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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第七章 裏山ロケット、長柄のマチェーテ。
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7月12日(火) 12:30 真宮窓:二度目のTOX襲撃

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7月12日(火)

     12:30

       真宮窓

 二度目のTOX襲撃

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 学校のリモプレで受けている午前中の授業が終わった。

 ごく普通の、穏やかな一日。

 今日ここまで、クラスメイトのみんなは一昨日のボウリングの話をして楽しそうにしていた。みぞれちゃんは新しい動画を作っているという話をして、クラスのみんなから注目を集めたりもしていた。

 昨日のロケットの動画。

 ロケットを飛ばしたと聞いて、クラスの注目が護治郎くんと魁くんに集まっていた。それと叡一くん。叡一くんは「見てただけだよ」と言って言葉が少ない。護治郎くんと魁くんは質問攻めにされているが、あまり喋りたがらない。

 佐々也ちゃんは話の輪に加わっておらず、いまのリモートのステータスも離席中だ。

「だいたい、なんでロケットなんて飛ばしたんだよ?」

「叡一くんがうちに来たから、宇宙のことに興味が出てきた」

 彼にはは宇宙に残してきた恋人が居て、会わせてあげたいからロケットで帰してあげたい、という話はしないみたいだ。

 昨日、帰ってきた護治郎くんがおどけた様子で話していた。そういうつもりだったけど、素人が打ち上げるロケットは安全じゃないと言っていた。

 打ち上げはしたけど、失敗したと思ってるらしくて、バツが悪いのだろう。

 ちょっと困っている様子なので、上手く口添えしてあげられたら、と思う。

 でも私には無理だ。

 上手く喋って場をまとめたりするのは私には向いてない。

 とはいえ、本人には悪いのかもしれないけど、あまり重大でないことでちょっと困っている護治郎くんの姿は見ていて微笑ましくい。可哀想かもしれないとも思うけど、今日これからのことがあるからもう私はしばらくの間、こういう護治郎くんの姿を見ることができなくなってしまうだろう。だからせめてという思いで、護治郎くんの可愛い困り顔をしっかり目に焼き付けておく。

 一方で、叡一くんは笑いながら話を聞いていた。

 真っすぐ飛ばないロケットに乗せられたら無事には済まないのではないかと思うのだけど、それでも笑っているのだからよくわからない。

 最近は人間以外の知り合いが増えたけど、叡一くんはそのなかでも一番人間ぽくないような気がする。なにしろ幹侍郎くんは巨大だというだけでまるっきり人間の子供という感じだし、天宮さんもおしゃれが好きな女の子という感じだから。

 その点、叡一くんはこういう感じの人、という掴みやすいところがない気がする。

 私との接点があまり無いからかもしれない。

 接点がない男の子は時々宇宙人みたいに感じることがあるから、そういうことなのかも。

 今日の夕方、その叡一くんに秘密のお願いがあるとチャットでお願いしている。用件はまだ伝えてない。夕方、会った時に話すと伝えている。

 わかった、という返事があった。

 そっけない文面の返事からだけだと、叡一くんがどう思ってるのかとかは分からない。


 みんながお昼ご飯の用意を進める中、私は特に誰に告げることもせず、リモプレに使っていた端末の電源を切った。TOX襲撃の日、防衛隊をしている私が姿を消すことはそう珍しくもないはずだ。

 同じく防衛隊をしている優花子も待機任務のために姿を消しているはずだ。私とは違って、誰かに挨拶をしてからリモプレを去っているのかもしれないけど。


   *   *   *


 六時間待機。

 今日のTOXの予定時間は夕方の六時頃。

 待機が六時間だから、午前の授業が終わったあとは全部待機だ。

 私は今日、規則を破る。

 法律も破ることになる。

 自分の意志で日常に背を向けて立ち去るのだ。

 もう、日常の生活には帰っては来れないのだろうと思う。

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