7月13日(水) 20:55
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第八章 其の人の罪、有りや無しや。其れは有耶無耶。
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7月13日(水)
20:55
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色々と用事を済ませて、クッション付きのレジャーマットと座布団を三枚持って、約束のお泊りをするためにもう一度幹侍郎ちゃんの部屋に帰ってきた。
いやしかし、どうやってゴジに叡一くんにバレちゃった話を切り出そうか。
晩御飯のレンチン弁当を食べながら考えてみたけど、特にこれというアイディアは思い浮かばない。叡一くんは意外に秘密を守ってくれそうだ、という良い面もあるにはあった。
とはいえ、留守を頼まれてた間に幹侍郎ちゃんのことを他人に知られてしまったというのは事実なので、気持ちとしては落ち着かないんだよな。
つまり約束を守れなかったということだ。
うーむ。
「叡一くんがここに来たって?」
降りたらゴジが即座に切り出してきた。
心を読まれた!? いや、そんなわけ無いか。
「……幹侍郎ちゃんに聞いた?」
「うん。あんまり話せなかったってさ」
「そうだね。自己紹介をしたところで連れて上がっちゃったから……」
言い訳をするために急いで説明をしようとしたら、ゴジに遮られた。
「叡一くん、なんて言ってた?」
「え?」
叡一くんとは、結果としては色々な話をした。険悪なところから始まったのに、まさかあんなに色々な話をするとはまさか思わなかった。それで、最終的に言ってたことを要約するとなると……「今後ともよろしく」ぐらいになるのか?
「うーん」
「幹侍郎によると、なんか好感触だったっぽいけど」
あ、そうか。ゴジが気にしてるのは幹侍郎ちゃんのことに限った話か。
「好感触……、まぁ幹侍郎ちゃんに対する悪意なんかはあんまり無かったね。というか、興味は薄いようだった」
「へ? それはまた意外だ。なんか傷つくな……」
「ああ、いや。そういう意味じゃなくて、叡一くんは割とはっきりした目的がある人だったんだよ。ハイレベル存在を探してるんだって」
「ハイレベル存在?」
その名前を聞いたところで、ゴジが怪訝な表情になる。
「ごめん。あまりにも言葉が面白かったから頭に残ってて。ええと、ダイソン球を作って、地球をここに連れて来て、イルカを宇宙に連れ出して、TOXを落とし続けてる人が居るはずだって。そういうのがハイレベル存在。叡一くんは『高階者』って呼んでたよ」
「……叡一くんって、そういう感じなの?」
「そうみたい。でも、本人としては真面目な話みたいだったけどね」
「そうなのか……。でも逆に、幹侍郎のことが悪く思われてないってことなら、何かあったときに助けを求めやすいのかな?」
「それはわかんない。私からそういうことを聞いたりはしてないから」
「そっか……」
ゴジはそう言ったきり黙って、ぼんやりなにか考えている。
ここでこんなに悠長な様子が見られるってことは、少なくとも防衛隊での話はたしかにそんなに悪くなかったんだろうということが分かる。
「叡一くんには僕が自分で聞いてみるしかないのかな」
「なんか、ごめんね。勝手に教えちゃったみたいになって」
「それにはちょっと怒ってるけど、結果が悪くなかったからいいよ」
「うん……。それで、そっちはどうだったの? 防衛隊ではなんて言われた? 違法だったんじゃないの?」
「やっぱり違法だって言って怒られたよ。それで、防衛隊の予備隊員になるように言われて、どちらにせよ能力者の講習を受けなきゃいけないことになった」
???
要旨はわかったけど、なんでそうなるのかわからない部分が多い。
「長い話になりそうだね。一旦それは後回しにして、窓ちゃんはどうだった?」
「会わせてもらったよ。付き添いの人が居て、短い時間だけ。会ったら泣かれちゃった……」




