6月21日(火) 15:40
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第二章 遙か彼方のあの星の流転の果ての悠久の……
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6月21日(火)
15:40
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「謎の転校生かぁ……。なんだかマンガの導入みたいだね」
「マンガの転校生は藪に捨てられてたマネキンと顔が同じだったりしないだろ……。どっちかって言うとホラーゲームの導入だって……」
「ホラーゲーム……。まぁ、そうかもねぇ」
ホラーのマンガだってあるだろとは思ったけど、言いたいのがそういうことではないというのは分かる。確かに怖がらせ方がエグい。そもそも携端にメッセージを送り込んで来た方法もわからない。あれは怖かった。
いまは放課後。
窓ちゃんとユカちゃんはTOX襲来に向けて待機だからといって帰っていった。たまは部活の水泳部をやりに迂川郷の本校舎に行く日だ。ぞっちゃんに一緒に帰らないか誘われたけど、ゴジと話があるからちょっと残ると言ったら露骨に興味を失った感じで帰って行った。
ぞっちゃんは私とゴジの仲を勘違いしているというか、早く付き合っちゃえよ、みたいな目で見てくる。ぞっちゃんに限らず集落の顔見知りは大抵そういう目で見てくるけど、私とゴジは別に恋愛関係というわけじゃない。とはいえ、仲がいいというところまでは本当だから、ある程度そういう目で見られるのは仕方ないみたいなことだと思ってる。
「おまたせ」
ゴジと話しながら待っていると、銀髪をなびかせながら天宮さんが戻ってきた。
ホラーの導入の割に爽やかな登場をするし、友達みたいなノリで話しかけてくるなぁ。
しかしこうなんというか、改めて天宮さんは美形だ。
登場するだけで、もう絵面が美しい。
「待ってない。それより、説明っていうのを聞かせてもらいたいね」
天宮さんが笑顔で話しかけてくるのに対して、ゴジは木で鼻をくくったような回答。
こうして並ぶと天宮さんは小柄だ。背は私と同じぐらいだけどすらっとした体型だから、体重だって私より軽いだろう。その上、愛嬌があってニコニコしてるのでホラーには見えないし、逆に背も高くて仏頂面のゴジが悪役みたいに見えますねぇ。
その上さらに、天宮さんは顔が良い!
いわゆる目が可愛いとかのチャームポイントのある顔という感じではなく、造形が非常に整っていて端正、作り物のようだ。でも、そこに表情が乗っているから作り上げた偽物のようには感じない。
「長い話になるのよね……。もう少し、落ち着いて話せる場所はないかな? 先生に四時には帰れって言われちゃったから」
四時は渡部先生が見回りをして撤収する時間だ。その後、迂川郷の本校舎に帰る。
「じゃあうちに来……」
「いいや、長い話を聞くかどうかも、信用できるかどうかが分かってから決める。まずはここで話してくれ」
私の家に誘おうと思ったんだけどゴジに邪魔されてしまった。喋る時に私と天宮さんの間に半身を入れてくる念の入れようで、邪魔ではあるんだけどゴジがここまでするのは珍しいからきっと意図があるんだろう。
うん。まぁ本当に怪しんでるんだと思うし、実際に怪しいのも事実だ。
とはいえ、天宮さんが本当に正体不明のホラーの怪物だった時、私よりゴジの方が上手く対処できるなんてこと無いはずだから、庇ってくれる必要なんてないんだよ、とは思う。
もちろんゴジの方が体が大きいのは事実だから、例えば仮に大怪我をするようなことが起きた場合には私よりゴジの方が相対的に被害が小さくなる可能性は高い。それはそうなんだけど、もし天宮さんがホラーの怪物だとしたらきっと得体のしれない攻撃をしてくる見込みが高い。つまり貫通系とか一発死にとかわからん殺しの可能性が高いわけで、つまりは庇ってくれてもあんまり有益ではなかろうな、と想像が走る。




