった。でもまさか地球が入っているとは、という感じ。そもそも一万年も音信不通だったから、消滅したものだと思われてるし」
「消えてないよ!」
「ね? まさかここが地球だとは思わなくて私もびっくりしちゃった」
「軽いなぁ……」
ゴジがぼそっと感想を呟く。
まったくだよ。
とはいえ重々しく言ったところでどうにもならないだろうし。それに、大発見だからといって、私達に地球が消滅してないのを発表してくれたとしても元から知ってるしなぁ。こちらとしては地球がいなくなった後の元太陽系の事の方が驚きだ。
「天宮さん、探検に来たということは戻るんだよね? ここから出られるの?」
「調べてみないことには、出られるかどうかはは分からない。今は情報収集中というか、情報収集をこれから始める段階」




