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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十三章 薄暮の赤雲、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。
312/489

……7月29日(木) 14:00 四日目 :抗生教池袋宿所・番組撮影

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十三章 薄暮(はくぼ)赤雲(あかぐも)、独り屋上。呼ばれてなくても現れる。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「東京の隣だから大宮の人数は例外ではあるんですけどね。でも、いままで自分は地球上で最大の都市に住んでる都会人だと思って調子に乗ってたんですが、この話を聞いてしまうとたいしたことない気がしてきますね……。ええとそうだ、新宿の名前が出たんでした。その話をしたいんですよ。清水さん、新宿の話からお願いします」

16:05

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 収録もだんだんと終盤に差し掛かり。よれひーさんが軽い告知を入れる。

「はい。さっきも話題に出た新宿ですが、明後日、新宿の巨大遺跡にご案内します。明日は池袋のみんなが住んでいる地下施設とか食糧生産施設とかの見学です」

「新宿には巨大遺跡があるんですか? 太陽系時代のまま壊れてないんですか?」

 これはハルカちゃん。

 太陽系時代当時の建築物をそのまま見れるなら嬉しい、ということなんだろう。

 それに清水さんが答える。

「太陽系時代のものとしては壊れてるんですが、状態がいいんです。クレーターの斜面に大半は埋まっているのが良かったんでしょうね」

「大半がクレーターの斜面に埋まっている?」

 ついオウム返しに聞き返してしまったけど、宗教の話題じゃないからセーフ。

 要は山の下敷きになっているような話で、大半ということは露出している部分もあるということだろうか?

「はい。実際は見てのお楽しみにしましょう。なかなか規模が大きくて面白いところですよ。巨大遺跡と言えば池袋、新宿、渋谷なんですが、さっきまでの話の通り、すべて地下で繋がっています」

 清水さんの言葉にハルカちゃんが不思議そうな顔をしている。

「巨大駅といえばあとは東京駅があると思いますが、東京駅はどうなっていますか?」

「東京駅? ちょっと知らないですね。東京というのは地域全体の名前じゃないんですか?」

「東京駅というのは江戸城……、東京の皇居近くの駅で、場所的には東京湾の突き当りから少し北西に行った付近なんですが……」

 清水さんはハルカちゃんの言葉を聞いてちょっと考えるが、思い当たった様子だ。

「実は大きな東京地図があるので、せっかくだから見てみましょう」

 そう言って、持ってきていた地図の巻物を、壁に掛けていた既存の資料の上に広げる。

 何度も使っている様子の地図だけど、等高線が書いてあるような地図ではなく、線画で書かれた大まかな輪郭線と、東京地域の川や山、森、野原などが描かれた地形の絵地図だった。

 東京湾の一番奥その北西、つまり湾の左上側に書いてあるのは、大きな青い丸。

 さっき私が使わないといってしまった棒の先端で、清水さんはビシッとその丸を指す。

「そのあたりはここ。つまりクレーターの中心付近ですから、消滅してるでしょうね。中心地では水深五〇メートルまでえぐれているということですから」

「あ……、そうでした……」

「地下道も、クレーター湖の下は通っていません。これは普段ならあまり説明の要らないことなんですけど、古代の東京に詳しい人だとこういう説明が必要になるんですね。これは気づきませんでした」

「ははは。お恥ずかしい……」

 ハルカちゃんがごまかし笑いをしている。これはなんだか珍しい。

 その後、地図上での池袋と赤羽の場所を教えてもらった。新宿、渋谷や、天王洲という場所。それから東京のクレーターについても教えてもらった。

 クレーターの内輪はおよそ半径三キロメートル、クレーターの外輪はおよそ六キロメートルぐらいということだ。内輪の内側は深い穴となっていて、そこに水が溜まっている。火山の火口に似た内輪の丘は高さおよそ五〇〇メートル。そこから外輪までの三キロはほぼ真っすぐなだらかな坂になっている。

 平均勾配十五パーセントほどで、無理すれば自転車で登れないこともないぐらいの傾斜である。富士山の五合目から頂上までの平均勾配は二十五パーセントぐらいということなので、それに比べればかなりなだらかなんだとか。


「はい、じゃあ、清水先生の東京教室は、これで終わりになります。清水さんには明日以降もガイドさんとして付き添っていただくことになりますので、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「レザミ・オリセの皆さんはどうでしたか?」

「は〜い! 勉強になりました〜」

「……余計なことを喋りすぎてしまいました……、ごめんなさい」

「ハルカちゃんはこう言ってますけど、過去の東京のことと今の東京という両方を思い描いてみることができたから良かったよ。鉄道の、なんとかが一日で三〇〇万人っていうのはびっくりしたし、急にたくさん喋ったのにもびっくりしたけど。でも、知らないことをたくさん教えてもらって楽しかったです。新宿の巨大遺跡に行くのが楽しみ」

「あ、佐々也ちゃんさんがきれいに全部言ってくれたので、私はまとめを言う必要がなくなりました。それじゃあ、また明日の池袋の住人の方々の中に入っていく番組をお楽しみに! それじゃーねーさよれいひー」

「はいカット」

 と、よれひーさんの挨拶の後にけんちゃんさんのカットが入った。

 今日の収録はこれでおしまい。

 まだ夕方の手前ぐらいの時間帯だ。

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