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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。
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……7月5日(火) 15:52

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「ああ、そうだ、話が逸れ過ぎた。ええと、そもそも私が言いたかったのは、叡一くんが言う通りTOXがまた折瀬に来るとなると、またゴジの家が狙われるんじゃないかと思うんだよ。ええと、かもしれない、ぐらいだけど」

「え? うちが? なんで? ……コンプレキシティが強い佐々也が居るから?」

「あたし!? ……その考えはなかったわ……。私が考えてたのは、前回のTOXが地下道に行こうとしていたから、なにかTOXなりに狙いがあるのかもなって。私には確信があるわけじゃなくて、悪い予感がするってぐらいだけど」

「ああ……なるほど。でも、ほんとに地下道が狙われてたのかな?」

 妙にぼんやりとした表情でゴジが答える。疑問というより、違うと思っている様子だ。

「どういうこと?」

「あの地下道は、たまたま通り道にあっただけなんじゃないかと思うんだよ。そもそもあの瞬間まで、あの地下道は僕しか知らなかったんだよ?」

 ゴジはどこか遠いところを見ているような表情だ。

 私から見たら偶然たどり着くような場所とは思えないし、ゴジしか知らなかったのにTOXが執着していたから余計に怪しいんじゃないかと思うんだけど、いまはそこの意見を合わせる必要は特にない。仮にまたTOXが来ちゃったら困るよね、というのが本題だ。

 中途半端な感想は言わないで、ふんわりと話を合わせる。

「そうだね。単なる通り道かも。TOXがなにを考えてるかなんて私にはわからないから。でも、可能性があるならあらかじめ考えてたほうが良いと思うんだ」

「可能性あるかな? うん、無いとも言い切れないか。……でもね、佐々也。幹侍郎をあの部屋から動かせない以上、できることもやることも変わらないんだ。隠し続けるしか無いんだよ」

「……うん」

 そう。それには私もうすうす気がついていた。

 TOXに幹侍郎ちゃんが狙われてるとしたら――そしてその可能性は高いんじゃないかと私は思ってるけど――TOXを相手にして、私達には為す術がない。

 もしかしたらこの先、良くない経過を辿るとしても、指を咥えて見ているしかないのかと思うと気が塞ぐ。体は大きいとはいえ精神的には小さい子供の幹侍郎ちゃんがどういう事になってしまうか、善良なゴジがどういう気持ちを味わうことになるのか、ちょっと思い浮かべるだけで悲しい気持ちになってくる。

 いまゴジと話して、漠然とした悪い予感だったものが、よりはっきり暗いビジョンとして形をとったような気がする。

 私はそれをゴジに突きつけるのが嫌で、気が重かったんだな……。

 私なんて、自分の気分さえはっきりと把握できていない。

 暗い気持ちになっちゃうよな。

「それにね、幹侍郎がTOXの標的なわけがないんだ。だって、これまでの半年の間、TOXは幹侍郎を狙って来たりはしてないんだから。佐々也自身もそうだよね? コンプレキシティが強くても、いままでは別にTOXに狙われてなかった」

「そうか……。そうだね。私はつい最近知ったばっかりだから、つい一緒に考えちゃうけど、ほんとは半年前から幹侍郎ちゃんは居たんだもんね。私自身も……、まぁそうだね。コンプレキシティが強いって言われても、なんのこっちゃわからないから完全にスルーしてたけど」

 ゴジの指摘どおり、ここに来て急にというのは無視できない話ではある。

 つまり、時期的なものを考えると要因として怪しいのはハルカちゃんだ。

「叡一くんの言ってることが当たるとしたらコンプレキシティ要因で、だとすると私や幹侍郎ちゃんのように以前から折瀬にいた人が原因ではないことになる。最近この村に来たと言えばハルカちゃんだけど……」

「え? わたし?」

 急に話をふられたハルカちゃんがキョトンとしている。さっきの私と同じだ。

 そりゃそうだ。TOXに狙われるもなにも、実感らしきものが湧かない。

「時期だけを考えたら、ね」

「確かに言われてみれば……」

「でも叡一くんによればハルカちゃんはコンプレキシティが無に近いほど少ないらしいでしょ? 叡一くんがTOXの行動を予想してるとしたらコンプレキシティ絡みだけど、TOXはコンプレキシティと関係ないハルカちゃんを狙う、ということだと意味がわからないよね」

 全体として、どうにも噛み合わない。

 いまパッと思いつくこととしては、どこかのコンプレキシティにこの半年の間に経時的変化があった――つまり半年前は少なかったけど、ここに来て急に増えた――ということなのかもしれないけど、見えもしないようなものの経時的な変化なんて、私達には確かめようもない。

 これをどうにか見えるようにする方法はないのか。あるなら地球の人類のこれまでの五千年の歴史でどうにかなってるんだよなあ。まあでも私にはそれが多くてハルカちゃんには少ないという手がかりはある。ここからどうにか切り分けてコンプレキシティの計測をして……。あ、いや、コンプレキシティはどうでもいいのか。

 本質はTOXからの狙われやすさの方だ。

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