……7月28日(木) 15:00 三日目:池袋北東交差点
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。
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「け……ケチじゃね―し! 演出だし!」
「ほんとですか〜?」
それで私達の方に近づいて話しかけてくる。
「あっ、だいぶ近づいてきたよ。どれくらい大きいか、楽しみだね、さ〜ちゃん」
「おっ……おう」
「ハルルは、ここまで歩いてみてどうだった?」
「そんなに長い距離でもないし、ピクニックみたいで楽しかった。特に危険も無かったし」
急にぞっちゃんがまとめ始め、冷静にハルカちゃんが答える。
ハルカちゃんは本当はサバイバル的なことの専門家として言えることがたくさんあるはずなんだけど、それを隠している。
ハルカちゃんがなんとなく言っていないといえば、空気がざらつくというあの話はどうなったんだろう。私はいまもってそんなこと感じてないけど。
「危険ならあったよ〜。ほら、TOXが居たでしょ〜?」
確かに、ルークの残骸にこわごわ近づくというアトラクションがあるにはあった。
ここまでの道々で聞いたところ、赤羽であそこにTOXの残骸があることは聞いていて、川口さんのあの感じは仕みだったらしくい。わざわざアトラクションを用意してくれているその心遣いには感謝しても良い。びっくりで撮れ高を稼ごうとしたという部分で感情的には多少の減点はあるけど、それでも良いものを見せてもらったとは思っている。
ただ、ハルカちゃんなんてTOXに刺されて胴体貫通されたことあるし、私はそれを目の前で見たことがあるから、その辺の慣れ的なものをどうごまかそうか反応にちょっと困った。この辺のことはぞっちゃんにも話してないので、本当にどう反応して良かったのやら……。怖がる演技なんてしても、わざとらしいだろうし。
このときにはやちよちゃんが一緒に居てくれて、そのTOXが死んでるよということを早めに教えてくれたので、困っている時間は長くなかったんだけど。
ぞっちゃんはルークもはじめて見るということで、キャーキャー言って怖がっているというか、お化け屋敷的なエンジョイの仕方をしていたというか。あれはあれでカメラとかの感じから危険がないことを察知してた雰囲気はあった。
「ああ、うん。TOXは怖かった……」
ぞっちゃんの発言を受けてハルカちゃんがこう答えていた。
うそつけー。言わないけど。
歩きながら話していて、実際に近づいてくると暗褐色の建物の手前に柵があるのが見えてきた。柵にはスライドさせる門もついている。
「あっ、門があって、守衛さんが居るんですね。中に入れてもらえるのかな?」
「事前に連絡してありますから、それは大丈夫です」
と、天の声さん。
* * *
余談だけど、このあたりの到着直前の映像が出されてから、私に対するコメントがけっこう酷かった。酷いというかめちゃくちゃ面白がられて、おもちゃにされていた。
曰く「よれひーにからむゾミーちゃんを化け物を見る目つきで見るカオスちゃん」とか、曰く「怖がってるハルルを冷ややかな目で見るベアー」とか。ウケることはウケていたみたいだけど、なんかあおり構図のお陰で斜め下から映ってる目を見開いた顔のキャプチャの切り抜きに適当な字幕をつけられて「使ってください」とか言ってメッセージ欄に貼られたりもしている。勝手に私の顔写真の使用許可を出さないで欲しい。
顔写真が出回るのはストリーム番組に出演することである程度は覚悟してたんだけど、その切り抜き画像の字幕を空白の吹き出しにして大喜利のお題にまでされるとは思わんかった。
写真が出回って冗談のネタに使われるのはまだいいよ(いや、よくないけど)。
でも、その画像はそんなに人気がなくて、あんまり伝わらない。勝手に使って勝手に滑らないで欲しい。そのせいでなんだか自分が滑ったような気持ちになって、謂れ無く辛い気持ちになってしまう場合まであった。
流石に他人が滑ったせいで辛い気持ちになるのはいくらなんでも理不尽すぎる。写真が出回るぐらいまでの覚悟はあったけど、他人が滑ったギャグでいたたまれなくなる覚悟まではできてないよ。




