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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。
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……7月5日(火) 15:45

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「電池は作れるんだよ」

 わけわからん。というか、幹侍郎ちゃんって電池式なのか? そうなの?

 もうすこし話を分解して聞き出してみるか。

「そういえば、ゴジってガソリン車は作れないの? 燃料以外」

「絶対にできないってわけじゃないけど……」

「だったら、燃料だけ買って、ロケットはゴジが作ればいいのでは?」

「作っても性能は良くないんだよ……。自動車なんかだとスピードが遅かったり大きくなっちゃったり。……知ってるでしょ?」

 つまらなそうな顔をしてゴジが答えてくれる。まぁ、せっかく持っている能力の劣った部分をわざわざ説明させられているわけだからつまらない気持ちにもなるのかもしれない。

 私には能力がないからその辺の気持ちはわからないわけですが、能力という程でもない普通のことでも「基本的には普通に歩くことができるけどよく転ぶ」って自分で言わなきゃいけないとしたら、確かにできれば避けたいという気持ちにはなる。そんな感じか。

「……そうだったね。忘れてた。でも幹侍郎ちゃんていまの地球のどんなロボットより高性能だと思うけど」

「それは……、わからないけど……。ただ、幹侍郎はなにかに使えるわけじゃないから、性能とか関係ないんじゃないかな」

 ゴジもわからないなりに自分の能力には推定があるし、聞けば言ってくれる。

 でもその『性能』っていうのは人間からみた可用性みたいなそういう基準なのか? それってずいぶん恣意的な基準だし、見方を変えたらいくらでも話が変わってきそうだ。そうだとすると、ゴジは自分で自分の能力を狭めているだけということになってしまうのでは?

 もうちょっと詰めてみるか。

「そうだな……、たとえば幹侍郎ちゃんって、戦ったら強そうじゃない? TOXをやっつける能力だったら……」

「幹侍郎をTOXと戦わせる気なんて無いよ! まだ子供なんだよ?」

「あ、いや、例えば! 例えばの話だよ」

「例えばでも嫌だよ。まだ子供なのに戦わせるなんて……」

 怒っちゃった……。

 私は幹侍郎ちゃんをTOXと戦わせる話をしたかったわけじゃないいんだけど……。

 でも、ゴジが気を悪くした理由はわかる。

 確かに幹侍郎ちゃんがTOXとの戦いに駆り出されるのは私だって嫌だし、もし強かったらもっと強いTOXと戦うことになっていくのだろう、とかとか悪い想像はいくらでも膨らむ。

 あれ? でも窓ちゃんは?

 窓ちゃんがTOXと戦うのは仕方ないというか、むしろ頼もしいような気もする。

 この時の窓ちゃんと幹侍郎ちゃんの違いはなにか。

「ま……。あ、いや。やっぱなんでもない。別の質問をするから待ってて」

「この感じ……。佐々也らしいよ」

 私が話を切り替えたら、ゴジが笑った。

 なぜ笑う? いま面白いところあったか?

 まぁ馬鹿にしてるなんてことではなさそうだからいいか。

 ハルカちゃんは黙って話を聞いている。私が話を避けたのは割と繊細な話だから、空気を読んでくれるのはありがたいような気はする。

 ゴジに幹侍郎ちゃんと窓ちゃんに対する態度の違いをいきなりぶつけるのは残酷だ。人間の感情的な問題は理屈を突き詰めればすぐに整理がつくようなものばかりじゃないし、繊細なゴジにこの疑問をぶつけたらとても苦しんでしまうと思う。

 いつかこの話をゴジとするとしても、少なくとも私自身の中でゴジに言って聞かせられるだけの整理がついて、なにか安心させてあげることを言えるようになってからにした方が良い。

 ええと、別の質問。

 なんでロケットの話をしてたんだっけ? あ、叡一くんか。

「ええと。それでとりあえずロケットはできるとして、宇宙服というか、叡一くんはあのまま宇宙に出したら破裂しちゃうんじゃないの?」

「本人に聞いてみたら空気がなくても死なないし、破裂もしないって」

「そうなのか……。イルカすげーな」

 まぁイルカは空も飛ぶもんな。宇宙でもなにかそういう感じの芸当があるんだろう。


 学校帰りの道すがら、他愛もないおしゃべりだと思えば、だいぶ充実した話ができた気はする。一部頓挫した部分もあるけど、まぁ急ぐような確認事項でもないからいいだろう。今後もゴジの能力をする機会は生きていく上でいくらでもありそうなもんだ。

 でもなんというか、このロケットはなんかダメそうという気はする。私には知識がないから上手く指摘できないんだけど、ダメそうというか上手く行く気がしない。とはいえ、いまさら私が「常識で考えたら上手く行かなそう」って言ったところで説得力は無いし、「理由はよくわからないけどなんか上手く行かない予感がする」なんていったら単なる嫌なやつになっちゃうよ。なんとなく一番ダメそうな気がするロケットを繋ぐところをゴジの機械でやるというなら、他人の前例はあんまり参考にならないのかもしれないから、。

 具体的に何が駄目っていう知識があったら、どこそこが良くなくて駄目なんじゃないかと指摘もできるんだろうけど、ロケットの知識がないから理屈が見つけられない。

 ロケットの話そのものは面白いと思うんだけどなぁ……。


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