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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。
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……7月29日(金) 12:30 四日目:池袋神社休憩所

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「大丈夫、私は気を悪くしたりしないよ。それに今日は大事な話があるんだ。時間がないから急がなくっちゃ」

「大事な話? 時間がない?」

 意外な所に出てきて、意外なことを言われて、(しま)いには急かされる。

 混乱するなという方が無理な注文だと思うけど、やむをえない。

 世の中の出来事がいつでも私のペースに合わせてくれるわけじゃない。そのつもりでいれば私だって黙って出来事だけ飲み込む事もできる。

 後で思い出して噛み締め直さないと出来事の味がわからないし栄養にもならないけど。

「佐々也ちゃん、ちょっと散歩に出てきただけでしょ? 早めに戻らないと」

「よく知ってるね……。あ。えっと、清水さんに聞いた?」

「そうだよ。メッセでだけどね。まぁでも、いまここで言わないといけない事は短いんだ。今晩、宿所の屋上に行くからそこでじっくり話そう。いい?」

 なんだかずいぶん意気込んだ感じでやちよちゃんが聞いてきた。

 他人に頼んでここみたいな秘密の場所に連れて来るより、あの部屋の屋上で話す方がハードルは低いだろうに。なんだかちぐはぐだ。

「ここでは話せないの?」

「長い話になるし、清水とかに込み入った部分は聞かれたくはないんだよ。佐々也ちゃんも聞かれたくないことあるでしょ?」

「そういうことか……。うん、話すぐらいなら断る理由もないけど……。待ち合わせの時間は?」

「時間は、佐々也ちゃんが決めていいよ。というか、好きな時に屋上に出てくれればたぶんそこに居られるし、そうでなくても三分ぐらいで到着できるから」

「そう言われても、待ち合わせが決まってないとやりづらいから決めとこう。じゃあ十一時。だいぶ遅いけど、大丈夫?」

「ここは私にとっては自分の家みたいなもんだから大丈夫だよ。あと、さっきも言ったように遅くても早くても、連絡無しで出てきてくれれば私は大丈夫だから」

「ああ、はい」

 なんで言わなくても分かるんだろ?

 監視カメラとかでも付いてて私がどこに居るか知らせが行くってことだろうか?

 それはそれで気味は悪いけど、私にはそんなに後ろ暗いこともないし見張られて困るというほどでもないから、ここはひとまずスルーしようか。


 程なく、清水さんがお弁当を三人分持ってきてくれた。

 コンビニのお弁当のようなものではなくて、重箱のようなきちんとした器に取り分けられた三人分それぞれのちょっと豪華な食事。

 私の分と、清水さんの分と、やちよちゃんの分。

 こうしてお弁当を持ってきてくれたということは、やちよちゃんの言葉通り、二人の間には申し合わせがあったということだろう。

 清水さんはやちよちゃんに黙礼という感じで、お弁当を食べてる間は無口だった。やちよちゃんはにこにこと嬉しそうにお弁当を食べている。私はなにを喋ればいいのかわからず、やっぱり黙ったままだった。

 みんなで黙々とお弁当を食べる変な時間ではある。

「じゃあ、今晩」

 お弁当を食べ終わったら、あっさりやちよちゃんは帰ってしまった。

 清水さんは持参したお盆を使って、黙々と後片付けをしていた。

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