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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。
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7月28日(木) 14:30 三日目:赤羽池袋間路上・到着間近

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。

━━━━━━━━━━

7月28日(木)

     14:30

       三日目

   赤羽池袋間路上

      到着間近

━━━━━━━━━━


 砲撃の話をした場所から十分ほど、ほとんどなにも無く、概ね森の中を歩いているだけ。

 私は後ろめたい気持ちをひきずったまま心持ちやちよちゃんから距離を取って、ぞっちゃんとカメラ前でお喋りをするように努めていた。

 さっきのやちよちゃんは私が言ってないことを知っている様子だった。

 私がどこかで口を滑らせて、なにか幹侍郎ちゃんの情報を与えてしまったかもしれない。

 でもハルカちゃんが言うには、やちよちゃんはハルカちゃんが嫌いで私のことが好きらしい。ファンシーなグミを買ってもらって嬉しそうにしていた。全体像としてかちっとまとまらない。

 やちよちゃんはどういう子なんだろう?


  *   *   *


 そんなこんな、なにもない森の中とは言ってみても道は意外と真っ直ぐではない。そこそこカーブがあったり、まぁまぁの凹凸があったりと、それなりに地形があったりもする。

 探検という名前に比べたらそんなに長い道を歩いてきたわけじゃないと思うけど、もうそろそろくたびれてきたし、到着しても良いんじゃないかなというぐらいの頃合いになってきた。

 雑木林の中、周囲の視界も利かず、先も見えない。手近に山なり谷なりがありそうにも思えない必然性が不明なわりに大きくカーブしている。

 その途中にやちよちゃんが、少し離れた後ろから、大声で呼びかけてきた。

「あー。じゃあ、今日の私はここでバイバイするよ」

 え? え? 仲間はずれにしすぎちゃって、怒らせちゃったかな?

 まずいまずい。

 きまずいしバレたくないしで話しかけられなかっただけなんだけど、嫌いで仲間はずれにしたわけじゃないんだ。それだけは伝えないと。

「え〜? ここまでって、急にどうしたの〜?」

 ぞっちゃんが大きな声で聞き返す。

 私から見ると、切り替えて突然大きな声を出せるのも才能だ。

「うーん、用事があるから! みんなはこの先をまっすぐ進めば大丈夫! 曲がり切った後に分かれ道があるから、そこで左に行けば池袋だよ」

「こんなところで離れちゃったら困るよ」

 やちよちゃんの言葉によれひーさんが驚きの声を上げる。

「大丈夫大丈夫。分かれ道まで五分ぐらいだし、そこから先は池袋まで十分もないよ。分かれ道から建物も見えるから、迷いっこない!」

「いや、そういうことじゃなくて……、えーと、現地での案内も必要だし」

「それも大丈夫。門に当たる場所があって、そこに迎えが来てるよ」

「え? そうなの? それはありがたい……。いや、そういうことでもなくて、やちよちゃんみたいな子供をこんな森の中みたいなところに置いて行けないよ」

「子供ぉ? あたしがガイドして連れてきてるんだから、子供も置いてくも、どっちも間違いだよ」

「あ、いや、そういう能力的なやつじゃなくて、こんな危ないところでお別れしたら視聴者に怒られて番組が炎上しちゃうんだよ」

 よれひーさんの言葉を聞いたぞっちゃんが「あー」と嫌そうな声を上げる。

 本人がそうしたいと言って、したいようにするのに炎上するっていうのもおかしな話だ。

 でも、ぞっちゃんの反応を見るとまぁまぁ説得力がある話なんだろう。

「なるほどね。でもあたしは一緒には行けない。理由も言おうか。この近所に秘密の場所があって、そこに用があるんだ」

「え? 秘密って?」

「それを言ったら秘密にならないんだよ。とにかく、私はここまでだから。それじゃあ!」

 そう言ってやちよちゃんは脇の森に分け入っていく。

 機会を伺ってたのに、声をかけられなかった……。


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