……7月15日(金) 10:30〜7月16日(土) 10:00
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第八章 其の人の罪、有りや無しや。其れは有耶無耶。
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確かに私から見てもゴジは防衛隊には向いてないけど、ゴジもゴジなりに自分で向いてないってっことを分かっていたのは少し意外だ。男の子ってかっこいいからなんとか隊とかに密かに憧れてて、こういう時にはほいほい勧誘されちゃうんだと思ってた。
アホな子供のままのような気がしてたけど、ゴジも成長してるんだねぇ。
感慨深い。
私の感慨はともかく、そんな感じでゴジは本隊員にはならなくとも能力者として防衛隊の能力者関連の研修を夏休みに受けないといけなくなったらしい。ゴジはできればそんな研修は受けたくなかったらしいけど、反省会を兼ねてるからということで断れるものじゃないんだそうな。
法律上で犯罪者になるのを避けることができるなら予備隊員も研修も仕方ないんじゃないかと私は思う。よく判んないけど。
念のため、これを他人に話してしまってもいいのかと聞いたところ、やっぱりダメだそうだ。というか、銃刀法違反を隠蔽するモロに脱法行為なので、絶対に話してはいけないとのことだ。
よく私に話したね? と聞いたところ、「あんたは関係者だから、露見したら一緒に逮捕されるんだよ」だそうだ。
いや、私は正犯じゃないから扱いは小さいはずだが、みたいなことがちらっと頭をかすめたけど、私はともかくゴジや窓ちゃんが大変なことになるのは間違いない。知識が不足しているから大変なことというのがどう大変なのか具体的にはわからないけど、法律を破るというのはそれは大変なことだ。だから他人に話したりはしない。
「そもそもね、私としてもこういうことを一人で胸の裡にしまっておくのはかなりしんどいのよ。佐々也なら話せば話しただけ理解はしてくれるし、口も固いからね。秘密にしなさいよ」
「ああうん。秘密にするよ。でも、また秘密が増えた……」
* * *
この日の夜。
窓ちゃんから「明日、話があるから会いたい」というメッセが来た。
明日は土曜。学校は休み。
もちろん会う。場所は、例の展望台に朝十時ということになった。
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7月17日(土)
10:00
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ゴジには午前中に窓ちゃんに会いに行くので、幹侍郎ちゃんのお世話に行けないことを伝える。私にもゴジにもこれという変化はないはずなのだけど、学校の噂のせいでなんとなく気まずいというか、冗談を言い出しにくい雰囲気だ。
雰囲気なんて無視して喋っちゃえばいいんだけど、この辺の感覚はゴジも同じらしくて「次の刀はどの神社で盗むか相談するの?」とか聞いてきたりはせず、「うん」とだけ言って言葉少なに受け入れている。
いや、ゴジは普段からこういう際どい冗談を言う人間ではないか。
私はそういう冗談だって言うのだけど、ゴジを怒らせるのが好きってわけじゃないので、いまはやっぱり黙るしかない。
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約束の時間より少し早く到着するように出たはずなのに、なぜか約束より少し遅れて展望台に到着した。言ってみればハイキングコースの入り口みたいな道なので意外に坂が厳しく、小学生の頃に比べると私の体が重くなってしまったのかもしれない。
折瀬の集落を見下ろす展望台ではあるんだけど、視界に入ってるという程度で別に見晴らしなんかが良いわけでもなく、集落にも別に見どころはない。織瀬は小川を囲む集落なんだけど、川はまわりの宅地より一段低いから展望台から川面がよく見えるということでもない。所々でちらちら水が流れているのは見えるから、家の並びが途切れているどこいら辺りが川なのかは分かる、という程度の眺望だ。
私が到着したとき、窓ちゃんはバイクの近くにいた。
あのバイク、きっと置きっぱなしだったんだろう。
窓ちゃんの服は白い半袖のブラウスと濃いベージュのハイウェストのロングスカート。
「窓ちゃん、来たよ。バイク、拭いてるの?」
「あ、佐々也ちゃん! そう……。置きっぱなしで泥だらけだから」
「叡一くんとここで会ったんだってね。聞いたよ」
「あ……、うん。ごめんね、私のせいで迷惑かけちゃって」
蚊の鳴くような声で、窓ちゃんが謝ってくる。
「私は別になにもなかったよ。窓ちゃんが一人で全部TOX倒したってホント?」




