7月26日(火) 14:00 一日目:東京行き車中
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか
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7月26日(火)
14:00
一日目
東京行き車中
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「東京クイズー!」
「「いえーい!」」
「え? あっ、はい。いえーい」
そういえば五分前ぐらいに、これからクイズを始めるから掛け声をキューにして「いえーい」って言ってほしいという説明があった。具体的にイメージできてなかったけど、こういうことだったか……。
「もう一回やりましょうか? じゃあ、行きますよ。……東京クイズー!」
「「「いえーい!」」」
「はい、ご協力ありがとうございます。いまは東京に向かう道中の車内ですが、東京に行く前にレザミ・オリセの皆さんと一緒に、東京についての知識の確認なんかをしておきたいということで、まずはクイズ形式で基礎知識のおさらいをしていきたいと思ってます。出題とカメラマンは私よれひー、回答者はレザミ・オリセのお三方。そして運転手は皆さんおなじみアシスタントのけんちゃんでーす」
東京に向かう車の中。
見慣れたものより少し小さい黄色のワンボックスカーで、内装は豪華で乗り心地がいい。よく見かける商用のものと違って、なにかの時に荷物を運ぶのに使ったりはしないんだろうという、そんな内装だ。
ユカちゃんは朝のうちに帰って行ったので、ここにはもう居ない。
司会のよれひーさんは助手席に座ってハンディカメラで後ろの席にいる私達を撮影する、という感じになるみたいだ。自分がしゃべるときはカメラを自分に向けている。
「「「はーい」」」
「はいお返事ありがとうございます。ちゃらりららん、さっそく第一問。東京はどこにあるでしょう?」
「はい! 日本!」
「ぶぶー! 佐々也ちゃんさん不正解! 本当は合ってるけど、もうちょっと具体的にお願いします。視聴者さんがイメージしやすい感じで」
「はい! 大宮の南側で〜す!」
「うーん、合ってる。けど、もう一声。どうですか、ハルルさん」
「関東地方南部の湾の北側に隣接して、そこから東側に向けての地域」
「うーん、合ってるけど表現が硬い。いちおう、こちらで用意していた答えは『埼玉県と神奈川県の間』という感じです」
「……正解の想定が狭すぎる」
ぼそっと、思いついた言葉が口から出てしまった。
異議があると言うより、慣れていない詳細不明のゲームに参加するときのアジャストに関する感想だ。
「それもそうですね。じゃあ、全員正解で!」
「あっ、すいません。文句があるとかそういうやつではなかったんですが……」
「やったー!」
「これは正解すると、なにか商品をもらえるんですかー?」
「いや、特に無いですけど……」
「そういう感じか……。じゃあ別に正解じゃなくても良かったな……」
「佐々也ちゃん、それはさすがに正直すぎ」
ぼそっと言ったらハルカちゃんからツッコミが入った。
それにぞっちゃんが被せてくる。
「じゃあ、さーちゃんが勝ったら、あたしがお菓子買ってあげる」
「ありがと、ぞ……。み、みーちゃん」
「はーい、みーちゃんですよー。みーちゃん優しいって言って!」
「え? み、みーちゃん優しい?」「みーちゃん優しい」
私のあとにハルカちゃんが抑揚を抑えめで繰り返す。
「もう一回言って!」
「え? み、みーちゃん優しい」「みーちゃん優しい」
「ありがとう。うふ」
うふ、はカメラに向けてアピール。
ぞっちゃんっぽくないというか、ぽいというか。
確かに可愛いキャラでおしゃべり大好きのぞっちゃんって概ねこういう感じではあるんだけど、いくらなんでもこれは誇張されすぎてる気はする。




