7月4日(月) 16:30
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第五章 秘密とは隠して知らせる情報
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7月4日(月)
16:30
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予約の時間になったので、ゴジの家の前に呼んでいた自動運転タクシーが来た。
実際にゴジの家の目前は私道なのでタクシーは入ってこれず、大回りの私道の入り口に横付けしている感じになる。到着前にメッセで到着予告があるので、それに合わせてその場所で待っていた。
タクシーでは迂川郷まで乗り、迂川郷からショッピングモールまではバスに乗る。自動運転タクシーは帰り道を含めた時間貸しになっているから、タクシー基地のある場所で降りるのが効率的である。
迂川郷からはバスに乗って麓の町へ。
麓の町の町並みに入る手前、近い方の郊外にショッピングモールがある。
ショッピングモール前のバス停で降りる。
そこからはゴジとは別行動になった。
ゴジはロケットを見に行くそうだ。
え? ロケット? なにかの展示なのか聞いたら、売り物だそうな。ロケットなんて売ってるのか? だってロケットだよ? 宇宙に行くとTOXに襲われるのに。めちゃ興味ある。
私もロケットを見に行きたい! ハルカちゃんの洋服選びは窓ちゃんに任せて、私はゴジと一緒にロケットを見に行ってはいけないか、と言ったのだけど、今日はダメとハルカちゃんと窓ちゃんから却下されてしまった。今日は一緒にお洋服見に行ってくれるって言ったでしょ、とのことだ。
確かに言いました。
そもそも、それが目的でここまで来たので、こればかりは仕方ない。
私は二人に服屋に連れて行かれ、ハルカちゃんの試着たっぷりの服選びに付き合わされる。ロケットが見たかったけど、これが元々の予定だ。それに実際に試着に付き合ってみると、ハルカちゃんは非現実的なぐらい美少女なので、なんだかゲームのダウンロード衣装選びみたいな雰囲気まで漂ってきて妙に楽しいみたいなところはある。
ただ、実際にお店に行ってみると、ハルカちゃんの着せ替え遊びのみならず、「せっかくだから」という謎の理由によりなぜか私まで散々試着をさせられることになり、その点では大変不服です。
私が試着をするということは、私は私が着ることになった服を壊したり汚したりしないよう気をつける必要があるということでもあり、私としては大いに疲労する。とはいえ、私以外の二人ともとても楽しそうにしているので、さすがに付き合うしかない。
それに、自分の気持ちとしてもただ嫌がっているだけでもない。公正を期するなら、私は窓ちゃんにおめかしさせられるのは嫌いじゃない。友達が嬉しそうにしているのは私も嬉しいし、本当は可愛い服だってどちらかといえば好きだ。しかも着ると褒めてくれる。良いところが本当に多い。
そもそも私がおめかしっていうのをあんまり好きじゃないのは、自分でやっても細かいところに目が届かないからという面があるし、着た瞬間に可愛くてもそれを維持することが難しすぎて、後のことを考えたらやりたくないという感じなのである。だから、試着というのはこういうデメリットが相対的に少ないという事でもあり、理屈だけで言うなら私としても悪くないはずだ。理屈ではそうなんだけど、お店の売り物だから壊しちゃったらと思うと緊張しちゃって尋常でなく疲れてしまうし、試着をしても買わないというのも心苦しい。メリットをすり減らすぐらいデメリットが強いみたいなところがある。
意外なのはハルカちゃんで、宇宙から来たのに、お洋服を選んで着替えたりするのは本当に好きみたいだ。しかもハデハデでヒラヒラの舞台衣装みたいな服が好きらしい。
細身の美形だから確かにそういう服だって似合うというか、むしろそういう服のほうが似合う。ハルカちゃんに関しては、本当は何着たって似合う。実のところ、美形すぎて試着なんて必要ないんじゃないかってレベルだ。
ただ、いくら似合うとはいえ、私から見ても普段着としてはちょっと、というものが多い。その服を着てると、お腹壊すんじゃないかなみたいな服とか。いや、ハルカちゃんはお腹壊したりしないんだろうけど。
とかとか、こんな感じでなんだかんだ楽しく買い物をした。
私は予定通りすごく疲労したんだけど、疲れるからって楽しくないわけじゃない。楽しかったけど尋常じゃないほど疲れた。
ハルカちゃんは普段なら着れないような服をあれこれたくさん試着した上で、他所行きというかやたら派手派手しい舞台衣装みたいな服を一着と、ほとんど試着しなかったような普段着を何着か。ハルカちゃんはズボンよりもスカートが好きらしく、しかもミニスカートばっかりだった。上に着るものの方は私では上手く説明できないけど普通っぽいものを色々と。
どこかから調達してきた電子マネーで支払いをしていたけど、細かいことは聞かないでおこう。




