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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十三章 薄暮の赤雲、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。
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……7月29日(金) 19:00 四日目:抗生教池袋宿所屋上

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十三章 薄暮(はくぼ)赤雲(あかぐも)、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 よく当たる占いとかにも根拠は不明だったりすることは多い。

 でも、本当は厳密には、次に当たるかわからないというのは科学の法則でも同じだ。

 自然科学の法則は『これまで繰り返さし確認されてきたから』信用する根拠が多いことが約束されているだけに過ぎないと言おうと思えば言える。占いと科学の違いは『確かめた事実』というより、『確かめる方法に関する約束』の方にある。

 実験科学者でもない『私』からすれば、占いと科学を信じる根拠の違いはその程度だ。

 自然科学の法則については具体的な確認規則が明示されていてこれまで繰り返し確認されてきたけど、占いの根拠に関する確認規則というのは特に無いように思うから、占いと科学の信頼性が本当に同じなのかと言えばもちろん違うけど、本当は厳密には『私』にはそれぞれの信頼性を一回ごとに見分ける事はできない。

 だから本当に憶測を排除して、目の前の発言者に対して『私』が誠実に向き合うのならば、とある根拠に基づいた予測を信用するかどうか、『科学の法則に基づいていると主張する場合』と『占いっぽい根拠に基づいて主張する場合』に、お互いの違いを見出す要素は無いとも言える。

 これは、普通なら信用されている自然科学側に責任があるんじゃなくて、私が自然科学がやっているのと同じやり方で自然科学を信用することができていないという話だ。科学っぽいから科学なわけじゃなくて、自然科学というのは『何かを信用すること』についても適切なやり方があり、厳密にそれを守るから信用できるものになっている。

 つまり、本当は厳密には、『誠実に』『目の前の発言者に』向き合うというこの場合、『科学のやり方で信用性を確認せず』に『根拠が科学的でない』と判断して、それを理由に相手を疑うのは先入観なのであって、採用することに決めている規則としての『誠実さ』に対する違反になってしまう。

 いま私の目の前にいるのはやちよちゃんで、やちよちゃんが私と同じやり方で信用のことを考えているとは限らない――というかたぶん違うと思うけど――から、こんなこと考えたって無駄なんだけど、改めて考えることで自分がどうすべきかというのが見えてくる部分はある……。

 そもそも重力だって言ってるんだから、占いと比べたら科学っぽい感じもするし……。


「佐々也ちゃんどうしちゃった? フリーズした?」

「うーん……、重力のことについて考えてた」

「重力について? 佐々也ちゃん重力に詳しいの?」

「別に詳しくはないんだけど、身近にあるから親しみはあるよね。あと、最近はイルカの知り合いが居るから、重力について考える機会がわりと多かった」

 全部本当である。

 重力について詳しいか聞かれて、こんな答え方をする日が来ると思ったことはない。

 やちよちゃんの『地球が重力を使ってTOX観測している』という発言を信じるかどうかに関しては、難しく考えすぎてすぐには結論が出なくなってしまったのでとりあえず信用することにする。

 というか、信用しない場合にはやちよちゃんとの関係を築いていくのに問題が出そうだから信用するしか無いみたいなところはある。難しく考えるだけ損した感じだ。なにも結論が出なかったんだからなおさら損だ。

 とりあえず損得勘定は置いておいて、今度は私からやちよちゃんに聞き返す。

「まぁいいや。それで、やちよちゃんは私にTOXが来るのを教えてくれたかったの? なにかした方がいいってこと?」

「うん、そうだよ。佐々也ちゃんにはTOXが来る時に東京に居て欲しいの」

「私が東京に? どうしてまた。……私、TOXと戦える能力とかなんにも無いよ?」

 普通に疑問だ。

 それともなにか地球の意思的な意味で、私が居ると戦いが有利とかがあるんだろうか。

 まだ知らない私の隠された能力が東京限定で発動するとかそういうやつ?

「それは……佐々也ちゃんがいるところにTOXが来るからだよ。あまり色々なところにTOXをバラ撒きたくないんだってさ」

「なぜ伝聞形? それにTOXをバラ撒くって誰かが意図的にやってるわけじゃ……、って私の所にTOXが来る!? 私の所なの!?」

 そう言えば東京に来たもうひとつの目的は、コンプレキシティが強い私がTOXを引き付けているのか、TOXと叡一くんが行きたがっていた幹侍郎ちゃんの居る所なのか、その切り分けができたら儲けものという話だった。

 ちょっと忘れ気味だったけど、ここに来て急にその話になるのか。

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