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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。
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7月28日(木) 13:30 三日目:赤羽池袋間休憩地点

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十一章 徒歩で行く新世界。そこは池袋。

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7月28日(木)

     13:30

       三日目

 赤羽池袋間休憩地点

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 出発してからゆるゆる歩いて一時間半ほど、道路脇にまで雑木林が迫ってきていなくてどことなく広場になっているような場所に来た。そこで休憩をすることに。

 今日のお昼ごはんといってその場で出してもらったのはマルシチのおにぎりとサンドイッチとお茶で、聞けばコンビニのオーナーに頼んで取寄せをしてもらったんだとか。また来ることもあるから、その時にお弁当を取り寄せしてもらうこともあるかもしれないのでどういう感じなのかやっておきたかったんだそうな。

 わかる。

 というか、私が東京に来たのも、大きい括りで言えば同じような理由だ。

「それではお昼の休憩の間もカメラを回したいと思いますので、みなさん集まってレジャーシートの上で談笑でもしながら食べてください」

 あれ? そういう感じですか?

 お昼の休憩って言われても、別に面白い話をできるわけでもないんだけどな。


 靴を脱ぐのは億劫なので、レジャーシートから足を出して座り、とりあえずお茶を飲んでいる時にぞっちゃんが口火を切った。ぞっちゃんは丁寧に靴を脱いでシートの上で半膝立ちをしている。動き回るつもりなんだろう。偉い。

 やちよちゃんは体育座りで、ぞっちゃんに開けてもらったおにぎりを食べようとしている。

「そういえば、誰ともすれ違わないね」

「ほんとだ、車を移動させるって言ってたけんちゃんさんも来ない。一本道だったと思うけど、他にも道があるの?」

 おにぎりを食べているけど、聞くとしたらやちよちゃんしかいないので素直に聞いてみる。

「あるよ。地下道」

「え? 地下道? 地下道って地下ってこと?」

「地下道って言ったら、普通は地下だと思うけど〜……」

 ぞっちゃんのツッコミ。ぞっちゃんはこの間に膝立ちですっとカメラに入る位置に移動している。やりよる。

「でも地下道って作るの大変じゃないの? 穴を掘らないといけないし」

「東京の地下には穴の遺跡があるんだ。それを使ってるから掘ってない。その遺跡はまだTOXが来る前、街があったときに、人間がたくさん住んでたから地上だけじゃ場所が足りなくて、地下に道を作って乗り合い車を使って移動してたものらしいよ」

「乗り合い車って〜、バスみたいな〜?」

「私も詳しくは知らないけど、たぶん、うん」

「でも、バスなら普通の道路を走ったらいいんじゃないの? 乗り合いだったら個人用の自動車より道は空くんだろうし」

「そんなこと言われても、私は詳しくは知らないんだよ。昔の人はそうしてたって話なんだから」

「ああ、そうか、ごめん。後で調べてみるよ」

「その話なら、私が知ってるよ」

 と、私の隣に同じ姿勢で座ってるハルカちゃんが、目を輝かせて話に加わってきた。

 ハルカちゃんは特に動いたりしない。よれひーさんが画角を広く取るためにカメラを構えたまま一歩下がっている。

 ああこれ、アニメの話だ。そうか、太陽系時代末期の話だもんな。詳しいわな。

「ちょっと待って! ハルカちゃん、その話って番組で使えるやつ〜?」

「さぁ? でも一般的な知識の話だから使えるんじゃないかな?」

「どうですか、よれひーさん?」

「とりあえず話してもらって。これは録画だから、それが使えるかどうかは聞いてから判断できますから」

「あっはい」

 そういう流れで、ハルカちゃんの「『電車』っていうものがあって、地下を通ってるのは地下鉄っていう名前で」から始まる講釈を聞くことになった。どうも『沢山の人が乗って移動する』交通機関というものがあって、その名前が『電車』だったらしい。

 場所が足りないほどの人口集中というのがなかなか実感できなくて、今ひとつ現実感が薄いというか、あまり具体的に思い浮かべることができない。TOXが来てしまうのでは? という気がしてしまう。

 太陽系時代だから人が集まってもTOXは来ないんだけど、どうしても人が集まっていることを想像しようとすると拒否感が出てしまうというか恐怖を感じるというか、とにかくストップが掛かって想像力が先に進まなくなってしまう。

 話の上だけのことなので、その辺の拒否感を乗り越えて想像しようとしてもなかなか思い描くのが難しい。電車には大量に乗れるって言っても、バスみたいなものにいくら乗ってもたかが知れてるじゃないかとか、場所が足りないのを(おぎな)うほどにはならないんじゃないかという気がしてしまう。

「うーん、わからない」

「じゃあ今度『電車』が出てくるシーンを見せてあげるね」

「ああ、うん。……ありがとう」

 ハルカちゃんの趣味にちょっと付き合うぐらいの事が嫌なわけじゃないよ? 嫌なわけじゃじゃないけど、あまりにも相手が乗り気すぎるとちょっと引いちゃうというか、そういうことない?

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