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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか
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……7月25日(月) 22:00 大宮のゲストルーム

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「調べてもらったところによると、出入り口が中の空間に紐付いていて、閉じるときは出入り口に向かって使ってた空間が圧縮されていく感じになるみたい。蓋になっている部分の空間はその圧縮されていく空間の外側になるから、狭い狭いそこにどんどん中のものが押し付けられていくし、蓋が開かなかったら潰れちゃうよね、ってことみたい」

「圧縮か……。兵器に転用できるかもしれない力だな……。少なくともガソリンエンジンには使えそうだ」

「自分自身の集中力が関係するから、工業的に使えるほど安定した力を発揮できるかどうかは……。というか、そういうのやめてほしい。能力者は自分の能力を使いたいように使う権利があることにはなってるんだよ」

「あ、ごめんごめん。自分は能力とかないもんだから、つい面白くなっちゃって。話を戻すと、大きな袋に幹侍郎ちゃんを入れてそれを車に運び込めば輸送自体は可能になる?」

「入れることもできるし、車で運ぶこともできるよ。でも、その袋を車に乗せるのは簡単じゃ無いと思うけど……。幹侍郎ちゃんの重さってどれくらいなの?」

「六十五トンだって」

「ゾウの十倍ぐらいの重さか……。半分でも三〇トン。トレーラーとか特別なダンプカーが必要になる。借りてこないといけないけど、借りるあてなんてないよ? それにそれぐらい重いものを小さなところに入れると床が抜ける心配もしないといけなくなる」

「床が抜ける? あ、接地面が小さくなるとその場にかかる圧力が上がるってことか……」

「そう。普通の道路だと、余裕を見て一メートル四方辺り五〇〇キログラムぐらい。だから接地面六〇平方メートルぐらい必要になることになってる」

「え? そんなこともあるのか……。言われてみればそうだけど、難しい問題が山積みだな。それにしてもユカちゃん、意外なことに詳しいもんだね」

「意外じゃないでしょ。私は防衛隊で輸送担当してるし、重さを集めてしまう場合がある能力があるからね」

「ユカちゃんがそういう感じでやってるってのは知らなかったよ……。いやしかし、それだとトラックに乗せても重量制限が……」

「ああいうトラックにタイヤがいっぱいついてるのはそういう理由だよ。あともう一つ言うと、本来なら三〇トンを超えるぐらいの重量のものが道路を走るときは事前の申請が必要になる。道路に影響が出るからね」

 つい先日書いたばかりの旅行申請を思い出して嫌な気持ちになる。

 書類を書くことそのものは難しくもなんともないのだけど、色々と気をつけておかなければいけないのがしんどい。

「申請の手続き……嫌だなぁ……。いや? しないよ?」

「それは仕方ないけど、無申請でそれだけの重量物を運ぶとしたらそれだけで違法行為が発生するってこと。もしやるなら断らないけどね、私にはそういうリスクがあるわけ。そもそも、東京に行くんでしょ? その申請をしないなら、それだけで無許可旅行になるんだけど」

「旅行申請……。交通手段にトレーラーって書くの?」

「そうしたら何運ぶのか聞かれるでしょ? 私なら出さないね。違法だけど」

 情報量が多くて目が回る。

 私がこういうのに弱いのを知っていてやるんだからユカちゃんは意地悪だ。けど、やるなら断らないと言ってくれているから意地悪じゃないんだろう。違法行為というのが重いということだ。ちょうど先日、窓ちゃんにも違法行為があった。

 もうちょっと日頃から法律のこと意識しなきゃな、という謎の責任感を抱いた。

 普段から違法行為なんてしてないけど、遵法かどうかの確認もしていない。

 話題を変えよう。

 重量のことは一旦考えるのをやめて、実際に実行する方向で考えを進める。トレーラーを借りて、幹侍郎ちゃんを入れた箱を荷台に載せられたとする……。

「トレーラーを運転できる人もいないのか……」

 そういう車の運転には大型免許というのが()るはずだ。特別な免許だから、試験も難しいと聞いたことがある。

「私は運転できるし、トレーラーの牽引(けんいん)もできる。防衛隊でそういう役目だから」

「トレーラーを!? マジか、すげーな!!」

「私の能力を活かそうと思ったら当然の話ではあるんだけどね。ついでにフォークリフトも操作できる。クレーンはまだだけど、ゆくゆくは」

「すげぇ……。まあでも、幹侍郎ちゃんをトラックに載せることさえできれば、そこから先はユカちゃんが居ればなんとかなるんだね。思ってたより課題が多いけど、ユカちゃん有能だな」

「そうは言うけど、三〇トンのものをトラックに載せるのは難しいことだよ。その辺のフォークリフトじゃできないことだからね?」

「まあ、最悪、幹侍郎ちゃん本人に乗ってもらってから袋に入ってもらえばいいよ。ゴジの家で乗るんだろうから、周りに人目があるわけじゃないんだし」

 身長二〇メートル弱の幹侍郎ちゃんが、深めの浴槽に入る時みたいにトレーラーの荷台に置いてある袋に足から入って行って、最後には姿を消す。

 想像するとなかなかシュールな光景ではある。

 でも、光景がシュールだからって実行不可能ってわけじゃない。

 実際にやる事になったらもっと色々な問題が出てくるだろうとは思うけど。

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