……6月21日(火) 13:25
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第一章 宙の光に星は無し
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『|後で説明するから|【ハルカ】』
視界の隅でゴジがわざとらしいぐらい露骨にのけぞってビビっている。
私も驚いた。天宮さんは端末を操作してる様子もないし、いまもぞっちゃんと話している。
しかもよく見たら、メッセージアプリじゃなくて、端末のエラーとかを表示するようなシステムメッセージで送ってきてる。これじゃ返信できないんだが……。
もしかしたら、天宮さんもなにか能力があるのかな?
|: ゴジ :|叫び声が出そうだ||
ゴジからのメッセージ。
わかる。意味不明すぎる。でも、ゴジは何故か私の身の安全に責任があるつもりで居るらしいので、私まで怯えるとゴジにかかる圧力がヤバそうだ。私は冷静で居なければ。
||さゝや||説明するって言ってるから、まず聞いてみよう||
|: ゴジ :|危険かもしれない||
|【ハルカ】|危害は加えないし、話し合いしてくれたらお礼もできると思う||
私とゴジのダイレクトメッセに、他の文字が割り込んできた。まぁ、アカウント名を見ると天宮さんなんだろうけど。
あれ? システムメッセージじゃなくなった? 普通のメッセージも送れるのか。返信がしやすくてありがたい。
端末持ってないのにメッセージアプリが使えるのか。便利だ。
||さゝや||お礼? いくらぐらい?||
|【ハルカ】|お金は不得意分野||
||さゝや||得意分野は?||
|【ハルカ】|電子機器関係とか、ネットワーク関係とか||
|【ハルカ】|でも、不得意分野でも頑張ればできる範囲でお礼できると思う||
|: ゴジ :|なんでお礼の交渉なんてしてるんだよ! そういう問題じゃないだろ! 危険かもしれないのに!||
||さゝや||騙して言いくるめるつもりなら不得意なんて言い出す理由がないよ。だから嘘じゃないと思う。話を聞いてみよう||
|: ゴジ :|そんなの単なる推測だけど、めちゃくちゃ怪しいのは紛れもない事実だよ||
||さゝや||話を聞いてみたいんだ。頼むゴジ||
と、メッセージを送ったところで、渡部先生から声がかかった。
「おーい、安積。授業始めるけど、大丈夫か?」
「あ、すいません。聞きます」
「授業をするのはテレプレの相馬先生だけどな。緊急のホームルーム終わって、バトンタッチするからな」
「はい、お願いします」
ゴジだって携端を見てたはずなのに、こういう時に声を掛けられるのはいっつも私なんだよなぁ。なんか不公平な気がする。
天宮さんが怪しいというのに変わりはないけど、こうして話してみると普通に言葉が通じるし、それだけで即座に危険があるわけでもないように思えるみたいなところはある。例えばだけど友好的な宇宙人とかそういうのかもしれないし、言葉が通じるのであれば話を聞いてみたい。
あ、いや、宇宙人だと地球の電子機器とかネットワークに詳しいわけないのか……。
だったら正体はなんだろう。
そんなことに気が逸れてしまう部分もあったけど、普通に授業を受けることはできた。
チラチラ横目に入るゴジは、とってもやきもきしている様子だったけど。
第一章、終わり。
次回より第二章となります。
次回の投稿は、4月1日の予定です。




