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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか
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……7月26日(火) 14:00 一日目:東京行き車中

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「えー、そうなんですかー? 東京の人ってすごーい」


「僕はあくまで大宮で、東京が地元の人ではないですけどね。これは……また後でのお楽しみ」

「おおー。なんだろう?」

 誰か紹介してくれる感じかな、とは思ったけど、勿体つけられたら予想をひけらかしたりしないのがマナーだろう。外すならいいんだけど、狙って外すのもなんだかなと思うし。

「せっかくなので追加問題。現在、東京といえばそういう危険地域として避けられていますが、日本の歴史的には重要な場所でした。なぜ重要だったんでしょうか?」

「大都市があったらしいですね。ちょっとイメージできないんだけど、関東全域が大きな街で、東京はその中心地だったとか。確かに神奈川県も地形で言うと関東平野だから、それを考えると端っこというよりは真ん中の方って感じになるし」

「神奈川県って関東平野なの? 神奈川県は東海地方なのに変なの」

 ぞっちゃん……。

 話しやすくしてくれるのは助かるんだけど、バカのフリすることはないよ。

「関東平野は平野の名前だから、なんとか地方みたいな区分けとはあんまり関係ないんじゃないかな」

「太陽系時代には、神奈川県は関東地方だったよ」

「えっ! そうなの? なんでそんなこと知ってんの?」

 ハルカちゃんがどこで調べたんだそれみたいなことを言い出して、ぞっちゃんが驚いて聞き返す。

「いや……、太陽系時代のアニメ作品にわりとよく出てくるからだけど……。関東大会には神奈川代表がよく参加してる。シリーズ八作目の『キラメキステージ風林火山』の横須賀まりなちゃんとか……」

「やっぱりそっち系の話だったか……」

 実のところ、ハルカちゃんの生まれ育った世界とこの世界で共通する歴史は太陽系時代までなので、その時代のことはハルカちゃんとしても自信を持って言うことができる。

 時折、過剰なほどその時代の知識を強調するのは、ハルカちゃんなりの誠実さの(あらわ)れなのかもしれないという気がする。知っている振りや付け焼き刃でなく、この地球に来る以前からの自分との連続性を保ちながら、嘘でない発言をすることができる、という意味で。

 ハルカちゃんは文字通りの人間ではないから、この想像はちょっと人間らしすぎる見立てかもしれないけど。


   *   *   *


「じゃあ続けて第三問。今は車で東京に向かっていますが、東京と埼玉の境目にはなにがある? いまそこに向かっています」

 大都会大宮から大きな道を通っているけど、確かに周囲は郊外というか、建物と建物の間に隙間が多い、大都会としては寂しい感じになってきた。

「この道を進むと……、橋ですか? 中仙道戸田橋」

 ハルカちゃんが答える。

「すごい! 橋の名前までよく知ってるね。それも太陽系時代のアニメから?」

「あ、いえ。地図見てるんです」

「カンニングだったかー」

「いけませんでしたか? 座席に地図が置いてあったもので……」

「あ、見当たらなかったロードマップそこにありましたか……。先生そういえば資料持ち込み禁止って言い忘れてたかも。今回は持ち込みありでも良しとしましょう。正解、五点」

「もともと置いてあったのであって、持ち込んではいないわけですが……」

 小声でツッコミを入れても聞かないふりをしてくれる。私はこういう細かいことが気になってしまう(けど訂正までは求めてない)から、反応しないでくれるのは実はとてもありがたい。

「橋というか、川ですね。荒川(あらかわ)。埼玉県と東京の境目は半分ぐらい荒川です。さっきハルルさんが言ってくれた太陽系時代には足立市も東京だったんですが、東京滅亡以降、埼玉県になりました。その南の葛飾市も同じくなんですけどこっちは千葉県に編入、あんまり関係ないけど多摩川以南の町田市周辺も同様に神奈川県に編入されました。いまいるここからもうちょっと西から行くと荒川が埼玉県の中を通るから境目に川は無くなるんですけど、走ってても東京かどうか絵的にわかりにくくて映像映えしないんですよね」

関所(せきしょ)とかあるんですか?」

 これは私。東京について漠然と調べてみたところそういう話は見つからなかったけど、他のついでに見てたというぐらいだから、無いという確信を持つまでにはなれなかった。

 ただなんとなく『東京入口(いりぐち)』みたいな場所があるのだろう、という気がしているだけだ。

「無いですね。別に交通制限があるわけでもないです。道もよく整備されていて悪くないですよ。東京に入ってしまうとアスファルトなんかの舗装はされてませんが。それで、TOXがいるかも知れないので危険なだけです」

「えー! 東京にはTOXが居るかもしれないんですか? こわーい」

 ぞっちゃんが棒読み。もうちょい演技だって上手かろうにわざとらしい。

 そのせいでカワイコぶった腹黒に聞こえる。

 ……そういえば、それが狙いだったっけ。

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