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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第一章 宙の光に星は無し
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6月21日(火)  7:52

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第一章 宙の光に星は無し

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6月21日(火)

      7:52

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 翌朝、いつものことではあるのだけど迂闊にも寝過ごしてしまい、目が覚めた瞬間に時計を見た。

 7:52の数字を確認。

 刹那の判断で例のフィギュアを登校前に見物しに行くのを諦めた。

 それともフィギュアを見に行って今日は登校しないでリモプレで出席にしようかという考えが頭をよぎったけど、やっぱり登校日には学校に行きたい。なにしろこの村は辺鄙すぎて二週間に一回しか登校日が無いんだから。

 とはいえ日本にも登校日が存在しない地域はあるそうだから、辺鄙とは言っても日本最高峰とかでもない。よくあるど田舎、そのなかでも寂れてる方のど田舎ぐらいの感じだと思う。

 とにかく目覚めた直後から急いで制服を着て身支度を整えて、転ばない範囲の急ぎ足で玄関に向かう。髪の毛はボサボサだけど、いつもとそう変わらないと言われたら変わらないはずだ。短髪だし、洗って乾かしたらそのまま。普段なら顔を洗うついでに櫛を入れるぐらいのことはしているんだけど、省略省略。

 朝食はなにも食べなくてもいいか……。

 いや、野菜ジュースぐらいは飲んでおこう。三〇秒ぐらいだろうし、それぐらいはいける。

 冷蔵庫に向かおうと思ってリビングに入ったら私を検知したサイマルビジョンモニタが自動的に電源を入れて速報のTOX予報を流し始めた。TOXの速報が出たとき、サイビの近くに人間が居たら自動で電源を入れて予報を流すことは法律で決まっている。

 予報は数日後、現在の予想半径は三五〇〇キロメートル。日本全土と、中国の半分とロシアの三分の一、フィリピン北部ぐらいまでが範囲に入る。

 中心がどこなのか予報では言ってくれなかった。

 もしかしたら聞き逃したのかもしれない。そもそも最初の方に言う情報だし。

 ぱっと見たところ、ちょうど自分が住んでいる辺りは予報円のちょうど真ん中ぐらいにあるように思う。こういう時は大抵は大秘境東京が中心で、私の住んでるあたりが真ん中ってことはまず無い。東京はTOXに集中的に攻撃されている悲しい土地で、昔は世界的な大都会だったらしいのに、今では誰も住まない荒れ地になってしまった。

 気になって調べてみたことが在るんだけど東京都とこの辺りは直線距離で二五〇キロほど。世界地図だと同じ場所みたいなものだから、私の家のあたりが真ん中に見えるのは仕方ないみたいなところはある。

 TOXとは言ってみれば災害みたいなものだから予報が気になるとはいえ、まだちょっと範囲が広すぎていまのうちから気にしても仕方ない。そもそも落ちるとしたら東京だろうし。つまり、TOXが来るから登校は控えようという理由付けにはまったく足りてない。

 いや、もう学校に行こうと決めたのだから出席をリモプレで済ませる理由を探す必要はないのだけど、目が醒めたばかりの朝の時間、なんとなくサボる理由を探してしまうことはよくある。

 気を取り直して、ぱっと冷蔵庫を開けさっと野菜ジュースとりだしてとととっとコップに注ぎ、わっと飲んでしまう。

 ちゃっとコップを水で洗いで、しゃっと流しの洗い物置き場に入れておく。

 よし、スクーターで行こう。

 リズムよくジュースを飲んでいる間に、前向きな方に心が決まった。

 リビングの鍵置き場に寄って、スクーターの鍵を取る。

 合同校舎まで徒歩で十五分、早歩きで十分、スクーターだと少し大回りになるけど五分。


  *   *   *


 合同校舎の駐輪場に到着。時計は8:25、ホームルームの五分前到着になった。

 歩きならば五分遅刻の予定だったから差し引き計算通り。

 駐輪場にスクータを停めて校舎の入口付近を見ると、見知った小学生達が朝からボール遊びをしている。

 見知ったもなにも、狭い集落だから子供同士は大抵みんなお互いに顔見知りなんだけど。

 今日は小学生の登校日ではないけど、決められた登校日ではないと言うだけで来たい子は登校してもいい。学校には備え付けのリモプレ設備があるからそれで授業を受けられるし、小学生ぐらいだと喧嘩中でもない限り友達に会いに来たがる。私だってそうだった。

 そういう自主登校のときでも校舎に来たら朝礼の時間には教室にいる規則のはずだ。

 この時間にまだ遊んでると遅れちゃうんじゃないかな。

 いまは気分がいいから、善行をしよう。

「おーい、小学生! もう朝礼の時間だから教室に行きなよー!」

「あっ、佐々也だ!」

「佐々也はバイクで来たのー?」

 スクーターが好きなのかな?

 小学生は無邪気で可愛い。


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