……6月21日(火) 15:55
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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えーとなんだっけ? 植物みたいに生えてきただっけ?
「……植物だったら、普通は歩いたり喋ったりしないと思う。人間に化けたりもしないと思うし……」
「そこが説明の難しいところなんだけど、私の身体は銀沙というもので構成されているの。数日前に胞素体っていう胞子みたいな状態で地球に降下してきて、今朝まで生成されてたのよね」
「胞子……。菌類なら分類的には植物ではないんだけど。でも、ここまで来るとそういう問題でもないよな……」
ゴジが呆然とした顔でツッコミを入れたうえに、自分でとりなしてる。律儀だ。
いや、でも、そこじゃないでしょ。
「銀沙ってなに?」
「銀沙っていうのは私のヒュレー、あ、えっと、体の素材というか、人間で言うとアミノ酸とかタンパク質とかその辺のやつ。色でいうとそれが銀色というか金属というか……」
「素材から違うとなると、人間とちょっと違うじゃ済まなさそうなもんだけど? その辺の動物とか虫とかでも素材は人間と大して変わらないはずだよ?」
「それを言ったら魔族だって素材がタンパク質ってわけではなさそうな気がするけど……」
魔族はちょっと口から出ただけだからもう忘れてくれ、ゴジよ。
「魔族ではないんだけど……、でも比喩的にはその方がわかりやすいかな……」
「えっ!? 金属って言ってたし、魔族よりロボットとかじゃないの? 金属製の魔族なんて聞いたこと無いよ! ……いや、けどまぁ、フィクションの設定だし、作品によってはそういう魔族も居るかも知れないか……」
根本的にどうでもいい上に間違ってるかもしれないことを口にして、発言がもにょもにょと尻すぼみになってしまった。
「あー、うん。たしかに私は人間じゃない、でもロボットでもないよ。私は生きてるから。簡単には説明できないんだけど、私達の定義による生命体、だいたいそういう意味で魔族っぽいって思ったんだけど」
「ああ、そういう……」
そうかー。生きてるからロボットではないかー。特別な定義の生命体だったかー。
宇宙人でも異世界転生してきた魔族でも異世界転生を装った能力者でもなかったかー。
……。
結局のところ、なんにもわからん。
生きているとはなにか、みたいなところから考えないといけないやつか? ちょっと根本的な問題すぎて荷が重いんだけど。
「ロボットが生きていないなら、魔族も生きているとは言えないのでは?」
「もういいよゴジ、魔族のことは忘れてくれ。あれはちょっと口が滑っただけだから」
「でも、ロボットだって生きてるかもしれないし」
「どっちもフィクションなんだから、そこは作品によって違うよ。それより、いまはもう少し話を聞こう」
「………うん。そうだね」
なにをそんなにこだわっているのか、ゴジはまだ何かを言いたそうではあったけど、とりあえず納得してくれた。
とにかく情報が多い。嘘か本当か全然わからないけど、大まかな話もまだ途中だ。
天宮さんは何者か?→特別な定義の生き物。魔族でもロボットでもない。ロボットよりは魔族に似ている。なぜなら生きているから。『生きているとはなにか』の話は、今しなくてもまた今度でもいい。
次は、どこから来たのか。
「……宇宙から落ちてくると、流れ星になって、燃え尽きちゃうんじゃないの?」
流れ星。なんか最近縁があったから思い出した。
「その辺は計算して、燃え尽きてしまわないように落ちてきたはずなんだけど……、それでも燃え尽きてないだけで流れ星にはなったはずだし、意外に派手に燃えてるはずだから、数日前にこの辺りでも見えたんじゃない?」
「見えたって、天宮さんが下りてくるところのこと? 胞子ってちっちゃいんじゃないの? 肉眼で見えるようなもの?」
「胞素体そのものは見えないと思うけど、そうじゃなくて流れ星とか火球。ここらからだと、ほとんど流れないで、明るくなるだけみたいに見えたはずだけど」
「見た!」
「ああ! 佐々也が見たって言ってた火球、天宮さんだったのか……。なんか点と点が繋がってきたな……」
なにこの偶然?