……7月5日(火) 15:45
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第六章 重さとは持ち上げる時に使う力。摩擦とは擦れ違いに抗う力。
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「あ、えーとなんて言ったらいいのかな……。地面に一辺三メートルぐらいの三角形を書いてみて、そのそれぞれの頂点に縦向きにロケットを乗せる感じ。高さの辺を全部ロケットにした三角柱って言えばいいのかな……」
物理演算式のクラフト系のゲームなんかで、なにかをロケットで打ち上げるようなミッションが時折あったりする。バランスが良くないと上手く飛ばない。(略)
ロケットが三個の場合、正三角形になるようにクラフトすると思うんだけど、ゴジが言ってるのは要はその感じだろう。
「そんなことできるの? ロケットを三個くっつけるだけだって、ずいぶん難しい物を作らなきゃいけないように思うけど……」
「難しいものを作るんなら、僕が能力でやればいいから大丈夫だよ」
ゴジにしてはずいぶん自信がある。
でも、最近は自分でドアを修理したりしてるから、自信を付けてきているのかもしれない。
「ロケットをただ繋ぐだけじゃ駄目なんじゃない? 三個のロケットが全部厳密に同じように動かないと傾いたりするから、動きを同期させるための機能みたいなものが必要になってくると思うよ」
クラフト系ゲームで言うところのスイッチとか配線ってやつ。
ゲームだとこの要素は上手くいくときは一瞬だけど、引っかかり始めるとものすごく苦労したりする部分だ。
「そう。必要になる。それを天宮に作ってもらえないかお願いしてるところなんだ」
「え? ハルカちゃんが? ああ、ゴジの機械に載せるコンピュータのプログラムを作ってもらう感じってこと?」
「うん」
配線だけ別の人にお願いするとかゲーム的にはチートじゃないか? という気もするけど、配線関係ってできない場合はどれだけ悩んでもできないから攻略動画見て丸パクリすることもあるし、そんなもんなのかもしれない。
さらに言えばロケット作りはクラフト系のゲームじゃなくて現実だから、ルール決めるの自分達だもんな。ゴジがチートじゃないと思うんなら別にチートじゃないんだろう。
「簡単に言うなぁ。ハルカちゃん、そんな事ができるの?」
「実際に物が無いことにはできるもできないも……」
横で話を聞いていたハルカちゃんが答えてくれる。
「そりゃそうだ」
「それはできるように作るよ。幹侍郎ができたんだから、コンピュータだってロケットだってなんとかなるさ」
やっぱり自信がある。
なんかというか、あんまりゴジっぽくない気がする。
いや、実際にはゴジは私なんかよりなんだってできる子だとは思うから相応の自信を持つのは良いことだろうとは思う。でも、ここ一年ぐらいはどうにも失調気味の姿ばかりを見ていたから、意外に感じてしまうのかもしれない。
事故より以前のゴジを思い出してみると、ボンボンでおっとりはしていたけど、あんまり自信満々というタイプではなかった。
まぁ、できるかできないかで言えば、実際あれだけ複雑そうな幹侍郎ちゃんが動いてるんだから、モーターとかコンピュータとかもできるんだろうけど……。あれ?
「あれ? ロケットもゴジが作るの?」
「ロケットは無理。厳密にはロケットというより、燃料が無理」
「そういう制約があるんだ……」
と、ハルカちゃんが変に感心している。
燃料……。
たしかにゴジはガソリン車なんかは作ってなかったような気はする。
「だとすると、幹侍郎ちゃん地下通路の燃料はどうしてるの?」
ハルカちゃんの至極もっともな疑問。それにゴジが即座に答える。
「電池は作れるんだよ」
わけわからん。というか、幹侍郎ちゃんって電池式なのか? そうなの?
実のところ、ゴジは自分が作ったものの仕組みを聞かれるのが昔からあんまり好きじゃない。いつだったかは思い出せないけど、かなり昔に確認したことがあって、なぜ嫌かというと自分でもよく分からないからだそうだ。
ゴジの場合、機械を出すという間接的な能力なもんだから、その機械に対する質問ということでずいぶん色々と聞かれてきたからフラストレーションもあるのだろうと理解している。
まぁねぇ、うまく説明できるんなら不思議能力でなくて自分で普通に作れば良いようなもんだよね。自動ドアならともかく、幹侍郎ちゃんなんて一部分でも応用できたら大変なもんだろうという気はするし。
もうすこし話を分解して聞き出してみるか。




