7月14日(木) 8:00
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第八章 其の人の罪、有りや無しや。其れは有耶無耶。
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7月14日(木)
8:00
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寝不足でぼんやりしながら、シャワーを浴びて朝ごはん代わりの野菜ジュース。寝起きから今まで、億劫がって水も飲んでなかったから、朝市の水分がじゅわーっと胃に滲みていくのを感じる。
授業開始まであと少ししか無いので、いまさら寝直すのも無理だ。
ぼんやりした状態でリモプレの配置についておく。
登校の日だったらもっと大変だったかと思うと、そこは良かったのかもしれない。
頭が働かず半分眠ってるような状態で、椅子に座ってリモプレを用意して授業を待つ。
普段ならもう少し周りの様子を伺うんだけど、今日は無理だ。
そういえばハルカちゃんは……、自分の携端を使うことになったんだなと回らない頭で思いす。つまり、一緒に授業を受ける理由がなくなったんだよな。
そんなことを考えていたら、いつもと同じ授業開始五分前ぐらいに部屋に入ってきた。
「あれ? 佐々也ちゃんもう着席して用意してるの? 珍しいね」
いつもはもっと直前に着席する感じだもんな。
「幹侍郎ちゃんが早起きだったおかげで眠くて……」
「夜更かしじゃなくて早起きの方かぁ」
「うん」
自分の携端があるのではという質問をするのも面倒で、いつもと同じように、どうぞ、という身振りでハルカちゃんに隣の椅子を勧める。
「あ、私は今日から自分の端末。まだ音声だけにしておくけど、映像は見えるからね」
「そうだったね」
「佐々也ちゃんの横には座るけど」
へへへとか言いながら、椅子を少し横にずらしてその場所に座った。私の端末のカメラには入らない場所ではある。こういう人懐っこさのような部分が、ハルカちゃんは上手い。私だって懐かれていると思えば悪い気はしない。
そのまま自分の携端(モノは無いけど、便宜的にこう呼ぶ)を使って、クラスメイトとおはよー、なんていう挨拶を交わしたりしている。私は眠くて無理だ。
ゴジは出席してるけど、窓ちゃんとユカちゃんは今日もお休み。
ただ、二人とも明日からは来るらしいということを先生が言っていた。
明日来るなら、明日話せばいいか。
今日はもう眠いよ私は。
そんな感じで、眠気のせいで授業をまじめに聞くこともできず、人とも没交渉で一日を終えていくことになった。そこは幹侍郎ちゃんと遊べたから仕方ないかな、ぐらいの感じなんですけれども。
終わりがけ、放課後の時間帯になっても気が付かず、リモプレをつけたままボーッとしていたら、教室の噂話が聞こえてきた。
「真宮さんが神指くんと付き合いはじめたらしいよ。それで刃物が出てくる騒ぎがあったんだって。安積さんがなんか無口で、真宮さんが学校に来てないのはそれが原因らしい」
……はぁ?
その話、もうちょっと詳しく聞かせてほしいと少しは思ったけど、聞きに行く気力が出せなかった。なにしろ眠かったから。
それでも根性で幹侍郎ちゃんのところへ行った。
根性で席について、ゴジが授業を始めたところまでは記憶にある。
* * *
結局うつらうつらしていたらしくて、気がついたら幹侍郎ちゃんとゴジの会話がぼんやりと聞こえてきた。
「ね? お姉ちゃん強いでしょ?」
「まぁこれは敵わないよなぁ……」
三人で例の撃ち合いのゲームをしているようだ。
ゲーム……。
そういえば、ハルカちゃん、腕はどうしたんだろう?
ぼんやり気になったので確認してみると、昨日なくなっていた左手のところに、なにか細い金属の棒で作ったみたいな義手が生えていて、それでコントローラを操作しているみたいだった。
朝から一緒にいたはずなんだけど、今頃気づくとは……。
よっぽど眠かったんだな……。
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作者注★
八章は分割が三〇を超えたので、月をまたいで同章の更新をします。
(※ほんとうはもっと情けない理由ですが、月をまたいでの更新はします。41部分まであります)




