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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。
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……7月28日(木) 17:30 三日目:抗生教池袋宿所・お部屋紹介配信:枝松みぞれ

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十二章 塚。それは土を盛って築いた山。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 私が撮ろうと思ってたのは、自分の携端で光量の調整なんかも考えずに日常風景の一部として撮影するやつだ。カメラを扱えるもなにも、特に撮影についての指定なんかは無い。それどころか、撮影中に佐々也ちゃんやハルカちゃんにカメラ係を代わってもらったりしようと思ってた。

 でもよれひーさんがそう言うのならちゃんと意味があるんだろうし、絶対に良くなるようにしてくれてるのは間違いない。

「じゃあ、えーと、告知もあるから十八時開始でお願い。だいたい三〇分後かな。桜さんは配信の開始終了の制御と、メイキング用のカメラ撮影でお願いします。みーちゃんさんはストリーム番組全体のディレクションと出演をお願いします」

「オッケーでーす」

 よれひーさんがおおまかな枠組みを決めてくれる。桜さんは軽やかに返事をしている。

 私は……、ディレクションっていうのが監督の事だということだけは知ってる。

 なにをどうやってやるのか、具体的なことはわからない。

「はい。……でも、ディレクションって、なにか決まりはあるんですか? 例えば、終わる時にはこう言うとか」

「決まり? そういうのは、特に無いと思うけど……。番組をどうしたいかってのを決める役割が誰なのか決まっていた方がいいっていうだけで」

「ああ、そういうことなんですね! わかりました。ありがとうございます」

「お礼なんて要らないよ。僕の枠のストリームをやってもらうことになるわけだから、そのために必要な役割分担をお願いしているだけ。じゃあ、カメラの用意をしてくるから、準備からお願い。……最初は、出演交渉かな?」

 よれひーさんはそう言って部屋を出ていった。何もかもテンポが早いけど、聞いたら全部答えてくれるから、全部きちんと理由があってやってることがわかる。本当にすごい人だ。その勢いにちょっと呆然として、よれひーさんが去っていた戸口を見送っていたら。

「あ、番組名にみーちゃんって名前使ってもいい?」

 と首だけドアに戻ってきて質問された。

「はい。名前、大丈夫です」

「ありがとう。一〇分ぐらいでカメラ持ってこれると思う。僕が来るんじゃないかもしれないけど」

「あっ、はい」

 そう言い残して、今度は本当に行ってしまった。


  *   *   *


 それから自分の携端で動画を撮りながらさーちゃんとハルルに出演交渉をした。

 メイキングの映像だけど、まずは私が撮って、どういう感じの映像にするつもりなのかを桜さんに伝えるため。もちろん、実際に撮ってる映像も使うけど。

 さーちゃんとハルルにはそういう説明から始めて、映像を使うことと、メイキングを一緒にやってどういう感じになるかを理解してもらった。

 出演交渉ではふたりともふたつ返事でオーケー。

 なんか交渉って言うほどの感じじゃなくて、説明しただけみたいな感じ。あまりにも張り合いが無いので「え? あの、断っても良いんだよ?」と説明したけど「部屋の探検はしたかったし、撮影だって別に嫌ではないんだけど……」と、さーちゃんがきょとんとしている。

 やっぱりさーちゃんは可愛い。自慢の友達だ。

 いちおう要領は伝わったらしいので、桜さんに携端を渡してから十分ぐらい掛けてみんなで軽く部屋の下見をした。

 自分のカメラでお部屋紹介をやるならぶっつけでやればいいと思ってたけど、よれひーさんのちゃんとした番組になったし、配信開始まで時間ができちゃったからそのために。それで下見をしながらさーちゃんとハルルと打ち合わせというか、ここを紹介するのはいいんじゃないかみたいな話をする。そこに桜さんも加わってくれる。

「そういえば桜さん、さっきよれひーさんがカメラで撮る時の話をしてましたけど、私は実は撮り方でなにかが違うかとか本当は分かってないから、好きにやってくれて大丈夫です。メイキングの方はどうせ私のチャンネルで公開するだけだから、見てくれる人も少ないだろうし、あんまりちゃんとしてなくても平気なので」

「ふふ。わかった。でも、上下逆とかだと私の信用にも関わるから、普通にやるね」

「はい、それで大丈夫です」

「……ぞっちゃんもわからないで返事してたのか……。なんとなく聞こえてたけど、ぞっちゃんがはきはき答えてるからすごいなーって思ってたのに」


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