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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。
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7月9日(土) 18:00

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。

 いつもは画面越しのクラスメイトたちと実際に会うのは楽しいんだけど、けっこう激しく気疲れもしてしまうんだよなぁ。学校がリモプレでなくて、迂川郷への通学だったら私は上手くやれていなかったかもしれない、とかそんなことを真面目に考えてしまう。


 集会が苦手で、ボーリングも苦手。

 私は歩くのだって苦手なぐらい苦手なことが多いから、苦手なことは避けられないし、それでやっていくしか無い。

 良いところがあるとしたら苦手でも別に嫌いじゃないってことで、きっと楽しいとは思う。

 ギュッと集中力を高めて、やっていきましょうかね。



━━━━━━━━━━

7月9日(土)

    18:00

━━━━━━━━━━


「あー、疲れたー」

 その歓迎会が終わり、家に帰ってきたところで私は荷物をおろして大きく息をついた。

 ゴジはひと足早く帰って、いまは幹侍郎ちゃんと遊んでるんだろうと思う。

 私も便乗して帰りたかったんだけど、ハルカちゃんについていないといけない気はしたので、結局は最後まで居た。最後って言っても、五時だけど。

 歓迎会は、楽しかった。んだろうか……。

 とにかく必死に乗り切ったという気持ちが強くて、楽しいというのを途中で再確認できていなかった。今思い出してみると……。

 楽しかったような気はする。

 いや、私の気分の話なんだから、楽しかった気がするなら楽しかったんだよな。

 少なくとも、TOXの予報が出て以来の焦りの気持ちはいったんは落ち着いた。


   *   *   *


 歓迎会は事前に聞かされていたとおり、ボウリング大会だった。

 安達さん笹原さんの幹事が手近の人たちと相談して組んだ行程でトーナメント戦を行い、裏トーナメントまでやることになっていて、意外としっかりボウリングをやらされることになった。私は全部負けて最小回数だけどそれでも三回やったし、窓ちゃんとかの多い人は倍ぐらいプレーしていた。

 私はあまりにも下手なので、運動の得意な永瀬くんがわざわざ手を取って教えてくれたりした。「あ、ごめん触っちゃって」とか謝られてしまったけど、別に触ったぐらいじゃ壊れたりしないから大丈夫です。わざわざ教えてくれたのに謝らせてしまってこちらこそ面目ない。

 そんなことを言おうかと言い回しを考えてモゴモゴしていたら、「あーっ、永瀬。なにしてるんだよ! 安積さん、嫌がってるんじゃないのー?」とか同じ組で試合をしている男子たちから茶々が入った。

 嫌というほどのことはありませんが……。

 なにかこう自分の苦手な領域の問題になってしまったようで、いたたまれない気持ちになってしまった。こういう時は、なにか言うと追加の余波を生んでしまって更に紛糾するので、黙るに限る。

 ごめん永瀬くん。

 私が今後ボウリングを上手くなるためにアドバイスを活かすことは無いと思うけど、わざわざ教えてくれたことは嬉しい。あと、謝らせてしまったことは本当に申し訳ない。

 こういう時に私がまごまごしていると、気心の知れた折瀬のみんなの救援が入ることが多いんだけど、今回は事前に組まれていたチーム分けで見事にバラバラにされていた。歩いて近づけば話す機会なんていくらでも作れるから意地悪とかそういうことではなくて、交流会の段取りってやつなんだろうと思う。

 なにせ私のことを気にしてくれるとは言っても、ぞっちゃんもたまも窓ちゃんもユカちゃんも、みんな人気者だ。人気者でないゴジは、私に、というより永瀬くんが槍玉に挙げられてたのに気がついていたみたいだけど、早めに収まったからなのか口を利きに来るのはやめたみたいだ。実際、ここでゴジが来たらそれはそれでまた別の冷やかされかたが始まる感じはあるし、絡まれて困るという状況でもなかったから、今回の見送りは好判断なんだろうと思う。

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