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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第五章 秘密とは隠して知らせる情報
112/489

7月4日(月) 20:30

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7月4日(月)

     20:30

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 そんなこんな、ショッピングモールの閉店時間ぐらいまで居座って、再集合して帰宅の途へ。バスと自動運転タクシーを乗り継いで帰宅の途。

 バスのサイネージにTOX襲来のニュースが流れていた。

 確か遠いところだったような、どこだったっけ?

 ニュースによると、ケルン。国で言うとドイツだそうだ。

 ドイツと言われればぱっと思い当たる国ではあるんだけど、この前居た予報では他所の国だったような……。そうだ、ルクセンブルグだったはずだ。地図を見るとケルンはドイツの左の方、ルクセンブルグはドイツの左側、ドイツとフランスとベルギーの間にある小さな国なので、ケルンの近所ではある。東京の予報で二〇〇キロ離れたこの折瀬にTOXが来るんだから、ルクセンブルクの予報で一八〇キロ程度のケルンに行くのもありなんだろう。

 私の感覚だと予報と実際の襲撃で国が違うのはなんだかちょっと騙されてるような、大外れだったような気持ちになってしまう。でも国境が陸続きだったりするし、しかも欧州統合体は国のイメージが日本とはだいぶ違う気がするんだよな。だから、現地の人達にしてみれば、私とは違う感想を持っているんだろうとは思う。

 ケルンのTOXは、光学観測ではルークが五体だそうだ。


 迂川郷で自動運転タクシーを呼んで、折瀬に向かう。

 窓ちゃんを家の近くで降ろしてから神指邸へ。

 ゴジは車内から指示をして家の前まで行かせようとしたのだけど、私道に少し入ったところで走行面状態不調(=走行可能な道路ではない)という判定が出てしまって進めなくなってしまった。

 なにしろ手入れがなっていないんだからこれは仕方がない。ゴジはかなり悔しがっていたけど、私は苦笑いが浮かんでしまう。

「ひどいな、笑わないでよ」

 ゴジが不服そうな顔をしている。

「ああ、ごめんごめん。ゴジのことを笑ってるわけじゃないんだよ。何事も上手く行かない時っていうのは、ちょっとギャグっぽいなって感じて、反射で笑いが出ちゃうことがあるんだ。その、大したことない時はね」

「やっぱり笑ってるってことだ」

「悪い意味じゃないから。ゴジだって私が歩いててちょっと(つまづ)いたら笑うでしょ? それぐらいのことだよ」

「転んだら手を貸すよ!」

 実際、助け起こしてもらったことはよくある。

「そこまでじゃなくて、倒れるほどじゃないような時」

「まあ、怪我するほどじゃなければ……」

「失敗が深刻なときは笑いなんて出ないんだよ。今はそうじゃない。だから気にすんなって」

「はいはい。わかった。突っかかって悪かったね。でも、ちょっと放置しすぎて荒れ過ぎた感じなんだろうな。手入れしないとまずいか、やっぱり」

「タクシーが入れないぐらいのことなら、そんなに気にしなくてもいいと思うけど」

 神指邸の手入れが悪いのは事実だけど、最初の半年ぐらいゴジが正気じゃなかったのは仕方ないことだし、こういう整備をまとめてやるのはとても大変だし時間もかかる。だからまぁ心からの言葉ではある。

「そういう問題じゃないんだけど……。でも本心から気にしない人間が世の中に一人でも居るってのには救われるよ。ありがとな」

 まぁ、本心から気にしていないのは事実なんだけど、これってもしかしてあんまり普通のことじゃない? とはいえ世間並みの感覚でゴジを窮屈な気持ちにさせるなら、それでも良いかなという気もするんだけど。


 そんなこんなで、やっと家の玄関口に到着。自室へ。

 窓ちゃんに着せてもらった服は、やっぱり汚していた。

 肩のところを何回か壁に擦っちゃったし、ひっかっけて少しほつれてしまったし、転んでキュロットを汚してしまった。それぞれその時、服のことが注意にあがらなかったから本当にそのタイミングなのかわからないけど、自分が踏んだドジは意外と覚えている。真っすぐ歩いてるだけのはずなのに壁にこすったり転んだりする理由は自分でもよく分からない。

 真っ直ぐ歩くのも私には難しいんだと思う。

 普段なら転ばない日のほうが多いんだけど、こうやって汚したくない服を着ているような日は必ず転ぶ。

 私が転んで汚してしまっても窓ちゃんは怒るどころか痛くないか心配してくれたけど、窓ちゃんが怒らなかったからいいってもんじゃない。せっかくのきれいな服を汚してしまって心から申し訳ないと感じる。

 私は自分の間抜けが悲しいよ。

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