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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第五章 秘密とは隠して知らせる情報
113/489

7月5日(火) 8:00〜12:30

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第五章 秘密とは隠して知らせる情報

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7月5日(火)

      8:00

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 翌日は学校、登校日。

 ハルカちゃんは昨日買った新しい服を着ての登校になる。ステージ衣装っぽい方でなく、普段着の方。白い半袖のフリルブラウスと、黒地に白い小さな模様のフレアスカート。制服じゃなくなるけど、なんとなく制服っぽい。

 いつもは制服の私も、今日はハルカちゃんに付き合って普段着。

 Tシャツとカーゴパンツ。要はいつもの普段着だ。


 三回ある午前中の授業の合間の短い休み時間、ゴジとたまと叡一くんは寄り集まって話していた。漏れ聞こえてくる単語から推測するとロケットの話をしている様子。昨日、ゴジが見に行ったときの話なんかをしているのだろう。

 ロケットの話、私も混ぜてもらいたい。

 けどいまは、ぞっちゃんやリモプレのクラスメートから振られるハルカちゃんの服の話と、私の昨日の試着の話で手一杯だ。ハルカちゃんも窓ちゃんも、なにもみんなに写真を見せなくてもいいのに……。

 私はなぜか、リモプレでどうしていつもこういう可愛い服を着ないのかということの言い訳をさせられている。似合わないとか、高価とか、手入れが大変とか、汚しちゃうとか。似合う? いやいやいや、もっと似合う人が居るから私はそこまでじゃないよ。

 窓ちゃんは私が困っている姿を見てどことなく申し訳無さそうだ。

 ごめんね窓ちゃん。

 窓ちゃんは悪くない。

 真っ直ぐ歩くのも苦手なせいで、可愛い服を着ているだけのことも億劫になってしまう私だけが悪いんだ、これは。



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7月5日(火)

     12:30

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 午前中の授業が終る頃、ケルンに襲来したTOXの掃討完了が確認された、というニュースが入ってきた。前回のTOXが折瀬に来たばかりなので、クラスメイトたちの感心も高い。

 私はどちらかというと、目の前でTOXを見ちゃったから、確率的には今後一生TOXに合わないで済むんじゃないかという気分になっているので、他所のTOXにいまのところあまり強い関心はない。

 どちらかというとTOXが落ちなかったルクセンブルクのほうが気になる。

 ちょっと調べたら、割と複雑な歴史のある国だった。

 とはいえ欧州の歴史なので根本的な知識が足りておらず、最初はもっと大きい国だったのに三度の領土割譲を経て今の大きさ(神奈川県と同じくらいらしい)になったとか、隣国との出入りが活発というか、ルクセンブルクの中心市は割と都会なので、隣国に住んでルクセンブルク市で働いているような人が割と沢山いるんだとか、そういうちょっとした豆知識みたいなことを思い出していたりした。

 領土の割譲とか言われると、日本人としては戦国時代みたいな気持ちになる。実際、ルクセンブルク氏というのも居て、神聖ローマ皇帝というのも排出しているらしく、要は日本で例えると大名みたいな感じという気はする。サイズも神奈川県ぐらいだし、大名家の名前が残っていたりもするし、やっぱり国というより県なんじゃないか?

 前にも思ったけど、ヨーロッパ統合体の国の感覚はよくわからない。


 順調に昼休みになり、お弁当を食べる前、手を洗ったり用意したり。

 私はハルカちゃんにリモプレの端末を貸して、少し離れたリモプレの死角でお弁当を食べ始める前にほんの少しだけ休憩というか、一息入れる。三十秒ぐらいでいい。

 この教室は分校側だから人数が少ないんだけど、それでもわっと全員の集中が散らかって、雑然とした瞬間ができあがることがある。そんな瞬間に叡一くんが近寄ってきて、私にだけ聞こえるように耳打ちをしてきた。

「次のTOX、またここに落ちてくるよ」

 言うだけ言って、叡一くんはしれっと去っていった。

 休憩中でスイッチが切れていた私はとっさに反応もできず、呆然と見送る。

 ああそうだ、お弁当を食べる前に、手を洗ってこないと……。あれ? もう洗ったっけ?


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