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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。
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7月29日(金) 10:30 四日目:池袋抗生教宿所

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。

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7月29日(金)

     10:30

       四日目

   池袋抗生教宿所

━━━━━━━━━━


「佐々也さんはもしかして暇になっちゃいましたか?」

 みんなが配信スタッフみたいなことをしているなか、暇になってしまった私に清水さんが声を掛けてきた。

「はい。私は番組のことがよくわからなくて、みんなと同じことできないから」

 ハルカちゃんは、さっき部屋に戻っていってしまった。

 ついて行けばよかったかな。今からでも行こうかな。さっき気持ちよかったから、また屋上でフラフラしてもいいけど、これから昼になっていくこの時間にはもう暑い気がする。森の木も屋上の上までは伸びてないから直射日光だし。

「よかったら池袋を案内しましょうか? 下の方は番組の都合でお見せできないけど、上の方は予定がないらしいですから」

 清水さんがさらっと提案してくる。

 何気ない申し出のようだけど、これはすごくお得な話じゃないだろうか?

 うまい話には裏があるというけど、清水さんが私を騙して得することなんてあるわけもない。

「下の方? 上の方? どういう意味ですか?」

「上の方とは、地上部分のことです」

「地下にもなにかあるけど、そっちは見れない、ということですか?」

「地下にはツアーで行きますから」

 例の、私の知らないツアーがまた出てきた。

「そのツアーっていうのはなんですか?」

「あれ? 聞いてませんか?」

「聞いてないです。でも、私は東京探検に飛び入り参加みたいなもんだから、ただ聞いてないってだけのような気はしますけど」

「飛び入り……。それはまた……」

 清水さんは私の言葉を聞いて絶句している。

 まぁ、飛び入りで来るようなところじゃないのかもしれないけど。

「うん、まぁそういう偶然もあるときはある。えーと、ツアーというのはよれひーさんの番組で私がご案内して回る企画のことです。池袋の居住区域、つまり『塚』は概ね地上三階地下三階で構成されているんですが、地下にはその企画で行きますから、いま地上部分の方をご案内しましょうかってことです」

「概ね……?」

 ほんとはちょっと浅い最下階とかがあって、正確には地下『三・七階』とか、あいや二分ノ一以上だと概ね四階になるから二分ノ一以下にして、『三・二階』みたいなところがあるみたいな感じだろうか? という、定番のおふざけが頭に浮かぶ。

「あ、えーっと。概ねというのは、一部には地下一〇階ぐらいまであるところがあるんですよ」

「……なるほど」

 アホなことを考えていたら見透かされてしまった。

「中央広場の一番深いところが地下二階相当だから、中央から見ると三階以上ぐらいのところをこれから見て回る感じになります」

「下の方にはなにか秘密が?」

「そこはツアーで行く所だから、それはお楽しみに」

「ああ、そうでした。すいません察しが悪くて。やっと繋がった。ツアーで見れないところに行くなら行きたいです」

「ふふっ。それなら良かった」


 ということで、けんちゃんさんに断りを入れて清水さんと一緒に出ることになった。

「午後からはミーティングの予定だから、それまでには戻ってきてね」

「大丈夫です。お昼ご飯が終わったら戻ってきますので」

 注意事項に対して清水さんが代わりに答えてくれたが……。

「え? お昼ごはん?」

 私はご飯までには戻る気でいたんだけど。

「一人分ぐらいなら、急でも私が都合できますから、ご馳走しますよ」

「配給制だって聞くし、悪くないですか?」

「それは大丈夫」

 まぁ、疑う理由もないし、ここはご馳走になっておこう。

 じゃあ行こうということになり、大部屋を出て宿所の出入り口に向かう廊下を歩いていたらハルカちゃんと行き合った。

「あ、ハルカちゃん? どうしたの廊下で」

「ちょっとトイレ。それより佐々也ちゃんは? 清水さんと連れ立ってどこか行くの?」

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