7月25日(月) 15:00 大都会大宮
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第九章 東京は魑魅魍魎が跋扈する、いわば此の世の伏魔殿とか
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7月25日(月)
15:00
大都会大宮
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「レザミ・オリセなんていうグループ名があるということは、三人でなにか活動でもしているのかな? みんな可愛いし衣装もそんな感じだし、ローカルアイドルとかやってるの?」
「アイドル!? 私が!? あ、すいません……」
驚きすぎて大きな声が出てしまった。
よれひーさんがびっくりしている。ユカちゃんは声を出さずに大爆笑だ。
カメラの人やアシスタントの人は声を出して笑っているのでつられたのか、そのうちにユカちゃんも声を出して笑い始めた。
「あ、いえ、この二人はこの前のパーティーでそんな感じのことをしてたけど……、私は、その……そういうのできないです」
「大丈夫だよさーちゃん。これは収録だから慌てなくても」
ぞっちゃんが優しく会話を引き取ってくれる。
ありがとうぞっちゃん。
いや、番組中はみーちゃんって呼べって言われてた。ありがとうみーちゃん。
「私達、同じ村に住んでて、よれひーさんの番組にみんなで一緒に出演させてもらうことになったから、みんなの呼び名があったほうが良いかと思って付けてみたんです。見分けやすいように特徴のある衣装にして、衣装の形も一人づつ変えて」
「説明してくれてありがとう。工夫してくれたんですね。それで、この前の番組で東京探検の参加者を募集した時に応募してくれたスタートアップストリーマーがいま話してくれたみーちゃんさん。実は最初に決まった二人組のスタートアップストリーマーたちが事情があって来れなくなってしまって、その代役みたいな感じでみーちゃんさんのお友達に一緒に来てもらったんですよ」
「そうだったのか……、知らなかった……」
「えっ? 佐々也ちゃんさん、知らなかったの?」
こそっと呟いたはずなのに、よれひーさんに拾われてしまった。
「私はその、み、みーちゃんが東京探検に行くって聞いたから、一緒に連れて行ってほしいって頼んだら数日後にいいよって言われた感じで……。これって運が良かったんだ……」
「運というか、そういう巡り合わせかな。来れなくなった方たちの事情が良いものとは限らないからね」
「あ、すいません」
実際には身内に急病があったとかの事情も聞いている。聞いてなかったのは私達は代役に相当しているってことで、来ない人たちは単なる欠席かと思ってた。それはそれとして、運が良かったってのは確かに私の言葉が悪かった。
「平気平気、カットするから」
そういってよれひーさんは両腕をあげて二本指でちょきちょきというジェスチャーをしてみせる。
「でも、生配信の方は”これ”できないから注意してね」
”これ”はもちろんちょきちょきである。
「はい」
「ところで、名前の意味は『高校の友だち』ってことだけど、みんなは一緒の高校なの?」
「はい。高校の友だち、っていうか私とさーちゃんは幼馴染なんですけど、こっちのハルルはこのまえ転校してきてクラスメイト。田舎の方の、川のある村なんですけど」
「この衣装は、その川をイメージしています」
ぞっちゃんとハルカちゃんが答える。私もなにか言わないと……。
「この前TOXが来てました、折瀬村です。村の名前がグループ名と掛かってるんですよ。聞いてないけど、たぶん」
「わーーーーっ!」
私が喋ったらよれひーさんがおどけた感じで叫びながらちょきちょきした。
「佐々也ちゃん、それは特定されちゃうから」
ハルカちゃんがそっと教えてくれる。
「あ、そっか。すいません、なんかお手数をかけて」
「いいのいいの、面白いから。佐々也ちゃんさんと、そっちのハルルさんは、ストリーマーじゃないからあんまり慣れてないんですよね」
「それで、私がストリーマーです」
ここぞというところでぞっちゃんが出てきてちゃんと話を引き取ってくれるのはほんとにありがたい。ごめんよ、ぞっちゃん。
「はい、見せてもらいました。ロケットのやつ。佐々也ちゃんさんも出ていて面白い子だと思ったんだけど、予定以上に面白かったな、これは。じゃあ、お三方には一人づつ自己紹介してもらいましょう」




