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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第八章 其の人の罪、有りや無しや。それは有耶無耶。
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……7月18日(月) 8:00

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第八章 其の人の罪、有りや無しや。其れは有耶無耶。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 先週を通じて、クラスの雰囲気は私にとって劇的に居たたまれないものとなってきている。状況を振り返って心構えをしておこう。

 窓ちゃんはゴジのことが好きだという例の噂話がかなり広まって、全体的にそういう雰囲気になった。

 この話に私が巻き込まれて、なんというか恋愛的な意味で私がゴジに振られたことになってしまっている。

 一方で窓ちゃんは謹慎で不在の中、TOXを相手に大活躍した噂と神社から盗まれた巨大な刀の件で窃盗と銃刀法違反をして逮捕されたという話で(ハク)が付きすぎてしまい刑務所帰りの武闘派ヤクザみたいな扱いになってしまっているし、ゴジはゴジで自首したという肝心な部分が省略されてしまって防衛隊と一人で交渉した頼れる男みたいな感じになっている。

 この噂話の一番困るところは、あらゆる部分に間違いが含まれているにも関わらず、部分的に正しいところもあるせいで、訂正をしても誤解を招きやすいところだ。

 噂に対して私から言えるのは、私はもともとゴジと付き合ってたわけじゃないから振られてるわけじゃないよとか、私は窓ちゃんと仲良しだしいまでも仲良くしてるよ、というぐらい。両方とも完全に本当のことだ。

 窓ちゃんは神社の刀を盗んだりしてないよと訂正もしてみたんだけど、このデマは何故か人気があるらしくて何度か否定しても消える気配がない。

 窓ちゃんのような華奢で楚々とした美少女が自分の背丈より大きい刀を振り回して戦う姿にロマンを感じる気持ちはわからんでもないんだけど、間違いは間違いだ。

 噂が消えないからと言って、窓ちゃんは白っぽい猛獣の姿に変身しているから美少女の姿では戦ってないよとか、窓ちゃんが持ってたのは神社の御神刀じゃなくてゴジが作ったマチェーテだよ、みたいな事実を口に出すわけにもいかない。

 窓ちゃんは変身のことを言われるのが好きではないし、マチェーテのこともユカちゃんに口止めされている。この辺の制約のせいで、いくら否定しても説得力がないらしい。


 こんな状況だから、先週中のようにリモプレで下の町の教室に集落のみんなが遠隔で参加する形だったりするとめちゃくちゃ噂されていた。クラスメイトたちも流石に私達との直接通話に聞こえないように話す程度のデリカシーはあるんだけど、公共チャンネルからはどうしても噂話が断片的に聞こえてきたりする。

 今日は折瀬の登校日で教室がこっちだからそういう雑音は減るし、ゴジと窓ちゃんが近くに居るからちょっとしたはずみで噂を信じてしまいそうにならないので、とても居心地がよい。

 聞こえないところではどうせめちゃくちゃ噂されてるんだろうとは思うけど、仮に聞こえてきたところで首謀者がいるわけでもない噂ってやつに対して為す術はない。そう思えば、聞こえてこないってだけでかなり快適だ。


   *   *   *


 そんな中、お昼の時間にぞっちゃんが嬉しそうな顔で話しかけてきた。

「そうだ、佐々也ちゃん。東京探検の話、OKだってさ」

「あ、ほんとに? それは嬉しいな」

 ぞっちゃんはなにかストリーム番組の視聴者参加みたいな形で行くという話だったので、私がついていって良いかどうかを先方に確認してもらっていた例の話。

 宿や旅費や送り迎えなんかの詳細は先方との調整があるからまた後でという話だったけど、日程は決まっていて夏休みに入ってすぐ。旅行のためには防衛隊に届け出が必要だよと注意された。言われてみればそうだ。TOXは人口の移動を嫌うので、旅行を禁止まではされていないけど管理はされている。

 人生のこれまで旅行といえば親に連れて行ってもらったことがあるだけなので、自分でこの手続きをするのは初めてだ。手続きのやり方なんてなんにもわからんけど、防衛隊のことだからユカちゃんに聞こう。

 そんなことを思っていたら、ぞっちゃんが横のハルカちゃんに声をかけていた。

「ハルカちゃん、放課後、旅行の服買いに行こ〜?」

「うん、行く。佐々也ちゃんは?」

「私は別に、旅行用に新しい服まで買うつもりはないから……」

「じゃ〜佐々也ちゃんの代わりに窓ちゃんが行こ?」

「私は謹慎があるから……」

「だからだよ、窓ちゃん。顔色を見ると気分転換したほうが良いみたいだから一緒に行こ? 友達の付き添いでやむなく外出っていう事なら、後で怒られた時に言い訳しやすいし。それに、窓ちゃんに相談したいこともあるんだ。ね?」

 窓ちゃんが実直に断ったところで、ぞっちゃんが強引に誘っている。

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