……7月12日(火) 18:45〜7月13日(水) 8:00
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第八章 其の人の罪、有りや無しや。其れは有耶無耶。
――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――
防災無線でTOXの状況をおおまかに放送しているはず。
でもゴジの家が町外れなせいで、ここからはあんまり聞こえない。
実はこの防災無線はネットでも聞けるので、迂川郷の自治体のサイトを確認する。
「……の観測されたTOXはすべて排除されました。避難命令は解除されましたが、見つかっていないTOXがまだ居る危険がありますので、可能ならば外出は控えるようにしてください。ピンポーン。現在、迂川郷村の折瀬付近への落下が観測されたTOXはすべて排除……」
「いちおう、一段落したみたいね」
隣りにいたハルカちゃんから防災無線の感想。
私がもう見てないのを悟ったのか、モニタの裏から手を離している。モニタにもなにも映っていない。
「うん。でも外出しちゃいけないってのは、分かるような分からないような……。まだTOXがいる可能性があるのかな?」
「この放送は迂川郷のもので折瀬だけに向けたものじゃないから、そういう差し迫った話ってわけじゃないと思う。絶対に居ないって言い切れないってぐらいのことで、命令じゃないみたいだし、外出しても大丈夫なんじゃないの?」
「うん……。違法ってことはないのかな。とはいえ外出する用事はないから、私はどっちでもいいんだけど」
「真宮さんも見つかったし、これにて一段落ということでいい?」
「そうだね。いろいろありがとう」
* * *
一息ついたので、その後はぞっちゃんが作った私達のロケットの動画を見て過ごした。
大事件を目撃したのだから他にもすべきことがあるのではないかという気はするんだけど結局思い浮かばなかったし、幹侍郎ちゃんとは明日にでもこの動画の話をすることになるんだろうから早めに見ておきたい。
ところが実際に動画を見てみると、これがけっこう気に入らない内容だった。
なんというのか、ゴジとたまのふたりの仕事を手伝いもせずに口だけ出して最後には不出来な部分を指摘するというめちゃくちゃイヤな女が登場している。しかもあろうことかそれが私なのだ。
いや、確かに全部事実なんだけど、客観的に見るとこんな感じなのか……。
まぁでも事実だからなぁ……。NGではないよなぁ……。
これならいっそ映ってない方がマシだったかもという気もするし、いま映ってるのを消せというのはぞっちゃんも大変だろうし。
とりあえず、他人に見られる前にこういう感じだということを知ることができて良かった、と思っておくことにしようか。
パンツ……は確かめてないけど、あのイヤな女をもう一回見るのは憂鬱だ……。
ズボンを履いてるからパンツが写ってるわけないと思うし、それは大丈夫だろう。
できるだけ手早くこの件を手放したくて、私からはOKだという返事をその日のうちに送ってしまった。
━━━━━━━━━━
7月13日(水)
8:00
━━━━━━━━━━
TOXの襲撃から、一夜明けて翌日。
窓ちゃんがTOXと戦っていた話は学校が始まる前にゴジに教えといた方がいいかなという気がしたので、朝から一階の会議室に降りてゴジを呼んだ。
「おーい、ゴジー。おはよー」
会議室から呼ぶと、寝起き、という感じのゴジが出てきた。対する私はいちおう授業に出る用の服に着替えている。つまり、いつものTシャツとカーゴパンツ。
「おはよう佐々也。朝から降りてくるなんて珍しいね。ごはん食べた?」
「食べてないけど、食べないからいいよ」
「僕は食べる。パンだけどね」
ゴジは厨房に行ってトースターでパンを焼く。
私も厨房について行って野菜ジュースを飲む。これが私の朝ごはんだ。
ゴジはパンを焼くついでにという感じで、フライパンで目玉焼きを作ってる途中で考え直してスクランブルエッグにした、みたいなものを適当な感じで作っている。
美味しいわけではないだろうけど、食べれないほど不味いわけもないから、それでいいんだと思う。
「それでね、ゴジ。話があって」
「なに? 改まって」
「あー昨日ね、窓ちゃんが行方不明になってたから、それを教えとこうと思って」
私が伝えたら、眠そうだったゴジの目がぱっと見開かれた。目が覚めたんだろう。
善行をした。
今日の一日一善はこれで早くもクリア。別にそんなこと心がけてないけど。
「は? 行方不明? TOXと戦ってる最中にって事!?」




