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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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……6月21日(火) 15:40

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 私の家に誘おうと思ったんだけどゴジに邪魔されてしまった。喋る時に私と天宮さんの間に半身を入れてくる念の入れようで、邪魔ではあるんだけどゴジがここまでするのは珍しいからきっと意図があるんだろう。

 うん。まぁ本当に怪しんでるんだと思うし、実際に怪しいのも事実だ。

…(略)…

 もし天宮さんがホラーの怪物だとしたらきっと得体のしれない攻撃をしてくる見込みが高い。つまり貫通系とか一発死にとかわからん殺しの可能性が高いわけで、つまりは庇ってくれてもあんまり有益ではなかろうな、と想像が走る。

 有益でないだろうとは思っても、ゴジのこれが思いやりだということは理屈の上では理解できるので、殊更に不要だと断って無碍(むげ)にするのは残酷だよな。でも天宮さんの危険度が不明なせいで、身の危険についての想像をふくらませるとむしろゴジが怪我するんじゃないかという心配が勝ってしまう。もっと突き詰めれば庇ってくれるということは好意を向けてくれていることであるというのも分かるから、そういう面での根源的な嬉しさはあるにはあるのだけど、でもそういう根源的な嬉しさってお菓子を分けてくれても同じぐらい嬉しいので、ゴジの危険と私の嬉しさがあまりにも見合わない。

 こういうことを説明したらゴジは最後には分かってくれるだろうけど、分かってもらうためにはたぶんいっぱい説明が必要だし、そのための時間も要る。それだけのやり取りを天宮さんの前で三十秒以内に終わらせるのはたぶん無理だ。

 五分でも無理だと思う。冷却期間を含めて一週間ぐらいかかる気がする。

 だからまぁ、この場は庇われておくしかない。

 そもそも授業中も今も天宮さんの言動とか端正な美少女顔を見ていると、いきなり襲ってくるホラーの怪物という感じはしなくて、危険かもしれないともあんまり思わないからなぁ。

 そう思えば庇ってくれるつもりのゴジにも危険は無いはずだろう。

 だからこう、ゴジの行動は有益ではないけど心配もいらない、はず。

 例え天宮さんが、昨日うちの近所の藪に捨てられていた等身大フィギュアにそっくりで、私とゴジの直通のダイレクトメッセに割り込んできたとしても、危害を加えてくる心配はないはず。

 ……いやこれは無理があるか。

 見た目と振る舞いが違うせいで印象が定まってないんだな。

 とかなんとか私が逡巡している間にも、天宮さんは次の言葉を発し、事態は進行する。

 どんくさい私にとって世の中の動きはあまりにも早く、思考が世の中に追いつかない。凡人には辛い世の中だ。

「じゃあ、まず何から聞きたい?」

「説明すると言ったのはそっちだが?」

 天宮さんの言葉に、憮然とした態度でゴジが言い返す。

 これはゴジが正論ですよね。最初のコンタクトが「あとで説明する」だったんだから。

「そうは言っても、なんの説明を聞きたいのかが分からなくて……。例えば、好きな食べ物から自己紹介していけば良い?」

「ふざけたことを……」

「はい!」

 ゴジと天宮さんの間で話が進んでしまいそうだったので、挙手して発言権を求めてみた。

 少し待ってもゴジも天宮さんも指名してくれないので、勝手に喋ることにする。

「その髪の毛が銀色なのはどうやってますか? 綺麗でいいよね」

 メタリックな銀色、今どきなら個性の範囲だとは思うけど、田舎の方ではあんまり見ない髪色だ。なにしろ目につくから、まずはそこが気にかかる。

「触ってみてもいい?」

 キラキラ光っているものには割と単純に触ってみたい。目の前にいるゴジを避けて手を伸ばして、髪の毛に触れようとしてみる。

「あっ! もしかしたら危ないかもしれないから、引っ張らないようにしてね」

「髪の毛を? そりゃ引っ張らないよ。痛いもんね」

 天宮さんの銀色の髪の毛に触れてみたところ、普通より太く固く冷たい。

 一房(ひとふさ)手に取って、指で()いて感触を確かめようとしたところ、天宮さんに手首を掴まれ手を動かすのを止められた。

 間を置かず、私の手首を掴む天宮さんの手首をゴジが掴む。

「佐々也から手を離せ」

 天宮さんは私の手首を離さない。

 それどころか、ゴジはそれなりに力を入れて引き剥がそうとしている様子なのに、天宮さんの手は空中で静止してビクともしない。ゴジと天宮さんは身長で二〇センチは違うから腕力差だって相当なものだろう。ゴジはあんまり、というかまったく荒っぽいことが得意じゃないタイプなのを考えに入れても、背の高い男子が華奢な女子に掴みかかって全く効果なしな光景にはなかなかの緊張感がある。

「……これを見てて?」

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