7月9日(土) 『歓迎会の日』
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7月9日(土)
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今日は土曜なので、本来なら学校は休み。
でも、あと少しで夏休みになるからということで、少し準備が足りなくてもとにかくといって歓迎会が催されることになった。その当日。
TOXの予報が出て、こんなことをしている場合じゃないという気持ちにはなるんだけど、なんとなくホスト的な立場という気がする手前、歓迎会をサボるわけには行かない。
叡一くんの予言が実現しつつある状況であると考えてはいるけど、客観的に見れば東京に予報が出るといういつものことでもあるので、本当にTOXが来るのかどうかでいえば未だに半信半疑でもある。それに肝心のゴジが特に危険を信じても居ないし動く気もないのだからどうにもならない。なにかをするとしても、まずゴジの説得をしなければ。
実際にクラス回に行ってしまえば、なにもできずにただひたすら焦る気持ちを募らせ続けるよりマシなのかもしれない。
朝九時に迂川郷の現地の前に集合して、九時半に会場入りの予定。
何十人かの人間が集まる時、こういう時間の余裕というのが必要なんだそうな。
場所は迂川郷で唯一のボーリング場。ウッカーワンボウル。
犬のマスコットがレードマークで、場内ではそのマスコットのグッズなんかも売っている。
今日の歓迎会は、ここでボーリング大会だ。
予約して四レーンぐらい貸してもらうと、フロアの後ろにある待機場所というかロビーというか待合場所的な場所を占領してもいいことになっていて、こういうタイプのなんとか会に使えるようになっている。一人あたりの費用で言っても人が行き来できることを見ても、カラオケとかよりもこういう会には向いている会場なんだとか。
私は真っ直ぐ歩くのも下手なぐらいだからもちろんボーリングだって上手くないけど、このボーリング場には高校を通してお世話になるんだろうという気はする。折瀬はもちろんだけど、迂川郷だってそんなに往来が多いってほどでもない場所だから、丁度いい施設っていうのはあんまりないもんね。
中学校ぐらいまでだと外に会場を借りたりすることはなくてだいたい学校でやってたから、こういうのもまぁ成長なんだろうと思う。
別に誰かに求められたわけではないけど、折瀬の私達は集合してみんなでバスに乗って迂川郷に来た。その集合時間が八時半で、休みの日だというのに学校に行くのと変わらないスケジュールになってしまった。
集まってみると、めいめいちょっとおめかしをしている。ハルカちゃんはうすーいターコイズのミニスカートに、白地にターコイズ色合せの襟と袖がくっついてひらひらしてるようななんとも言えないシャツ。
窓ちゃんは花柄のワンピースと小さい麦わら帽子、ユカちゃんはコットンパンツと薄手で丈の短いジャケット、ぞっちゃんはアロハシャツみたいな大きな花がらで「えっあなたのボリュームでそれはそれでいいんですか」的なオフショルダーの上着とふわっとしたロングスカート。私はいつもの通りのTシャツ(渋いオレンジ色で「転倒注意」という人が滑って転んでいるピクトグラムが書いてある)とハーフ丈のペインターパンツ、それからせめてもう一枚上に羽織ってくれとハルカちゃんに言われたので一応お気に入りになっている大きな葉っぱがいっぱい描いてある緑色の薄いシャツを着ている。
たまはどことなくパリッとしたシャツとジーンズ、ゴジは和柄っぽい格子柄の半袖シャツと綿パン、叡一くんは学生服。
折瀬のみんなはどことなく人気者が多くて、美男美女のたまとぞっちゃんは言わずもがなだけど、有能委員長的なユカちゃんはそういう感じの人望があって顔が広いし、窓ちゃんはお嬢様的な憧れの目を向けられたりアスリート的な扱いを受けたり。そこにスーパー美女で人当たりのいいハルカちゃんと、とにかく珍しくてやっぱり人当たりの良いイルカの叡一くんという二人の転校生はもちろん人気がある。そうでもないのは私とゴジぐらいだ。
私なんかは特段人気があるわけじゃないだけで、普通に喋る友達だってたくさんいるんだけど、思いつくことをすべて喋ると怒られてしまうから色々と抑制しているところがあり、そのせいでわりと陰気な人間だと思われているはずだ。
ゴジの方は半年も不登校をしていたせいで若干腫れ物扱いをされているところがある。ご両親の事故死がきっかけというのは知れ渡っているので意地悪をされるということではないんだけど、どうやって接すれば良いのかわからないみたいな部分はあるようだ。ゴジはあれでいいところのある子だから、どうか可哀想みたいな目で見ないであげてほしい。
ゴジと私はこんな感じで、更にうっすらカップルだと思われてもいるし、しかも他の人気者たちとは仲がいいから、クラスメイトと実際に会うことになると遠巻きにして噂話をされているような気がしてしまう。




