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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第一〇章 未知なる土地に辿り着き、なんだかやたらと緊張している。
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7月26日(火) 17:50 一日目:マルシチ前駐車場

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第一〇章 未知なる土地に辿り着き、なんだかやたらと緊張している。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「それでは。二人がおやつタイムになっちゃいましたので、配信はここまでにしましょう。ありがとうございました。もしこの配信に興味を持った方が居たら、いいねとかお気に入り登録なんかをお願いします。じゃあね、さよれいひー」

━━━━━━━━━━

7月26日(火)

     17:50

       一日目

  マルシチ前駐車場

━━━━━━━━━━


「はいカット」

 と、よれひーさん自分で終了の合図をしてくれて、おやつタイムもおしまい。

「お疲れさまでした」

 と、ぞっちゃんがいち早く挨拶をする。

 「……したー」と、私もいちおうぞっちゃんに続く。

「助かりました、みーちゃんさん。終わる流れを作ってもらえて」

「あはは。お菓子食べたらいいのかなって思って」

「うん。終わりらしい絵面っていうのかな。そういうのができるから。じゃあ、僕はオーナーのところに行ってくる。君たちはホテルに戻っててね」

 外に居るのは危険かもしれないしそういうもんかな、と思ってやちよちゃんを待つのに戻ろうとしたら、ぞっちゃんはよれひーさんについていくらしい。

「待ってくださいよー。私も見学したい」

「あ、そう? それは別にいいけど」

 それなら私も。コンビニのお会計の件は本当にいろいろと気になる。

 でも、店内に戻ったら話は終わっていた。戻ってきた私達を見て、その場から去りかけていたけんちゃんさんはキョトンとしている。

「あれ? みんなどうしたの? 配信は終わった感じ?」

「終わったよ。あ、オーナーさん、すいませんありがとうございました。急な配信でご迷惑でしたか?」

 バンドウくんと呼ばれていたさっきまでの店員さんの横に、暖色のアロハを着たおじさんが並んでレジに出てきていた。この人がオーナーさんだろう。

 遠目にずいぶん色黒というか、赤茶色みたいな肌の色だという気がする。

 こころなしか顔も大きいような。

 異常な感じと正常な感じの境目からちょっと異常側に落ちている感じ。

 でも声なんかは普通だ。

「まぁ、ちょっとはね……。でも、もういいよ。よれひーくんの配信は知り合いにも見てる人が多いから、自慢できると思えば」

「ああ、それはありがとうございます。今回の配信でなにか困るようなことになったら連絡をください。自分はただのストリーマーなのでできることは少ないですけど、お力になれることでしたらやりますので。その……、また取材に来たりとか、よっぽどの人でないなら録画の番組に出てもらったりとかもできますし」

「困るとしてもそんな話じゃないからね、気にしないでいいよ……」

 よれひーさんはなんかすごく頼もしい感じだ。責任なんて取れないことの方が多いだろうにいちおうその姿勢を見せている。イメージだと、ストリーマーってもっと適当なのかと思ってた。ぞっちゃんは、なにかすごく真面目な感じでその話を聞いている。

 はぁ、と言ってオーナーさんはため息をついた。

 ここで気がついたんだけど、オーナーさんは顔の色が赤黒いんじゃなくて顔の周りになにかが貼り付いているような感じになっているみたいだ。皮膚の病気でかさぶたのようなものがついていたりするときのあの感じかもしれない。

 みんななにも言わないでいるので、質問もできないしじっと見つめるのも悪いだろう。どうなっているのかというのが気にはなるけど、私にだって最低限のデリカシーはある。本当は最低限よりもっとあると思うけど、少なくとも最低限ぐらいは間違いなくある。

 やちよちゃんは顔を背けてぼんやりした顔をしている。

「やちよちゃん、なにかあった?」

「ううん。特になにもないよ。普通に支払いをしただけだったから」

「そっか……」

 普通じゃない支払いってどういうことになるのかよく分からない。

 高い金額を支払わされる、いわゆるボッタクリとかだろうか? 現金でのやり取りに、それ以上の不正が入り込む隙なんて無いような気もする。

 まぁ、これは私が世間知らずなだけだろう。

 なにか東京ならではのできごとが起きていたんだろうという気はするけど、確信が持てない。眼の前にはオーナーが居て、黙っているということは言いにくいことなのかもしれない。ここは気に留めておくだけにしよう。

 強引に気を逸らすために、もうひとつすごく気になっていることに注意を向ける。

 レジ下のガラスケースだ。

 さっきは気になっても近寄ることができなかったけど、いまはレジ近くにいるのだしちょうどよい。よくよく見てみることにする。

 頭痛薬、痛み止めなんかの薬とか、やっぱり目を引くのは携端そのもの。お値段も高いし、製品の感じだといくらか型遅れなように見える。ゲーム機のソフトなんかもあるけど、最新作が並んでいるというよりシリーズの一つ前とか、数年前のものばかりだ。あとは、商品券や飛行機の回数券なんかも売っている。回数券はバラ売りで、正価より高い値段に見える。郵便切手なんかも並べられて売っているけど、これも倍額らしい。

「どれかとりゃーすか?」

 バンドウくんと呼ばれたレジのお兄さんが声をかけてくる。

「あ、見てるだけなんで、特に……。珍しくて」


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