7月28日(木) 21:00 三日目:抗生教池袋宿所・佐々也の部屋
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。
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7月28日(木)
21:00
三日目
抗生教池袋宿所
佐々也の部屋
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宿所は塚の中の行き止まりになっていて、集会のできる大部屋が外周側の一番奥、外周側に風呂トイレなどの集合施設がまとまっていて、内周側は各個人に割り振られた部屋になっている。内周側の一番奥は、奥の大部屋に繋がる半廊下のような休憩室。
小会議もできる続き四間の豪華部屋がよれひーさんとけんちゃんさんの寝床と編集作業室を兼ねた部屋に当てられて、あとは風呂トイレありの個室が各個人に割り当てられている。
お部屋の紹介をした日。
ぞっちゃんの番組から開放された後、よれひーさんたちの部屋で打ち合わせをして解散。
私とハルカちゃんは自分の部屋に帰る。
ぞっちゃんは珍しく、その後も私の部屋に来なかった。
ダイレクトメッセで確認したら、録画したメイキングの映像の確認をして番組のアイディアを考えたいんだそうだ。
ぞっちゃんにやりたいことがあるんなら、私としてはそれでいい。
ハルカちゃんに空気のざらつきのことを聞いてみようかなと思ったけど、それよりも、久しぶりに幹侍郎ちゃんとお話をしたいような気がした。そういえば東京に来てからこっち、一度も連絡をとっていない。
夜の浅い時間にはぞっちゃんが居たから仮にゴジと話したとしても幹侍郎ちゃんの話はできないし、だとしたらゴジとだけ話すことなんて別に無いからなぁ。
「ああ、ゴジ、久しぶり、こんばんわ」
「佐々也? なにかあった? わざわざ通話をよこすなんて珍しい」
「珍しい、かなぁ? いや、そうかも。確かにゴジに通話するのってなんか珍しいな」
「いいよそこは別に。それよりどうしたの? あ、もしかして、そっちに幹侍郎が住めるような場所が見つかったとか?」
「いや、それはまだ。というか、東京も意外と普通の場所だよ。その事がわかってきた。だから慎重に探さないといけないのかも。それに、現地の人と話す機会もあんまり無い」
「そうみたいだね。番組も見てるよ。幹侍郎も喜んでる」
「あ、幹侍郎ちゃんにはウケてるんだ? それは嬉しいなぁ」
「ウケてるよ。喜んでる。コメントも熱心に読んでるよ。それでカオスってなにか聞かれた」
「はあっ!? 私の悪口は読まなくていいよっ!」
「悪口なのかな……。幹侍郎はみんな褒めてるって言ってたよ」
「カオスは明らかに褒め言葉じゃないだろ……。まぁそれはいいや。それより、幹侍郎ちゃんに代わってもらえる? 幹侍郎ちゃんとお話できたらと思ったんだよ」
「……ごめん。幹侍郎もう寝ちゃった」
予想外の返答についつい返事の声が大きくなる。
「寝た!? こんな早い時間に? てか、あの子って眠るの? いや、眠るのは知ってるけど、なんかすごく睡眠時間短いみたいだったよね?」
「眠るよ、当然。今日は午後の勉強中に眠たくなったって言って寝ちゃったんだ。佐々也の出てる番組見て、夜ふかしして疲れちゃったんじゃないかな」
「疲れた? あの子って疲れるの? そんなの見たことない」
「佐々也が居ると楽しいみたいだから、佐々也が見る時はいつでも元気なんだろ。それより……、幹侍郎のことそんな言い方するなよ」
ゴジが憮然とした顔で抗議してきた。
幹侍郎ちゃんが普通じゃない、みたいな言い方をされることにゴジは敏感だ。気持はよく分かる。私としても心当たりもないのに変だと言われることの機微はよく知ってる。これに関しては私が良くなかった。
「ああごめん、そういう意味じゃないんだ。いっつも騒がしいから、早く寝ちゃうなんて予想外でさ……。でも。せっかくゴジと居る時に寝ちゃったんなら、変な時間に目が覚めて淋しい思いをしちゃうんじゃないの?」
「夜ふかししちゃ駄目ってのはいつも言ってることだから、淋しいのは仕方ないよ。これに懲りて次から夜ふかししなくなるよう幹侍郎には反省してもらいたい。そういう手紙も置いてきたし」
「ゴジがそう言うなら、それでいいんだけど……。私も幹侍郎ちゃんと話したかったな」




