……6月21日(火) 15:55
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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「ああ! 佐々也が見たって言ってた火球、天宮さんだったのか……。なんか点と点が繋がってきたな……」
なにこの偶然?
あ、いや。火球が珍しいだけで、火球がありさえすればそれを私が見ることはそんなにありえなくもないのか。奇跡と言うほどじゃなくて、ご縁があるってぐらいかな。
天宮さんの人外らしさには畏れもあるんだけど、非日常的な出来事に優先的に関われることにはなんだか誇らしい気もする。ゴジの表情を横目で確認すると、どちらかと言うとうんざりしているような表情だ。
私は逆に、ちょっと嬉しくなってきた。
なんというか、物語の登場人物になったようなわくわく感がある。
「でも、人間以外の生命ならなんで人間の形をしてるの? 地球の歴史にも詳しいみたいだし」
「それは私が太陽系文明の一員だから。だからあなた達人類の親戚というか」
「太陽系文明……。人類の仲間ってことは、地球の誰かが天宮さんを作ったってこと?」
「ううん。地球には始めて来た」
地球にははじめて来たけど、宇宙人ではなく太陽系文明の一員……。
「つまり、この地球以外に人間が住んでる星があるってこと?」
「そうね! それそれ! それで正しい」
「……。仮に、TOXたちの攻撃をどうにかして避けてたとしてもダイソン球殻の中には人間が住める未知の天体なんて無いはずなんだけど……。まさか、同じ公転周期で新太陽の裏側にある反地球ってこと?」
「反地球はないって理科で習っただろ? もしあるとしても公転軌道上の残留物で証拠が出るはずだって」
天宮さんが興味深そうに、ニコニコしながら私達を見てる。
反応を見るにどうも違うようだ。
考えてみれば、反地球出身ならイルカとかTOXを知らないわけがない。
「じゃあ他にどこがある……。まさか、ダイソン球に直接住み着いてるみたいなこと? ダイソン球はかなり分厚いらしいから、不可能じゃないと思うんだけど……」
ニュートリノの観測で地球の現在位置を割り出そうという計画も過去にはあったという話なのだけど、新太陽由来以外のニュートリノはほとんど観測できず頓挫したらしい。それを根拠に、ダイソン球はなんとなく分厚いというイメージになっている。実際にはニュートリノを遮蔽するためには普通の物質なら光年単位の分厚さが必要になる。外からのニュートリノが観測できないとしたら球殻の厚みの問題ではなく、実際には別要因のはずだということになる。とはいえ、ダイソン球の話というのは子供向けの科学講談では定番の話題なので、わかりやすく一般的なイメージで話が終わってしまったりすることも多くて、ダイソン球殻の厚みなんていうのもその類だ。実際には厚みは不明。
そもそもダイソン球は直径十億キロの球体なので、例えば厚さが直径の〇・〇一パーセントほどのごくごく薄い皮だとしても一万キロ程度になる。参考までに調べてみたところ、ピンポン玉の厚みは直径の二パーセント程度らしい。だから〇・〇一パーセントはもう本当にペラペラだ。そのペラペラの〇・〇一パーセントの厚みの皮だとしても、つまり一万キロということになり地球の直径よりちょっと薄いぐらいということになる。この時点ですでに人間の感覚ならめちゃくちゃ分厚いし、住むことはできそうだ。
だから、ダイソン球は分厚いらしいと口に出した私が間違っている。ダイソン球がペラペラでも人間が住むぐらいはできる。でも、話の流れ的に訂正はいらないな、これは。
でも天宮さんの様子をうかがうと、これも違うようだ。
「じゃあどこから来たの? あと人間が住んでいそうなところと言えば、元の太陽系の地球以外の星とか?」
そう言って天宮さんの様子をうかがうと、にこやかにうんうんと頷いている。
相変わらずの美形で感心するところなんだけど、それよりも驚きが勝ってしまった。
「え!? 太陽系? 地球が居なくなった後の太陽系から来たの? ダイソン球の外から? 太陽系では人間が銀沙っていうのにになったの?」
「食いつきがすごいな……」
ゴジが他人事みたいに私を見て呆れている。
あんただってこの場に居るんだから、他人事じゃないんだよ?
「それは食いつくでしょ!」