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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。
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7月28日(木) 13:45 三日目:赤羽池袋間休憩地点・草叢

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。

━━━━━━━━━━

7月28日(木)

     13:45

       三日目

 赤羽池袋間休憩地点

        草叢(くさむら)

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「うわぁ! よれひー! 棒! 棒持ってきて!」

 カメラが回る中で一息ついている時、広場っぽい場所の脇の丈の高い草の茂みからそんな声が上がった。

「川口さん! 慌てちゃって、なにかあったんですか?」

 呼びかけてくる声に、よれひーさんが怒鳴り返す。

「TOX! TOXが居る!!」

「はぁっ!?」

 がさがさという音を立てながら、茂みの間、軽い踏み分け道があるところから川口さんが駆け出してきた。

「えっ? TOXいんの? ホントですか川口さん?」

「居た居た! 棒くれ棒!」

「川口さん、これ!」

 徒歩の撮影に同行していたもう一人のスタッフさん、桜さんが川口さんにさっき見せてくれた棒を伸ばしてから渡す。川口さんはそれを持って、再度茂みの踏み分け道に戻って行こうとする。

「ちょっと川口さん! 戻ってどうするんですか!」

「大丈夫大丈夫! 俺強いから。空手三段だからっ!」

 川口さんはよれひーさんより少し年上の大柄な男性だけど、小太りで温厚な雰囲気の人なので、強いと言われても本当かもしれないという気はしない。でも空手三段なら強いのかも?

「空手とかそういう問題じゃないでしょ!!」

 と言いながら、カメラを持ったよれひーさんが川口さんの後を追って行く。

 ほんとだ。空手とかそういう問題じゃなかった。

「みんなは靴を履いてTOXの場所から少し離れて!」

 浦和さんがそんな事を言って手招きをする。

 交通がないのだから道路の方に出ていけばより遠い気はするものの、なにか意図があって言っているのであろう浦和さんに意図を尋ね返すほどの余裕はないので、みんなで素直に近寄っていく。

 がさがさする音とか、「うわあっ!」っていう声とかが聞こえてきて、なんとも不穏な感じの時間が経過する。

 ハルカちゃんはよれひーさんたちが行った方向が気になるみたいでもあるけど、なにかに気がついたようで行くのをやめた。やちよちゃんが「ちょっと見に行くね」と言って、草むらの中に行ってしまう。

「あっ、やちよちゃん」

 と言ってぞっちゃんが手を伸ばして止めようとしたけど、やちよちゃんはスルッと避けて行ってしまった。

 で、数分後に「安全だから見に来てー」というよれひーさんの声が草むらから聞こえてきた。

 これだけ不安な感じを煽られて、いきなり呼ばれるこの感じ……。とはいえ、事前に確認してから呼んでいるんだから危険なんかは無いんだろうとは思うけど……。

 そういえば、さっきハルカちゃんがやちよちゃんと一緒に行かなかったのはなんでなのか、それがこの先にいるというTOXに関係があるのか、ハルカちゃんにこっそりと尋ねた。

「ハルカちゃん、さっきはなんで行くのを止めたの?」

「ああ、浦和さんの後ろでカメラが回ってるのに気づいたんだよ」

 ん? どういうことだ?

 カメラはよれひーさんが持っていったんじゃ?

 呼ばれたのにすぐに応えて先に行ったぞっちゃんは、「きゃー」とか悲鳴を上げている。

 浦和さんの後ろにカメラがあった理由も、それでハルカちゃんが行くのを止めた理由もにすぐには理解できなかったけど、私はハルカちゃんに押される形でぞっちゃんの後に続く。ハルカちゃんが行けと言うなら危険みたいなことではないんだろう。

 悲鳴を上げながら立ち止まったぞっちゃんを避けて横を通り抜けた。

 川口さんが構えた棒の先には色褪せたルークの体がある。

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